時に4コマブログ 『この世はパラダイス』

世の中いろいろありますが、ココロはいつも夢幻郷。

おすすめペーパーバック

2020-04-30 14:32:31 | つなぎ






 世間は外出自粛で大変ですが、こういう事態を経験すると、普段の当たり前の生活がどれほど価値のあるものだったかを実感しますね。そろそろ自粛疲れでやることがないという方も多いのではないかと思いますが、読んでみようと思いながらも普段ゆっくり読む時間がなかった、というような英語の本を読んでみるのにも良い機会ではないでしょうか。

 そこで、以前会社の若手向けの参考としてまとめた、私がこれまで読んできた英語の本(主にペーパーバック)のリスト(&簡単な感想)をお示しします。英語の本を読もうとして、誰もがまず悩むのが「何をどう選んだら良いのか?」でしょうが、英語関連のWeb上の種々解説や書籍等で共通して挙げられている本を中心に、読んでみようか、と思ったものを選んで来たものです。多少なりともご参考になれば幸いです。

 本の良し悪しの判断は個人の趣味によるところが大きいかと思いますので、あえて☆は付けませんでした。が、一応各ジャンルごとに大まかには私が読んで楽しめた順に並べています。なお無料電子版は全てProject Gutenberg(日本語の「青空文庫」の英語版ですね)からのダウンロードでKindleで読んだものです。

 

【小説】

<一般>

  • The Catcher in the Rye | J. D. Salinger
    作者のサリンジャー氏が亡くなった時に、ニュースであまりに皆が名作だ名作だと言っているのを聞いて、「そこまで言うなら読んでみようか」と思って読んだものです。高校を退学になった落ちこぼれの主人公を通して、誰もが青春期に多かれ少なかれ抱くであろう、やり場のない鬱屈感を描き切った小説で、紛れもない傑作です。若者を中心に多くの人の心をとらえ、熱烈なファン層を獲得したのも、その普遍性ゆえと理解できます。特にラストシーン(格別凝ったものでも何でもないですが)は、日本の小説、海外の小説を問わず、私のこれまで読んだ小説の中でもベストの1つです。

  • All Quiet on the Western Front | Erich Maria Remarque
    原作のドイツ語の英訳版ですが、昨年メルカリで500円で買って読みました。大昔に映画(1930年のアメリカ映画ですが:邦題『西部戦線異状なし』)は見たものの(TV放映だったかビデオだったか)、お話の内容は全く記憶に残っていませんでしたが、エンディングのシーンだけは強烈に頭に焼き付いていました。その後、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した際の記念講演で、特に心に残る3冊の本として、メルヴィルの『白鯨』、ホメロスの『オデュッセイア』とともに挙げていたのを見て(講演を聴いたわけではなくメディアの記事で)、読んでみようと思ったものです(白鯨は一番下(挫折本)に書いたように途中で挫折してしまいましたが)。ストーリーにこれといった特段のドラマがあるわけでもないのですが、戦争とそれに巻き込まれた人間の本質を多面的な視点で(反戦や友情などの単純なテーマではなく)鋭く描ききっています。文体は全編昔英語の授業で習ったいわゆる「歴史的現在形」で書かれており、日常の世界のお話ではないので当然ながら語彙的にも見慣れない単語も多く、決して読みやすいものではありませんが、読後に心に残るものの多い一冊です。主人公ポールが、自己防衛のためにナイフで突き刺した敵のフランス兵にとどめを刺せず、敵兵が死ぬまでの長い間葛藤する場面が特に印象的。

  • Different Seasons: Four Novellas | Stephen King
    映画「ショーシャンクの空に」の原作“Rita Hayworth and the Shawshank Redemption”および「スタンド・バイ・ミー」の原作“The Body”を含む4編を収録。Shawshankはストーリーテラーとしてのスティーブン・キングの才能が十分に感じられる傑作です。映画も原作に劣らず秀逸な出来です(ラストシーン等多少原作と異なっていますが)が。“The Body”は有名な映画の原作とは言え、ちょっと引き込まれる要素が少なく、途中で挫折しました。他の二編も特段私には面白みは感じられませんでした。

