山に登りたい 

あの山にも、この山にも、もっともっと登りたい!

坊ちゃんクライマー

2014-02-27 11:01:11 | 山で出会った人
2014年 2月22日 英彦山にて

青と白のストライプ、ポンポン毛糸の帽子がよく似合う。
足長で色白の若者は坊ちゃんクライマー。

英彦山中岳の山頂小屋に、小さくお辞儀をして、ひょっこり入ってきた。
まだ少年といってもいいほどに、幼さが残る顔立ちである

ちょうどお昼時で、私たちは雑炊の準備を始めたところだった。
コンロに火をつけると、それだけでなんとなくプロっぽい気がして優越感を感じてしまう。(それこそ、とほほのど素人よね!)
雑炊の素と、溶き卵と、ネギとでちゃちゃっと美味しい雑炊の出来上がり!
卵の黄色とネギの緑が鮮やかで、見た目にも食欲をそそられるのよね~
山では何を食べても本当に美味しい!
とりわけ冬の雑炊は、誰かに食べさせてあげたいくらい。
誰かにって、誰に?
厚かましくも、その坊ちゃんクライマーにうっふ

ところが、
坊ちゃんクライマーは、自分のザックからあれこれ取り出し始めた。
コンロ、いくつかのコッヘル、フォークとスプーンさえいかにもアウトドア用。
水筒だって、いかにも山専ボトルが大小2本。
手際よく、準備を始めるとさらにザックから食料を出してきた。
若者だから、どうせコンビニのおにぎりかカップラーメンくらいだろうと思いきや、
お湯を沸かしたコッヘルに、山用のラーメンと鶏飯おにぎりをぶち込んだ。
ぐちゃぐちゃにかき混ぜて、湯気が立ちあがる。
ありゃ、おいしそう!

なんだ、
私の出る幕ないじゃん。

とあれ、小屋での食事は楽しくおしゃべりもはずむ。
私達より年配の男性方二人とも、山の話で盛り上がる。
クライマーズハイとは登山時の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことだが、そこまでなくても、山では普段とは違う心の高揚がある。

さて、食事を終え、坊ちゃんクライマーより一足お先に北岳へ出発。
坊ちゃんは優雅にコーヒータイム。


ところが、
若者は健脚ね~!
北岳の手前で追いつかれてしまった。
中岳からの下りは雪が深く、傾斜も急でかなりの注意が必要だと思ったのに。
足が速いのね~。

坊ちゃんクライマーは、広島から仕事の都合で一年間だけ九州にいるのだという。
久住も雲仙にも登って、最後には開聞岳に登りたいと話していた。

あー、しまったなーー
聞けばよかったな--

「今度はいつ、どこの山に登られますか。」って。
「うちにご飯食べに来ませんか。」って





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イケメンおじさま

2014-02-08 16:24:29 | 山で出会った人
2014年 1月25日  久住御池にて

「渡られますか?」

その人は私を見つめて訊ねた。
雪舞う中で、その人の目は私を包むように温かかった。

くらくら~~!!
へろへろ~~!!
ドドーン、ドーン!!

イケメンと言えばせいぜい30代くらいまででしょ。
上から下まで黒一色で決めていた、スマートなその人は多分私と同世代。
うぷぷーっ!

なのに、なのに、
カッコいいのである。

何がカッコいいかって、

なんだろう?

顔かな?雰囲気かな?
背も高かったし、、、

だけど、だけど、

「渡られますか?」

だなんて!!
ふつう、そんな言い方はしない。
山で出会う人達は、特に同世代のおじちゃんたちは
「池、わたるとね?」
「凍っとうやろ」
と、こんなものである。

それが「渡られますか?」ときた。


くらくら~~!!
へろへろ~~!!
ドドーン、ドーン!!
である。

なんてお答えしましょうやら?
「え?」 「あ?」 「あの・・・」
となってしまう。

イケメンさんだった。
イケメンおじさまだった。
スマートでかっこよかった。

実はそのイケメンおじさまの顔立ちなんて、しかとは覚えていないのだけど、

車で例えるなら、彼はベンツだった!

うちの夫殿はプリウスであります。
そして私はヴィッツであります。

とほほーー(笑)

テレビの画面以外でイケメンさんを見ることが出来た。
久住はいい山である。





天山昔話

2013-10-30 21:22:53 | 山で出会った人
2013年10月19日(土) 1046m

山に登りたい、山に登りたい、そう思いながら日は過ぎていく。
登りたい思いだけがふくらんで足腰はしぼんでいく。
雨風が強いとならば、山には登れない。そんな日が続いていた。

それでもやっとやっとの山登り。佐賀の天山!


