(「読むべき本」の見分け方①― 気に入った著者の本を追いかける)
現実の問題として、本を読むには限りがあります。若い人からのアンケートの質問でも、「本をどのように読んでいけばよいのか」というようなものが出ていました。
「読むべき本」を見分けるのは、はっきり言って難しいことですが、方法は幾つかあります。
一つは、いろいろと本を読んでいくなかで、自分が気に入った作家ないし著者が出てくるでしょうから、その人が書いた別の本を、できるだけいろいろと読んでいくという方法です。
つまり、「一人の著者の本をずっと追いかけていくと、その人の思想や考え方が身についてくる」ということがあるのです。この読み方は、かなり力がつきます。
次は、「その人の本のなかで、引用したり、参考文献に挙げたりしている本のうち、関心のあるものを読んでいく」という方法があります。そういう本は、実際に、その著者が思想的に影響を受けた本なのでしょうから、それらに手を出していくというやり方があるわけです。
(「読むべき本」の見分け方②― つるったぐり読書法)
もう一つは、「つるったぐり読書法」というものです。これは元東大理学部名誉教授で地球物理学の故・竹内均(ひとし)氏が提唱した方法です。
彼は物理学以外のいろいろなジャンルにも手を出した方ですが、この人の書いた本のなかに、『芋(いも)のつるをたぐっていくように本を読む』という『つるったぐり読書法』が紹介されています。
これは、「何か一冊の本を読むと、新たに関心のあることが出てくるので、次にその分野の本を読み、さらに関心があるものが出てきたなら、また次にその本を読む」という感じで、「つるをたぐるように、関心のあるものを次々に読んでいく」という方法です。
これも効果があります。基本的には、雑読の場合に向いている方法ですが、「情報の網を広げる」という意味では非常に有効なやり方です。
この読み方の場合は、あまり精読をしなくてもよいでしょう。「まずは、一通り読んでみる」というかたちでよいと思います。
(「読むべき本」の見分け方③―目次と第1章を丁寧に読む)
さらに、もう一つの読み方としては、こちらもすでに亡くなった方ですが、作家の井上ひさし氏の読み方があります。彼は個人蔵書を13万冊ぐらい持っていたようです。13万冊というのは、なかなか読める冊数ではありませんが、彼は“本の山”のなかで暮らしていたのだろうと思います。
この人は、本の読み方として、「目次と第1章は、とにかく丁寧に読め」ということを言っています。「まず、目次と第1章については、内容をきちんと読み取れる速度で丁寧に読む。その段階で、ある程度“本の値踏み”をし、著者の言わんとすることがだいたい見えてきたら、2章目からは読む速度を上げていき、サーッと読み切ってしまう」というのです。
確かに、目次と第1章を少し丁寧に読むことで、ある程度、本の見分けがつきます。この段階で、「この本は読むに堪(た)えない」と思った場合には、もちろん、そこで打ち切って構わないということです。
私は、それを読んで、「なるほど、1章目を丁寧に読むというやり方があるのだな」と思いました。非常に速く本を読める人でも、1章目だけは少し丁寧に読んでみると、その本の値打ちがよく分かるかもしれません。
---owari---
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