  • 12 Angry Men | Reginald Rose
    アメリカのある陪審裁判で、12人の陪審員のうち1人だけ無罪を主張する陪審員の議論により、有罪を主張する他の陪審員の考えが次第に揺らいでいく様を描いたTVドラマシナリオ。薄いので気軽に読み始められると思いますが、古いながら名作との評判通り読み応えのある一冊です。今は日本でも陪審制度がありますが、こういう本を読むと、「陪審制は本当に適切な制度なのか?」、「素人の陪審員に判断を任せるよりまず、市民感覚・常識をもつ裁判官を育成する仕組みを作るべきでは?」との疑念が益々深まります。

  • Nocturnes | Kazuo Ishiguro
    ご存知の通り昨年のノーベル賞受賞で脚光を浴びた、日本生まれの英国人作家の比較的最近(2009年)の本(寡作なので)です。英語学習のためのおすすめ本(作家)としてはよく名前が挙がっていて、(多分発売間もなくだった頃に)丸善で平積みになっていたので、読みました(代表作The Remains of the Dayはその前に和訳で読みましたが)。タイトルの通り音楽に関連した短編集です。どれも特段ドラマチックな展開があるわけではないですが、休日の午後に紅茶でも飲みながら読みたくなるような、落ち着いてしっとりとした上質の大人向けの小説という印象です。どちらかと言うと男性よりは女性受けしそうな内容と文体ですが。

  • Jonathan Livingston Seagull | Richard Bach
    40年以上前に一世を風靡した、飛ぶことが何よりも好きな異端のカモメの寓話的小説(というより写真の絵本に近いですが)。当時は特に興味もなく和訳版(邦題:『かもめのジョナサン』)も読んではいなかったものの、その後何となく気になっていて、メルカリのタダポイント(300円分)をもらった際に探してみたらあったので購入したもの。周囲に全く理解されず、群れから追放されて孤独になりながらも、好きなことに没頭して次第に精神世界の深淵にまで至るというお話です。当時爆発的にブームになったのは、閉塞感の中で「何か違う...」との思いを持って生きている人達が多く、その人達の共感を得たからなのか(今でもそれは変わらないかもしませんが)と想像します。生き方の選択に当たって、得るものと失うもののバランスに悩む人には示唆に富むお話しかもしれません。

  • The Firm | John Grisham
    法廷物で有名なアメリカの人気作家の出世作となったデビュー2作目(邦題:『法律事務所』)です。この作家の本はアメリカの空港の売店でもたいてい目立つところに置いてあります。トム・クルーズ主演の映画もありますが、見ていません。ストーリーはテンポよく展開していくので、最後まで楽しみながら読めるかと思います。読後に残るものは特段ないものの、まあいわゆるエンターテインメント小説はそういうものでしょうね。同氏と同じく英語多読のおすすめ作家として必ず名前の出てくるシドニーシェルダンは、会社の先輩から貸りた(「面白いから読め」と渡された)『ゲームの達人』の翻訳本しか読んでいませんが、翻訳から見る限り同様(暇つぶしには良いかもしれないが、特に読後に残るものはない)の印象を持ちました。

  • The Da Vinci Code | Dan Brown
    おなじみの映画の原作です。かなりのボリュームで分厚いのですが、英語自体の難易度は高くはなく、ストーリー展開の巧みさもあって、さほど苦労なく最後まで読み進められると思います。思わせぶりなタイトルのわりに、内容の厚みとオチに対する期待への肩透かし感は否めませんが、分厚いのを読み切った、との実感を得るには手ごろかと思います。

  • Animal Farm | George Orwell
    著者は村上春樹の『1Q84』のタイトルのもとになった『1984』を書いたイギリス人作家です。1984と並ぶ代表作で、動物を擬人化した旧ソ連の体制批判寓話です。人間の農場主を追い出して革命に成功し、動物間の平等を目指したはずが、いつの間にか豚が独裁者として君臨していくというお話。私の生まれる前の小説で、この現代に読むには体制批判の今更感と古臭さは否めないかと思いますが、分量も少なく平易な表現なので、読むのに特段の苦労はいらず、それなりに楽しめるかと思います。壁に書かれたスローガン“All animals are equal.”に豚がいつの間にか付け足したフレーズ“but some animals are more equal than others”が象徴的(本来程度の差などないはずのequalにmoreを付けて比較級にしているところがミソ)。