佐賀平野、有明の海、遠く雲仙を臨む


秋だなあ!



昔、むかーし、
天山のふもとに薄紅色の実をつけた一本の木があった。
春の光を浴びた葉の緑も美しかったが、
秋の夕暮れ、薄紅色の実がさざめくその姿は、えも言われぬほどに美しかった。

その木の名前は「まゆみ」
弓を作るのにふさわしい硬い幹をしているところから真弓と名がついた。

あるとき、
一人の若者が町で仕事を済ませた帰り、その木の下を通りかかったところ、一人の女の子がしゃがみこんで泣いていた。

こんな夕暮れにたった一人でどうしたのだろう。家では親が心配しているだろうに…
そう思った若者は女の子に声をかけた。

「こんなところでどうしたの? おうちに帰る道がわからなくなったの?」

見ると女の子は泣いているばかりか、手のひらには擦り傷のようなものがあり、寒さで震えていた。
若者は、何を聞いてもしゃくりあげているばかりの女の子の手を包んで、もう一度たずねた。

「何か手伝ってあげようか?」

すると、女の子はやっと泣くのをやめて若者を見上げ、こう言った。

「桜の花だと思ったの。桜の花をおっかさんに見せようと思ったの」
「おっかさん、桜の花が見たいって、そう言ったの」
「だから、わたし、家からここまで駆けてきて、この木を見つけたの」
「それなのに、それなのに…」
「桜の花じゃなかった…桜の枝を折っておっかさんに持って帰りたかったのに」
「桜じゃなかった…」

女の子はまた泣き出した。
涙が次から次へとあふれて、たもとを濡らした。

女の子の母親は咳が止まらず、もう長いこと寝込んでいたのだ。
父親は女の子が生まれる前に亡くなっていたので、女の子は父親の顔を知らない。
母娘二人で、何とかしのいできたのだが、梅雨冷えの頃から母親が体調を壊してしまった。
そしてこのところ、しきりと「桜の花が見たい」というようになったのだ。

季節は秋。
桜なんて咲いていようはずがない。

しかし、とうとう母親は布団から起き上がれなくなった。
毎日、うわ言のように
「桜…桜…」
と言っては、天山のふもとに目をやるのだった。

その様子を見て、女の子は居ても立ってもおれなくなり、桜の花を探しに家を飛び出し、山のふもとまで駆けてきたのだ。


「桜の花を持って帰らないと、おっかさんが死んじゃう」
女の子は思いつめていた。


「名前はなんて言うの?」
若者はたずねた。

「え?名前?」

「そう、おまえさんとおっかさんの名前」

「わたしは咲、おっかさんは真弓」

若者は頷きながら、ふところから一枚の手拭いを取り出して、女の子の涙を拭いてやった。透き通るような若者のまなざしは、寂しそうであったが、何かを懐かしんでいるようでもあった。

「さあ、もう暗いからお家にお帰り。家まで送って行ってあげよう」

「でも、桜の花を持って帰らないと、おっかさんが、おっかさんが・・・」

「大丈夫だよ。いま涙を拭いたその手拭いを見てごらん」

女の子が手拭いを広げてみると、
そこには一面の桜の花が描かれていた。
ほんのりと薄紅色の桜が、流れる川の水面を覆いつくすように咲いている。
花びらの一枚一枚が、今にも手拭いから浮き出て、あたりを舞い始めるに違いない。

「あの、これ…」

「おっかさんに持って帰っておやり」

「はい、でも・・・」

女の子はその手拭いを自分の懐に入れて、何度もまゆみの木を振り返った。
振り返りながら、若者といっしょにおっかさんの待つ家に向かった。

あたりはいつの間にか暗くなり、足元がおぼつかなかったが、
若者と一緒に歩くことで女の子の心は弾んでいた。

「おっかさんに手拭いの桜をみせよう」
「本物の桜ではないけれど、きっと喜んでくれるに違いない」
「この手拭いをくれた、親切な男の人のことも話してあげよう」

やがて、まっすぐ向こうに、家のわずかな灯りが見えた時、
女の子はうれしくて、駆けはじめた。


「おっかさん、おっかさん!」
「桜の花だよ、ほら、こんなにきれい!」
「おっかさん、桜の花だよ。見て、見て」


布団から起き上がった母親に、女の子は懐から手拭いを差し出した。

「こ、これは・・・」
「この手拭いの、この桜は・・・」

「おっかさん、これはね、木の下で男の人が・・・」
「あれっ?」

家までついてきてくれている、と思ったその若者の姿はなかった。

「おっかさん、この手拭い、ここまで送ってくれた男の人にもらったの」
「おっかさんに見せろって。桜の花がたくさんだからって」
「ここまで送ってもらったのに、あたし、お礼を言うのを忘れちゃった」
「そこまで見てくるね」

