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あなたの愛読書は何冊あるか

2020年04月11日 | 人生
(二十代のときに読んだ本の影響力)
若いころに、なけなしのお金をはたいて買って読んだ本のほうが、内容をよく覚えていて、私の人生観や考え方に大きく影響を与えています。何十年もたってから昔の本を読み返してみると、そうとう影響を受けていることが分かります。

その当時の、学校の勉強や職業に直接つながらないような読書の場合、見栄(みえ)などではなく、「純粋な興味・関心」で読んでいるので、頭によく入っているのです。

(電子書籍にはない、紙の本だけが持つメリット)
若いころは、読書に関して、本を買うお金と、本を置く場所、本を読む時間という、「お金」と「場所」と「時間」の三つの問題で悩みました。この三つをなかなか拡張することができませんでした。

今であれば、iPad(アイパッド)などの情報端末があり、電子書籍(しょせき)で楽に読めるので、蔵書(ぞうしょ)はいらないかもしれません。そうしたものは、本の置き場がない人にとっては非常に有利なものなので、ないよりはあったほうがよいと思います。しかし、明らかに弱点もあります。

やはり、本の持ついちばんの大きな魅力(みりょく)は、「自分が読み込んだ本は、何十年たっても使える」というところにあります。「自分が実際に手で赤線を引いた本を持っていることの威力(いりょく)」は、かなり大きいのです。

例えば、二百ページの本を読むのに、一回目は三時間かかったとしても、大事な箇所(かしょ)に赤線を引いておけば、二回目に読むときは、その赤線を引いたところだけを読んでいけばよいのです。そうすると、所要時間は、一回目のときの十分の一ぐらいの時間で、だいたい、その本の要点をマスターすることが可能になります。

そして、二回目、三回目と繰り返し読んでいくときに、その赤線を引いた箇所のなかで、さらに重要な内容については、上の余白に弓形(ゆみがた)のオーバーラインを引いたり、赤丸や二重丸などを付けたり、黄色や青や赤などのマーカーを引いたり、あるいは、色の付いた付箋(ふせん)を貼(は)ったりして、自分なりに印を付けておくのです。

これは、受験参考書の勉強の仕方に似ているかもしれませんが、こうすることで、さらに時間を節約することが可能になります。

一回目に読むときには、何時間もかかるでしょうし、本によっては十時間以上かかるものもあると思います。しかし、二回目、三回目に読むとき、あるいは、何かの仕事で使おうとするときなどには、ごく短時間で、「その本が、全体でどういうことを言っていたか」ということをサッとマスターできるメリットがあるのです。

私は、電子書籍などを否定はしませんが、本にはそうした効用があることを知っておいたほうがよいと思うのです。

(読書を「仕事の成果」に結びつけるには)
私にとって役に立った本は、ほとんどが、一回だけ読んだ本ではなく、何度も繰り返し読んだ本です。繰り返し読んだ本でなければ、やはり、仕事で使えるレベルまではなかなか行きません。最低でも三回ぐらい読んでいないと、身についていないことが多いのです。

回数が多いものでは、十回ぐらい読んでいる本も多くあります。そうすると、重要なところについては、だいたい暗記しています。暗記しているといつでも自由に使える状態になっているので、とても便利です。

本を繰り返し読んで精読するメリットとしては、「年数をおいて読み返すと、その間に自分が成長しているため、読み方が変わってくる」ということがあります。

たいていの場合、自分が若いころに読んだ本の著者は、自分より何十歳か年齢が上であることが多いので、自分の知識が増えてから読み返すと、以前は読み取れなかった細部まで、次第に読み取れるようになってくるのです。

それから、数多くの本を読んでいると、「この著者が言っていることは、実は、別の人が本に書いていることを上手に引用して述べているだけだ」というようなことが分かってきたりします。

そのように、細部にわたる部分まで読み取れるようになってくるところが、「読書の醍醐味(だいごみ)」の一つです。

(「一流の教養人」をつくる読書スタイル)
ある人は、「人生の目標の一つとして、一生のうちに、繰り返して読むべき本、愛読書と呼べる本を五百冊持てたら、かなりの教養人である」ということを述べています。五百冊の本を繰り返し読んでいたなら、そうとうの教養人だというわけです。

確かに、繰り返し読める本を、五百冊もなかなか持てません。普通は、新しい本を読むことに忙(いそが)しいでしょうから、繰り返し読める本がそれほどあるわけではありません。しかし、「年数をおいて、繰り返し読める本が五百冊あったなら、一流の教養人、読者家と言える」ということです。

そういう意味では、「繰り返し読める本を探すために、本をたくさん読まなければいけない」という逆説があるわけです。

似たようなことは、英語においても言えます。英語の本であっても、赤線を引きながら読んだ本については、赤線のところだけをサーッと流して読めば、最初に読んだときの十分の一、あるいは何十分の一かの時間で、一冊分の概要をだいたいつかむことができます。

このように、簡単に概要をつかむことができるというメリットがあるので、「本を所有している」ということは非常に大事であると思います。

---owari---
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