  • Holes | Louis Sachar
    おすすめペーパーバックで検索するとたいてい出てくる本です。児童文学の分類ですが、数々の賞を受賞したよくできたお話です。盗みの濡れ衣で矯正キャンプ送りになった少年の冒険譚で、ちょっと現実離れした設定と展開に戸惑うところはありますが、まあ子供の頃の純粋な心に戻って読めば、大人でも十分楽しめかると思います。

  • 41 Stories | O. Henry
    私の頃は高校の英語の教科書やサブリーダーの定番でしたが、今はどうなんでしょうね。懐かしくて読み直してみました。「最後の一葉」、「賢者の贈り物」その他やはり永遠の名作ですね。高校生向けのは多分retold版だったでしょうが、原文も特段難解なところは無いように思います。時代背景がちょっと古いのでわかりにくいところはあるかもしれませんが、オチは皆普遍的なものですので。

  • Goodbye, Mr. Chips | James Hilton
    メルカリで時々もらえるタダポイント300円分で何か買える本がないかと探していて目についたので買ったものです(邦題:『チップス先生さようなら』)。しかし受け取ってみると、表紙の一番上に写真ではわからなかった“This Ladder Edition was adapted to an English vocabulary of 2,000 words”の一文があり、「なんだ初級者向けの語彙制限版か...」と読む気を無くしました。が、厚さ1cmもない薄い本でもあり、まあ読んでみるか、と読んでみると、語彙制限版とはいえいわゆる文学的表現が多くあまり読みやすいものではありませんでした。例えば冒頭のセンテンスは下記のようになっています。

When you are getting on in years (but not ill, of course), you get very sleepy at times, and the hours seem to pass like distant figures, barely seen.(語彙制限版)

When you are getting on in years (but not ill, of course), you get very sleepy at times, and the hours seem to pass like lazy cattle moving across a landscape.(原文)

語彙リストに従って無理やり表現を置き換えているようで、原文の方がよっぽどイメージしやすいですよね。とは言えストーリーを追うのには特段支障はありませんでしたが。内容は、老教師の回想の形によるイギリスのパブリックスクールでの平凡な日々を淡々と綴ったもので、特にドラマチックな展開もエピソードもありませんが、凡人の平凡な人生の価値について考えさせてくれる味わい深いお話です。大学卒業前に行った教育実習(教師になるつもりは全くなかったものの)の頃を思い出しました。

  • The Great Gatsby | F. Scott Fitzgerald
    何度も映画にもなった有名な小説で、「アメリカ文学を代表する作品の一つ」、「英語で書かれた20世紀最高の小説のひとつ」とまで評されているので、ペーパーバックを読み始めた最初の頃に読んでみました。辞書を引き引き苦労しながら、「いつ面白くなるのかなー」と思って何とか最後まで読み進めたものの、正直何が面白いのか全く理解できませんでした。その後かなりの年数を経て、英語の小説を読むのもさほど苦痛ではなくなってから、「あの時面白みを堪能できなかったのは、自分の英語力が足りなかったせいに違いない」と思い、再度読んでみました。しかし...情景や登場人物の心情の理解はずっと向上した実感はあったものの、やっぱり「何が面白いんだこれ??」でした。まあすべての人に面白い小説などはないでしょうから、単に私の好みではなかったということかと思います。同じく「20世紀のアメリカ文学を代表する名作」と言われるThe Catcher in the Ryeも「何が面白いんだこれ??」という人はいくらもいるでしょうし。

  • Twisted: The Collected Stories of Jeffery Deaver | Jeffery Deaver
    犯罪もの主体のアメリカのベストセラー作家で、日本でもファン(多くは翻訳を介してでしょうが)も多いようです。紀伊国屋で平積みになって売れ筋っぽかったので、読んでみました。いわゆる「どんでん返し」が得意な作家のようで、本短編集もタイトルの通り全てひねりを効かせまくった(予測困難な)どんでん返しのオンパレードです。筋を追うのに特に困難があるような文体でもないので、その手の小説が好きな人には良いかもしれません。ただ私はこのような「どんでん返しのためのどんでん返し」や、ミステリーの「トリックのためのトリック」はあまり好みではないので、他の作品は読んでいません。