「咲、咲、もういいんだよ」
「もう追いかけなくていいんだよ」

見るとおっかさんは、桜の手拭いを頬に押し当てて泣いていた。
泣きながら、大きく息を吸い込んでこう言った。

「桜のにおいがする。あの人のにおいがする」
「あの人が会いに来てくれた。この手拭いを持って会いに来てくれた」
「うれしい・・・」

「おっかさん、どうしたの?」

「清一さんだよ。お前のおとっつぁんだよ」

「え?  だって、おとっつぁんはとっくの昔、あたしが生まれる前に死んだって言ったじゃないの」
「それにあたしが山で出会った人は、若いお兄ちゃんみたいな人だったんだよ」
「おとっつぁんなら・・」


「咲、まちがいないんだよ」
「この桜の手拭いは若い頃、私が清一さんに送ったものなんだよ」
「ほら、この隅に真弓と縫い取りがあるだろ。これは私が縫ったんだよ」

「清一さんが会いに来てくれたんだ」

確かに手拭いの四隅の一つに、赤い糸で真弓という文字の縫い取りがあった。

咲は訳がわからなくなかった。
しかし、やせて青白かったおっかさんの顔が、幾分ふっくらしてきて、頬も桜色に染まってきた。
懐かしむように、手拭いを胸に抱きしめるおっかさんは若い娘のようだった。


おっかさんが元気になった。
桜の手拭いのおかげで、おっかさんが笑うようになった。
咲といっしょに畑仕事もどんどんこなす。
姉さんかぶりの手拭いがよく似合う。

咲は思う。
あの時の若者はいったい誰だったのだろう。
どうしておっかさんとわたしの名前をたずねたのだろう。

咲はもどかしい思いを抱えながらも、おっかさんが元気になったことがうれしかった。
だから、その後はおっかさんにあの若者のことはたずねなかった。
おっかさんも何も言わない。

「おーーい」

咲は天山に呼び掛けてみたが、鳥のさえずりが響くばかりだった。



ってな、昔話を作ってみた。
どうかしら?

真弓の木は、冬になり葉を落とすと、薄紅の外皮が裂け、中から真っ赤な実が垂れ下がる。キジバト、ツグミ、ヒヨドリ達の格好のえさとなる。

真弓の木




天山からの眺めはいつも美しい


初めて、天山に登った時は82歳の山紳士、今回は真弓の木。
今度天山に登った時は、どんな物語が生まれるのかな?























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天山からヒマラヤへ

2013-09-09 09:25:30 | 山で出会った人
2013年9月9日(月) 妄想の日

佐賀の天山に登ったのは夏の初め。鳥たちがにぎやかに迎えてくれた朝だ。

その日、一人の老人と出会った。
気負うでもなく、ゆるやかに、さらりとした、その人の歩き方は、
山登りというより、地面すれすれのところを浮いて滑っているようなのだ。
足音もしなければ、足跡も残さない。
そんな歩き方なのだ。

82歳で天山は146回目だという。
山には不釣り合いな端正な顔立ちで、「山頂でのビールがうまい」と、微笑む。

天山!
天に向かう山。
そんな山がほかにもある。

天にそびえるのはヒマラヤの山々。

これだ!
ヒマラヤだ!
ここはヒマラヤだ!


恐る恐る聞いてみる。

あのー、若いころはいろいろ登られたと聞きましたが、もしかしてエベレストにも?

いやいや、ヒマラヤの山には何度も挑戦したが、敗退ばかりじゃった。
世界最高峰のエベレストには、わしの弟子が日本人で初めて登頂したんだよ。
植村直己君だ。知ってるかい?

はい、もちろんです。彼の著書はすべて読みました。
憧れなんです。直己ちゃんは山の恋人です。
植村直己があなたのお弟子さんだったのですか?

そうなんだ。彼はなかなかいい奴だった。
登山家としても、一人の男としてもね。
マッキンリーからまだ帰ったこんのだよ。

ええ、ええ!いつか、植村直己記念館を訪れたいと思っているんです。

そうか・・・。
ところで、あんたは加藤文太郎は知っておるかね?

