子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)阿部 彩岩波書店このアイテムの詳細を見る |
子どもに関する対策を「少子化対策」と思っている人は少なくない。
欧米諸国では子どもの貧困が重要な政策課題であるのに比べ、日本では
「子どもの貧困」という視点はほとんど論じられてこなかった。
実際に、日本は先進諸国の中でも長い間低い失業率を保ち、子どもを持つ
世帯は比較的に均一であり、高齢者世帯や単身世帯に比べ豊かであった。
このような中で、子どもの貧困に対する政策のプライオリティが低くなり、
出生率の低下、労働力の減少などに現れる目の前の少子化問題を重要課題と
する家族政策が推し進められてきたのも、当然の流れである。
しかし、「子どもそのものへのアプローチが乏しい」政策である。
子どもの数を増やすだけではなく、幸せな子どもの数を増やすことを目標と
する政策が必要なのである。
すべての子どもの幸せを追求するためには、急速に進展しつつある子どもの
貧困に目を向けなければならない。親の経済状況や家庭環境にかかわりなく、
すべての子どもが、幸せで健全な発育の場と、教育の機会が与えられること、
それこそが政策の重要課題であり、その目的は家族政策の範疇に収まる話では
ない。
すべての子どもが享受すべき最低限の生活と教育を社会が保障すべきである。
日本の人々が考える「子どもの最低限の生活」は、他の先進諸国に比べて
低い傾向にあるものの、それでも、満たされていない子どもが存在する。
義務教育(最低限の教育)、医療制度、最低生活保障。
戦後の日本の経済成長と社会保障の発展の中で、達成されたと考えられていた、
さまざまな防貧のセーフティネットが充分な機能を果たせなくなってきている
のである。この機能を回復すること、それが、子ども政策のウェル・ビーイング
に繋がり、幸せな子どもの数を増やすことにもなるのである。
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