  • Tuesdays with Morrie | Mitch Albom
    ALSを発症したある大学教授と元教え子の交流のお話。しばらく前のベストセラー「英語耳」の本の中で紹介されていた(聞けるようになるには聞く以上の速さで読めるようになることが必須なので、このあたりから読み始めて多読すべき、として)ので読んだものです。確かにとても平易な表現で特に苦労なく読めるかと思いますが、私としてはこの手の難病ものはちょっと苦手です。

  • To Kill a Mockingbird | Harper Lee
    「アメリカ人なら誰もが(学校の課題図書として)読んでいる常識本(邦題:『アラバマ物語』)」とのことで、読んでみました。濡れ衣を着せられた黒人を熱血弁護士が救うべく奮闘するというお話です。アメリカのネガティブサイドの歴史に興味があれば、読む価値はあるかもしれませんが、多くの日本人にとっては、あまり読んで面白い本とは言えないように思います。

  • The Long Good-bye | Raymond Chandler
    最近は村上春樹の翻訳でも知られる、ハードボイルド小説の古典(私の生まれる前)で名作中の名作と言われる作品なので、読んでおいて損はないかと思い読んでみました。が... 、私にはその魅力は全くわかりませんでした。一応最後まで読んではみたものの、ハードボイルドというジャンル自体が私の好みとかけ離れていることを確認できただけでした。

 

<SF・ファンタジー>

  • Space Odyssey シリーズ | Arthur C. Clarke
    2001: A Space Odyssey、2010: Odyssey Two、2061: Odyssey Three、3001: The Final Odysseyの4部作。言わずと知れたSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』の原作、というより映画の脚本とは別個に書かれた小説(ノベライズというわけではなく)ということのようです。なので映画とは若干異なるところはありますが、2001では映画の難解なラスト(なぜボーマン船長は地球のホテルの一室のような部屋に導かれたのか、等)も一応納得できる説明がなされています。2061はちょっと中弛み感があり、3001では2001でHALによって宇宙空間に放り出されたフランク・プールが冷凍の仮死状態で回収されて蘇生させられるなど、ちょっとどうかと思う設定はあるものの(ボーマン船長も別の形で3001年にも「生きて」はいるのですが)、私としてはやはりSFの最高傑作と思います。ここに挙げている本の中でも最も楽しめた作品です。

  • Childhood's End | Arthur C. Clarke
    同じくA. C. クラークの代表作(邦題『地球幼年期の終わり』)。その後のSF映画や小説にも多大の影響を与えた作品で、重厚な内容で読み応えがある名作です。地球外生命体の介入による人類の進化がテーマというところは、Space Odyssey シリーズにも通じるところはあるかと思いますが、テイストは全く異なります。ちなみに藤子・F・不二夫のマンガのSF短編集に、この小説のタイトルをもじった「老年期の終わり」という作品がありますが、これも名作です。

  • Inherit the Stars | James P. Hogan
    40年以上前の古典SF(邦題『星を継ぐもの』)ですが、「月面調査隊が月で宇宙服を着た(生物学的には)“人間”の死体を発見したが、年代測定をしてみると5万年前のものであった。」との設定に惹かれ、以前から読んでみたいと思っていたものの、英語版は絶版で、Amazonでも法外な価格の中古(7-8千円程度)しか出ていなかったのであきらめていたものです。時々Amazon でチェックしていたら、たまたま送料込みで千円ちょっとの中古ペーパーバックが出品されていたので、即購入して読みました。内容的にはいわゆる一般的SF小説の要素は少なく、全編が「なぜ月面に5万年前のヒトの死体があったのか」の謎解きです。その意味ではミステリー感覚にも近いかもしれません。種明かしは荒唐無稽と言えば荒唐無稽ではありますが、これだけのスケールの壮大なストーリーはやはり傑作・名作と言われるに値するかと思います。

