7、第三の獣(ひょう): ギリシャ
「その後わたしが見たのは、ひょうのような獣で、その背には鳥の翼が四つあった。またこの獣には四つの頭があり、主権が与えられた」(ダニエル7:6)。ひょうというのは体格は大きくなくても、敏捷で勇猛な猛獣です。それに迅速な行動を象徴する羽がつけられていることは、彼の軍隊が驚くべきほどの機敏性を備えていたことを表しています。このような機敏性はアレキサンダー大王が率いるマケドニア軍が、短期間に広大な面積を征服した歴史的な事実と一致します。20代で王の位に着いたアレキサンダーは、3万5千名の騎馬部隊と70タラント余りの軍事資金と一カ月分の食料だけを持ってペルシャ帝国と小アジアを征服しました。そして東はインドにまで達する大帝国を築き上げましたが、不節制な生活と熱病によって33歳で夭折することになりました。彼は東西南北を鳥のように素早く動きながら、非常に短い期間で広大な占領地を手に入れました。
四つの頭という表現の意味は何でしょうか。聖書で頭は、首領あるいは指導者を表わします。「スリヤのかしらはダマスコ、ダマスコのかしらはレヂンである。(六十五年のうちにエフライムは敗れて、国をなさないようになる。)エフライムのかしらはサマリヤ、サマリヤのかしらはレマリヤの子である。もしあなたがたが信じないならば、立つことはできない』」(イザヤ7:8,9)。このような象徴は実際にアレキサンダー大王の死後そのまま実現されました。熱病で臨終を目の前にしていたアレキサンダー王は、大帝国の将来の後継者は、誰なのかを部下の将軍たちに尋ねられたとき、「最強の者が帝国を継承せよ」という有名な遺言を残しました。彼の遺言の通り、大帝国は力強い者たちの争闘の場となりましたが、結局四人の将軍すなわち、カッサンドロス、アンティゴノス、セレウコス、プトレマイオスにより、アレキサンダー大王の大帝国が4つの王国として分割されてしまいました。しかし神様が定められた運命のときは、今回もたがわずに訪れました。4人の将軍によって分割された四つの王国は、第四の獣であるローマ帝国によって預言通りに征服されてしまいました。