はいっ!彼こそ私が山登りを始めたきっかけと言ってもいいほどなんです。
新田次郎の「孤高の人」も読みましたし、彼自身の「単独行」もAmazonで手に入れて読みました。

アマゾン?
なんじゃね、それは?
わしはジャングルの話をしておるんじゃない、ヒマラヤの話じゃ!

あ、
は、それは・・・
はい、はい。もちろんヒマラヤの話でした。
すみません・・・

そうじゃ、
あの加藤文太郎こそ、わしの山登りの師匠なんじゃ。

ひえーっ!
あの文太郎をご存じなのですね。
しかも山登りの手ほどきを受けた・・・
そ、それは・・・

そうなんじゃ、
文太郎先生は、地下足袋一つでも山に登れること、納豆と干し魚さえあれば何日でも縦走できることを教えてくださったのじゃ。
そうした強い心を自ら示して、幼い儂の前をすたすた山に登って行った。
まるで、地面すれすれのところを滑るようにな。
わしは何度もその歩き方を練習したもんだ。
この年になって、やっと体得したように思うんじゃが。

はい、はい。
それはもう。先ほどから負担のない素晴らしい歩き方をされていると、感心しておりました。

そうか、あんたもまだ若い。
これから修行を積めば、竹内洋岳にも、メスナーにだって会えるぞ。

はー、
私は実は山野井妙子さんに会いたいんです。
あの方の笑顔ってたまらないですよね~~
沢木耕太郎の「凍」を読んで知ったんです。
彼女の~~

もういい、もういい。
あんたはどこまでしゃべるつもりじゃ。
わしは、もう一人でビールを飲みたくなった。

まあ、それはすみませんでした。
山でのビールは、最高なんですよね。


今日のソーメンはおいしかったね。
山でソーメン食べられるなんて、最高だね!

ん?
夫殿の声。

私、寝てた?








はっちゃけ山姥になろう!

2013-09-06 15:19:19 | 山で出会った人

寒い季節の阿蘇烏帽子岳で、出会った若い女性は、はっちゃけていた。
友もなく、一人で山頂に立った彼女は、高く響く明るい声で

「写真撮ってくださーい!」

カメラを向けると、にっこりピース。
さらに、くるりと後ろ向きになって、バンザーイと思い切り両手を空へ。
なんとも元気よく気持ちのいいお嬢さんだ。

「Facebookに載せるんでー」

と、また高らかに笑う。つられてこちらも気分が高揚してきた。

山での出会いは楽しい。少しの会話で、気分もほぐれ笑顔になってくる。

このお嬢さんは、関西からの仕事帰りに一日だけ体が空いたので、烏帽子岳なら登れると思って、やって来たのだそうだ。

ほう!なるほど!山が好きなんだなー!
一人でサッサと山に登って、眺めを楽しむ。
写真を撮ったり、雪と遊んだりー。

いいなあー。
山姥の私にもできるかな。
一人で山に登れるかな。

あー、だから、ダメなんだ!
疑問型だからダメなんだ!

登れるかな?ではなく、私だって、一人で山に登ってやるぞ!
そうこなくちゃ!

若くなくったって、山姥だって、きっとやればできる。できるはずだー!

では、どこへ?
どこの山なら一人で登れる?

まずアクセスの問題。いつも夫殿の車に乗せてもらって、居眠りなんぞもして、どの道がどこへ繋がるのか知りもしない。
のんきにお任せで、登山口駐車場まで連れてきてもらい、家まで連れて帰ってもらっているのだ。

山姥お一人さまだと、そうはいかない。
まず、車の運転が駄目。山登りの前に車で遭難すること、間違いなし!
ならば、公共の交通機関利用となる。

うーむ

どこにある?

駅または、バス停から登山口までが、そう遠くない山。
そんな都合のいい山がどこにある?
ついでに楽に登れる山でないと、気分からして遭難すること間違いなし。

うーむ

山姥お一人さまの山!

うーむ

あったぞ!
ここならきっと登れるぞ!

添田町の岩石山

この山は、前に登ったとき、5人に追い抜かれたのだが、その5人共、女性の単独行だったのだ!
しかも、私山姥と同年代か年上の人たちのようだった。
気軽にスタスタ登る人、バッチリメイクのお洒落さん、などなど。

おうっ!これはいいかも。

JR添田駅から、登山口までは徒歩15分!
これなら登れるぞ!

いつか、必ず「山姥お一人さま紀行」を実行しよう!

「夫殿、一人でゆくぞ。さらばじゃ。」
と言って朗らかにでかけよう!



はっちゃけ山姥の誕生である!