  • Stories of Your Life and Others | Ted Chiang
    しばらく前の映画「邦題“メッセージ”:原題“Arrival”」の原作“Story of Your Life”を含む8編の短編集。映画は見損ねたのですが(読後にWOWOWで見ました)、テーマが「言語学者によるエイリアンの言語の解読」ということで興味を持ち、読んでみました。作者は中国系アメリカ人ですが、SFに限らず、自分が知るこれまでの小説の中の想像の世界の範疇を大きく超えた想像力には驚かされます。ただちょっと難解で、誰にでもおすすめできるものではありません。地球上のあらゆる人種のコミュニケーションとは全くかけ離れた構造の「言語」や「時間感覚」(を表現する想像力)に興味がある方はチャレンジしてみる価値はあるかと思います。映画はあまりヒットはしなかったかと思いますが、確かにエイリアンが地球に来た理由や人類に与えたものの意味や未来の予見等、ちょっと説得性に欠けて「よくわからん!」とフラストレーションを感じた人が多かったのではないかと思います。

  • Twenty Thousand Leagues Under the Sea | Jules Verne(無料電子版)
    子供の頃に読んだ?かどうかもう覚えていませんが、「SFの父」とも呼ばれるフランスの作家ジュール・ヴェルヌの『海底2万マイル』の原作(の英訳)。単なる子供向けの波乱万丈の冒険小説というわけではなく、ノーチラス号の謎に満ちたネモ船長の魅力や海底描写など、今でも十分楽しめる内容です。

  • A Journey to the Center of the Earth | Jules G. Verne(無料電子版)
    同じくジュール・ヴェルヌの冒険小説(邦題『地底旅行』)。10数年前に映画にもなったように、これも海底2万マイルと同様今でも十分通用する内容です。どちらもディズニー・シーのアトラクションになっていますが、両方読んでから乗ると一層楽しめるかも?

  • The War of the Worlds | H. G. Wells(無料電子版)
    ジュール・ヴェルヌと並んでSFの父と呼ばれるイギリス人作家H. G.ウェルズの代表作の一つ。これもトム・クルーズ主演で映画になっていますが、100年以上前の作品とは思えない完成度で、今読んでも十分楽しめます。

  • The Time Machine | H. G. Wells(無料電子版)
    同じくH. G.ウェルズの代表作。80万年後の世界の描写は現代のSFに比べるとちょっと違和感はあるかもしれませんが、タイムトラベル物の古典中の古典として読みごたえはあります。

  • Through the Looking-Glass | Lewis Carroll(無料電子版)
    ご存知の『鏡の国のアリス』です。Alice's Adventures in Wonderland(『不思議の国のアリス』:ディズニーの映画のタイトルはAlice in Wonderlandですが)とともに、世界中で長年愛されてきた作品だけあって、他のファンタジーにはない独特の魅力に溢れた永遠の名作ですね。

  • The Martian Chronicles | Ray Bradbury
    古典SFと言えば必ず名前が挙げられるレイ・ブラッドベリの代表作(邦題:『火星年代記』)です。火星人との対立や火星に移住した地球人の生き様を描いた作品ですが、舞台設定が火星だというだけで、いわゆるSF的要素はあまり感じられません。作者は「詩的で美しい文体のSFの抒情詩人」と言われているようですが、好みは分かれるところかと思います。私には文明批判臭がちょっと鼻につき、正直あまり楽しめる作品ではありませんでした。

  • Fahrenheit 451 | Ray Bradbury
    同じくブラッドベリ―の代表作で、古典SFの名作の一つに数えられている小説(邦題『華氏451度』)です。が、私の生まれる前に書かれた小説とは言え、未来社会での「焚書」(華氏451度は紙の引火温度とのこと)がテーマというのはどうにも違和感をぬぐえず、結局私としては最後まで面白みを見出せませんでした。

 

<ミステリー>

  • And Then There Were None | Agatha Christie
    英語の多読と言えば必ず名前の挙がるご存知アガサ・クリスティーの代表作(邦題:『そして誰もいなくなった』)の一つ。もともと日本語でもミステリーはあまり好みのジャンルではないので(横溝正史だけは高校生の時にはまりましたが)、翻訳でもクリスティー作品は何も読んでいませんでしたが、一つは読んでおこうかと思って読みました。クリスティの最高傑作とも言われるだけあって良く練られたストーリーではありますが、やっぱり私としてはどうしても「トリックのためのトリック」感を感じてしまい、現実感が感じられず(オチも正直「なんじゃそれは?!!」で)いまいちのめり込めませんでした。

