上の表は3月30日までの、国または地域別の100万人当たりの検査数である。主要な国では、ノルウェーが15,234件、スペイン7,593件、韓国7,566件、イタリア7,1041件、ドイツ4,161件、アメリカ2,032件、フランス1,548件に対し、日本は僅か385件である。(別の資料では、3月20日までの中国の広東市が2,820人)
日本が検査数が極端に少ないのは、当初、PCR検査を国立感染症研究所が疫学調査から始めたことが尾を引いている。疫学調査では、主にサンプルを抽出し、統計的手法を用いて、感染症の予防に役立てるという手段が採られ、検査数を大量に増やすという考えはない。これは学問的なデータ蓄積には役立つが、covid-19の場合のWHOの方針、検査により感染者を特定し、その先の感染を予防すること、感染者数の実態を把握することには不向きである。
政府は検査数が少ないとの指摘に対し、菅官房長官が「欧米ほど多くの死者数が出ていない」ので問題はないと言っている。この立場は、専門家会議や日本の少数検査で充分だとするその他の医学系学者と同じである。しかし、シカゴ大学の山口一男教授 は「死亡者数も年間十万人前後にのぼる一般の肺炎死亡者の中に隠れてしまう」 (東京新聞2020.4.3)と指摘している。つまり、10万人も肺炎死亡者がいれば、医師が強く疑わない限り、コロナウイルスによる死亡であることを見逃してしまい、実際に何人がコロナウイルスによる死亡なのか分からないということである。
いずれにしても「検査数は少なくて良い」としているのは、世界中で恐らく日本だけだろう。他の国、例えば英国は、検査キットが不足して必要な検査が実施されていない報道されている。それでも、同じ人口比で日本の4倍は検査がなされているのだ。
確かに、検査数にかかわらず、実際に感染拡大が起きなければそれでいい。今のところ、欧米のような爆発的感染拡大は起きていないのは間違いないだろう。しかし、「緊急事態宣言」が行われても、欧米のほとんどのメディアが効果については「懐疑的」(NHK 4.8)である。これは、日本が世界中の対策とかけ離れた生ぬるい対策をとっていることへの懸念である。CNNは4月5日「ニューヨークは明日の東京か?」と指摘したように、今のところのウイルスが平静に見えても、明日は爆発的感染拡大が起きないという保証はないのだ。爆発的感染拡大が起こらないとする理由はどこを探しても見当たらない。それがが起きたことが判明するのは、菅官房長官の言葉に従えば、大量の死者が出た時である。大量の死者が出たら、その時になって何とかすればよい、ということなのだろうか? それとも、日本政府は「日本は神風が吹くから大丈夫」と思っているのだろうか?
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