「火事場の馬鹿力」という言葉があります。
「火事場の馬鹿力」は科学的に立証・実践されています。
昔、火事にあった若いお嫁さんが仏壇を背負って裏山まで駆け上がったという話があります。当時の仏壇は祖先を祭ってある大切なものですが、金庫の代わりもしていたようです。普通では絶対に持ち上げれないと思われるものを、緊急を要する緊張状態では思ってもみない力が出ることを、「火事場の馬鹿力」と呼んでいます。
普段、人間は筋肉を本来の力の20%から30%程度しか使っていません。最大筋力を使っても70%程度といわれています。筋力が100%の力を出すことによって筋肉や骨などが切れたり折れたりしないよう、普段は脳のリミッター(制限)が抑制をかけています。この「余力」は30%程度もあるといわれていますが、危機的状況下ではこのリミッターが外れて、100%の筋力が発揮されます。これが「火事場の馬鹿力」の正体ということになります。
人間は生命に危険がせまったとき、脳はこのリミッターを解除する機能を持っています。筋肉は、脳からの制御を受けなければ1平方センチメートル当たり約10キログラムの力が出ます。これは、成人男子の場合、片腕の平均断面積が25平方センチメートルあるので、片腕で250kg、両腕だと、なんと500kgの力が出ることになります。
これは、軽四自動車なら持ち上げられる計算です。ただし、この力を発揮した場合、筋肉の筋繊維はズタズタになってしまうので、しばらくは動くことができないといわれています。
この「馬鹿力」を実証した出来事が、実際にアメリカで発生しました。
車のタイヤ交換をしようとした息子トニーは、ジャッキで車体を持ち上げ下に入るも運悪くジャッキが外れ下敷きになり、気を失ってしまう。 それを見かけた近所の子供が、あわてて家の中にいた彼の母親を呼んだ。
母親は息子を助けるため、何と 一人で車(350kg)を5分間持ち上げ続けたのです。救出されたトニーは2日間意識不明の状態になったが、命に別状はなかったという。(世界まる見えテレビ特捜部より)
では、この馬鹿力が発揮されるメカニズムはどうなっているのでしょうか。
①非常事態発生 ⇒ ②脳から運動能力を高めるアドレナリンと麻薬物質であるエンドルフィンが高濃度で全身に放出される ⇒ ③アドレナリンにより筋力制御のリミッターが外れる⇒ ④筋力が100%発揮される ⇒ ⑤モルヒネの数倍もの鎮痛作用があるエンドルフィンにより、ひどいケガをしていても痛みを感じることなく動くことができる。
非常時は本当にひどい傷を負っても、気が付かなかった人が、非常事態が終わると、あまりの痛みに気絶したり悶絶したりする人も多いということです。
自分の命に危険が生じた時、生きるか死ぬかの瀬戸際では傷ついても生き残るために全力を尽くす必要があり、リミッターなどかけている場合ではないわけです。リミッターを解除するだけでは痛みを感じて100%の筋力を出せないために、鎮痛作用があるエンドルフィンも合わせて放出させているのです。
「火事場の馬鹿力」はまさにこういう危機的状況に際して100%に近い力が発揮された状態で、すなわち誰の身体にも備わった防御システムということが出来ます
もう一つ、この「火事場の馬鹿力」を利用しているものがあります。
それが、スポーツです。陸上などのトップアスリートは少なからずやっています。
スポーツ選手などは、スタート前に大声を出したり「ぶつぶつ」独り言をいったりしているのは、脳への制限解除を意図的に行うことで、超人的なパワーを得ようとしているものと考えられます。
叫ぶことによって脳の興奮水準が高まり、その瞬間に使いきれていなかった筋肉を動かすために必要なところが一気に覚醒して、無意識的に通常以上の力が発揮できるのです。これを「シャウト効果」といって実験でも、確かに筋力が上がるというデータが出ています。
他に、これもトップアスリートが良くやっている方法で、成功のイメージを強く抱くことで最高のパフォーマンスを発揮する方法です。そのイメージトレーニングのコツの一つに、「成功するために必要なプロセスを組み立てる」というのがあります。この方法で、ラクビーの五郎丸さんも「火事場の馬鹿力」を使っているのではないでしょうか。
私たちは、最大のピンチを迎えたときに、いつも以上の力が出せるように創られているのです。
それは、人体が備えたというよりも、神仏が設計的に考慮されたからではないでしょうか。
---owari---
コメント、ありがとうございます。
おほめのお言葉を頂き、恐縮です。
微力ながらお伝えしたいと願っています。