  • Murder on the Orient Express | Agatha Christie
    しばらく前に実家に帰った際に、父親から「邪魔だから持って帰れ」と渡された、私が実家に残していた学生時代のガラクタが放り込まれた段ボールの中から、学生時代に意気込んでチャレンジして十数ページで挫折したペーパーバック(1977年版)が出てきました。懐かしくて数十年ぶりに読んでみました。今は辞書もなく特に苦労なく読めますが、改めて読んでみると、学生時代の自分にはどこがどう無理だったのか(ボキャブラリーの問題は手間でも辞書さえ引けば解決しますが、要は学校英語の範囲を超えた英語の言い回しのパターンを知らないがために意味をとれなかった)がわかります。Back to the Future2のビフのように、デロリアンに乗って当時の自分に会ってアドバイスしてあげたくなります。が、突然読めるようになる虎の巻があるわけでもなく、「数十年後には読めるようになっているから、あきらめずに頑張れ!」などと言っても、「アホか?このオヤジ」とでも言われるのがオチでしょうね。ジョニー・デップが被害者役の2017年版を含め、何度も映画化されていますし、ストーリーは今更言うまでもないでしょうが、それだけミステリー好きを惹きつける魅力に溢れている名作ということでしょう。私としては感想はやはり“And Then There Were None”同様でしたが。

 

【自伝・ノンフィクション・エッセイ他】

  • My Life | Bill Clinton
    上下2巻の分厚い本ですが、クリントン大統領の生い立ちから人格形成の過程、ヒラリー夫人との出会い、大統領選挙...等々たっぷり読み応えのある一冊(二冊)です。あまり知られてはいないかもしれませんが、複雑な生い立ち(出生直前に事故死した実父はちょっと怪しい人物で、継父は家の中で拳銃をぶっ放すような酒乱。大統領になるまで会ったことのなかった異母兄弟がいる、等)も赤裸々に綴られています。黒人やヒスパニック系等マイノリティに絶大な人気を集めるようになったのも、幼いころの環境の故かとなんとなく納得できます。しかしいかんせん私はアメリカの政治背景には疎いので、アーカンソー州知事時代あたりからだんだん「??」が増えていき、大統領選を狙うようになった頃には政治の話ばかりで(当然ですが)わけが分からなくなって字面を追うのも苦痛になり、途中で挫折しました。前半だけでも十分読んだ価値はありましたが。

  • Surely You're Joking, Mr. Feynman! | Richard P. Feynman
    理系の人は学生時代に和訳(邦題『ご冗談でしょう、ファインマンさん』)で読んだ方もいるかと思います。工学系の友人が読んでいたのを覚えています。私は物理は大の苦手だったので、手に取ることもなく敬遠していましたが。しかし実際は、ノーベル物理学賞受賞学者の著者の破天荒なエピソードが連続炸裂するエッセイ集です。偉い先生の説教臭い成功譚(目標を定めてあきらめずに夢を追い求めて努力すれば必ずかなう...etc.)などとは無縁で、難解な物理学の話などはほとんど出て来ないので、理系文系関係なく十分楽しめるかと思います。

  • Steve Jobs: The Man Who Thought Different | Karen Blumenthal
    ご存知Appleの創業者の一人スティーブ・ジョブズの生い立ちから死後までをわかりやすくまとめた伝記です(メルカリのタダポイント500円分で600円を値切って買ったもの)。私は全くApple党ではなく、Apple製品は一つも持ったことはありませんが、Appleの発展の歴史はほぼ私の帝人での年月と重なることもあり、大変興味深く読みました。良く言われるスティーブ・ジョブズの特異なパーソナリティーの形成過程もさることながら、「新たなindustryの誕生」とまで言われたPC(及びその後のiPodやiPhoneなどの革新的製品)の誕生と発展がどのようになされていったのかが良く整理されてわかりやすく書かれています。文学的表現などはなく、英語的にも平易な語り口で読みやすく、分量もそれほど多くないので、英語本に慣れていない人にもお勧めの一冊です。

  • Flags of Our Fathers | James Bradley
    有名な「硫黄島の山頂で星条旗が掲揚される瞬間の写真」に写っている兵士6人のひとりの息子による、問題の写真撮影の裏の真実とそれぞれの兵士のその後を追ったノンフィクション(邦題『父親たちの星条旗』)です。なぜこれを読もうと思ったのかはよく覚えていないのですが(紀伊国屋か丸善の洋書売り場で平積みになっていて目についたのだったか?)、あまり期待せず戦争モノが好きだ(映画でも日本の小説でも)というだけで選んだような気がします。しかし期待の低さに反して、とても面白かったです。戦争の欺瞞と(以前からちょっと違和感を感じていた)アメリカ人のヒロイズムの本質が理解できるかと思います。

