さて、読者にはSEALDsや石田純一氏、山口二郎氏のような発言に対し、次のような事実をも知ったうえで自らの知性に問いかけてもらいたい。
2016年9月に開かれた東アジア首脳会議(EAS)で、安倍首相は国際法に基づく海洋秩序の重要性を強調し、中国に対して東シナ海での中国側の主張を全面的に否定した仲裁裁定に従うよう求めた。オバマ米大統領も、仲裁裁定について「法的拘束力がある」と記者会見で強調した。仲裁裁定を「紙切れ」といって無視する態度を変えない中国に参加各国も翻意を促した。
この意味は大きいが、中国は相変わらず仲裁裁定を無視したまま南シナ海の軍事拠点化を着々と進めている。スプラトリー(南沙)諸島で人工島造成を進め、滑走路や港湾を整備し、軍備を増強中である。
日本とのあいだには尖閣諸島だけでなく、東シナ海の日中中間線付近で中国が一方的に進めるガス田開発の問題もある。
日中両政府は2008年に東シナ海のガス田共同開発について合意したが、中国側はこれを無視するかたちで開発を続けている。
2016年10月上旬に中国が移動式掘削船を停船させて作業を行っていることが確認され、同海域ではこれまでに16基の施設が確認済みだが、新たな施設と判断されれば17基目となり、日本側の海底資源が奪われたり、軍事用レーダーを設置されたりする危険性がある。
岸田文雄外相の抗議に対し、中国外務省報道官は「日本は中国の主権を尊重し、中国の正常な活動をあれこれ非難するのをやめるように望む」と、どこ吹く風である。
中国と日本の関係において、ほとんどのマスメディアは近年、「尖閣諸島国有化以後に悪化した日中関係」と伝えるが、これは正しい認識ではない。
石原慎太郎氏が都知事時代の2012年に尖閣諸島の購入計画を表明し、都民、国民から多くの拠金が寄せられた。
そのとき「石原さんが尖閣購入を言い出さなければ、中国とのあいだに問題は起きなかった」と批判したのは民主党(当時)の前原誠司元外相だったが、マスメディアはそれに何の疑問も感じなかったのか。
実際には2012年の春先、中国共産党機関紙である『人民日報』が、尖閣は中国にとって核心的国益であり、それを守るためにさらに果敢な行動に出る。そのために必要な機材も準備すると宣言したことに始まる。
これに対し、「現実問題として、こちらの懐に手を突っ込まれている状態で何もしないということはあり得ない。個人の日常にたとえても、その手を振り払うのが当たり前じゃないですか。私は何もしない政府に代わってでもあの島々を守るために取得し、灯台や船だまりなどのインフラも整備してあの島々を守らねばと決心し、それに呼応して数多の国民から献金が寄せられたわけです。国民の国防意識の高さを汲まずに、不作為を続ける政府に非難されるいわれはない」と述べた石原氏の認識は間違っていない。
東京都が尖閣諸島の購入を表明し、その後、実際に国が購入したことが、日中関係悪化の引き金になったのではないことを日本国民は知っておく必要がある。
---owari---
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