(戦後の変化に対応できず、現状を鳥瞰する力がない日本)
日本は戦後73年もたって、まだ過去に縛られたままでいます。いわゆる“金縛り状態”になっており、国民も、教育体制も、マスコミの報道姿勢も膠着している状況で、変化に対応できないでいるのではないかと思います。「今、進んでいるのは、どういうことなのか」という現状を鳥瞰するだけの力がないと思われることが、とても残念でなりません。
例えば、昨年、NHKが「沖縄と核の問題」について特集していましいた(2017年9月10日放送、NHKスペシャル「スクープドキュメント 沖縄と核」)。
それによると、戦後、沖縄がアメリカに統治されていた時期に、沖縄にはアメリカの核ミサイル基地があったそうです。今は、そこは廃墟になっているような状態ですが、番組では元アメリカ兵等にインタビューをしながら特集を組んでいたのです。
その論調を聞いていると、「沖縄にこれだけの核ミサイル基地があって、日本人、特に沖縄の人には知らされていなかった。万一のときには、沖縄は核で吹っ飛び、消滅していたかもしれない」というようなことでした。
特に、1962年のキューバ危機においては、ソ連がキューバに核ミサイル基地を設けて、アメリカにミサイルを向けようとしていたことを受け、ケネディがその撤去を求めて、いわゆる海上封鎖を行いました。
彼が、「もし、ソ連のフルシチョフがキューバからミサイルを撤去しなかったら、全面戦争も辞さない。核戦争も辞さない」と決めたときには、沖縄のミサイルはすべて、すぐにでも発射できる「ホット」の状態になっていたといいます。そして、元アメリカ兵が、その当時を思い出して、「沖縄は本当に危ないところだった」ということを言っている姿を流していたのです。
これらを結論的に見ると、「沖縄がかわいそうだ。米軍基地はあるし、核がたくさんあることを知らされていなかった。日本の国家は不正直で、すべて沖縄にしわ寄せした」というような言い方になるわけです。
これだけでは、沖縄で今、米軍基地の辺野古移転の反対運動等をしている人たちのように、米軍基地の撤去運動をするのが正しいことであり、その応援として、番組を通して、「ヤンキー・ゴー・ホーム(アメリカ人は帰れ)」と言っているようにしか見えません。実際、私にはそのように見えました。
(「個人の救済」と「国家レベルの問題」では考え方が違ってくることを知るべきだ)
ただ、今述べた番組と同じようなものは、マスコミの基本的な体質ではあるので、これについては考えなければならないと思っています。
NHKに入局すると、最初に上司から教わることのなかに、「マスコミの使命とは権力への監視であるから、基本的な取材姿勢としては、とりあえず、『弱者の見方』という方針を立てれば、それでよいのだ」といったものがあるように聞いています。
それに対して、特別な異論があるわけではありません。
弱き者、あるいは経済的に貧しい者たちに光が当たっていないならば、そこを助けるために取材し、報道することによって、国や地方公共団体が、しなければならないことに気づきます。そういうものが報道されたら、「何とかしなければいけない」と考え、政治が動き始めるわけです。そのような意味での使命がマスコミにあることは、事実でしょう。
また、これは、宗教にとっても考え方としては大きくズレているわけではありません。宗教としても、弱き者や貧しき者、あるいは圧迫されている者等を助けること自体は、決して本務に背くことではなく、しなければならないことの一つです。
ただ、そうした「個人や少数の者の救済という考え方」が大事である一方で、もう一つの問題は、それが「大きな組織や国家レベルの問題」になってきたときには、その考え方が変わってくることがあるというところです。
例えば、国家レベルで考えたときに、常に少数者の利益だけを推進して、多数者の利益を損なうような判断をし続けた場合、国の政治を間違った方向に導くことになりかねません。
では、NHKが「沖縄と核」についての特集を放送したことにより“利益を得たところ”はどこでしょうか。それは、まさしく今、核開発をし、ミサイル実験を行っている北朝鮮でしょう。この場合、「北朝鮮が核ミサイルを保有して自国を守ろうとするのは、当然のことだ」と言っているようにも見えるわけです。
その特集は、「冷戦時代には、日本も、こんなにもたくさんの核ミサイルを用意して、戦う準備をしていた。もしかすると、沖縄を中心として、ソ連と中国の両方と戦うつもりであったのかもしれない。もし、そのようになっていたら、沖縄は、当然、攻撃されて粉々になって、なくなっていたに違いない」という感じでつくられていました。
これでは、金正恩のほうに、「アメリカが核攻撃できるのだから、北朝鮮も当然ながら(核で)防衛すべきだ」という“信号”を送っているように見えなくもないわけです。
---owari---
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