  • Justice: What's the Right Thing to Do? | Michael J. Sandel
    しばらく前のベストセラー(邦題:『これからの「正義」の話をしよう』)です。日本でも話題になった本なので翻訳で読んだ方もいるかもしれませんが、ハーバード大学の人気講義をもとにまとめた本とのことです(本を買うまで邦題は『これから「正義」の話をしよう』だと思っていました...)。この手の本も読んでみようと思ったのですが、挙げられているケース(1人を犠牲にして5人を救うべきか否かというトロッコ問題や、台風などの災害時に生活必需品を法外な高値で売ることの是非)を読んで、ちょっと違和感(これは「正義」の話か??)を持ちました。結局私の違和感は日本語の「正義」のイメージ(悪を懲らしめる“正義の味方”の類)と英語の“justice”の意味のscopeのずれから来たものなのですが。そもそも「正義」は明治維新後に日本にない抽象概念を翻訳して取り入れた翻訳語の一つで、justiceを翻訳したものとのことなのですが、本書を読んでもわかるようにだいぶ語義のずれ(本書でいうjusticeは要は副題にもあるように「(良心等に基づく)正しいこと」なのかと思います)があるように思います。翻訳はタイトルからしてずれているとなると、中身も推して知るべし、かもしれません。それはともかく本書で扱っているいずれのケースも著者の結論としての見解は示されてはおらず、読者に委ねる形になっています。あまりピンと来ない議論もありますが、アメリカ人の思考のベースになっている価値観(日本人のそれとはちょっとズレがあるかと思いますが)がわかり、話のタネ(外国人との会話でも)にはなるかと思います。

 

【挫折本】

 読み始めてはみたものの、いまいち引き込まれず、だんだん読むのが苦痛になって放り出したもの。

  • Gone with the Wind | Margaret Mitchell
    言わずと知れた、映画「風とともに去りぬ」の原作。映画は見ていませんが、あれだけ「名作」との評価はあるからには原作も素晴らしい出来に違いないと思い、相当分厚いボリュームながらチャレンジしてみました。が、序盤から延々と主人公の「誰が誰を好きになって、誰と結婚する、しない」の少女漫画チックな葛藤?が続き、いつになったら次のドラマチックな展開に進むのか、と思って耐えて読んでいたら、十分の一くらい読み進んでもまだそのような状況が続いたので、さすがに諦めました。

  • The Hammer of God | Arthur C. Clarke
    C. クラーク本で他に何か目ぼしいものはないかと思って紀伊国屋で目にして買ってみたものの、盛り上がりに欠け、特に見るべきところもなく、正直駄作でした。

  • Moby-Dick; or, The Whale | Herman Melville(無料電子版)
    ご存知の『白鯨』です。翻訳は読んでいませんでしたが、世界十大小説の一つということで読んでみました。が、原語でも世間の評判通りやはり私も引き込まれるものはなく、エイハブ船長の登場前に挫折してしまいました。以下に挙げたものも、無料ダウンロードリストの中から、タイトルを知っていてあまり長編ではないものを選んで読んでみたものですが、白鯨同様読み進める意欲をかき立てられるものはなく、皆序盤早々で挫折しました。金を払っていたら、もう少し頑張ったかも(そのうち盛り上がるかも?と)しれませんが。

<その他の挫折本>

  • The Adventures of Huckleberry Finn | Mark Twain(無料電子版)
  • Treasure Island | Robert Louis Stevenson(無料電子版)
  • Gulliver's Travels | Jonathan Swift(無料電子版)
  • Around the World in 80 Days | Jules Verne(無料電子版)


 以前はAmazonや書店(丸善や紀伊國屋)で購入したものが多かったのですが、最近はまずメルカリで探すようにしています。値段は大体半額くらいで、多くの場合読んだ形跡もなく新品同様ですので。買って読まずに積んでおいて、そのうち邪魔になって売りに出す人が多いんでしょうかね。