NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

サングラスかけてますからね、

2009-08-29 | 休み
たぶんBS2かなんかのライブをきっかけに聴いた『Blue selection』というそれまでの曲をジャズアレンジしたライブ盤が初めての陽水さんでした。うすぼんやりとは知ってましたが、初めてちゃんと聴いた陽水さんは。


「LIFE 井上陽水~40年を語る」(NHK)


陽水さんの40年を陽水さん自身がチョイスした言葉とともに、陽水さんのインタビューを中心に過去のライブ映像などや関係者のインタビューなどを絡めて語ってゆく、という内容と中だるみということで第3夜で急遽インタビューからリリーさんとの対談形式を中心にするという形にしてしまう。陽水さんの「変な人」具合を浮かび上がらせる感じに。そういう”体”かもしれないけど。


陽水さんの独特の歌い方がジョン・レノンのそれからの影響っぽかったり、散文的でどこと無く意味の通じない、一貫してそうでしていない不思議で連想的な歌詞の雛形がボブ・ディランだったとか。歌い方もっぽい。しかもサングラスも?ディランは「Like a rolling stone」とか「Blow in the wind」くらいしか知らなかったぼくでも”っぽく”て面白く。みうら先生も太鼓判の”っぽさ”。

そこに麻雀仲間な無頼な人たちの影響が、特に言及された阿佐田哲也の影響が加わっていって、虚と実を明確にしないことの”素敵さ”を意識してそこを留保してるみたいなことを。だから「少年時代」の冒頭「風アザミ」という存在しない単語をして「別になんか、辞書にない言葉を歌詞に使ったら禁固10日ですとか、そういう法律もないわけですから(笑)」みたいなことを言ってしまえる。


「きちんとした進み方に反発を感じてたと言うか、何かつまらないと言うか、何かつまらないと言うかね、変わった方が良いなぁと当時思ってたよね」


そして本来からの気性なのかとにかく強烈なまでの反普通、アンチ普通の精神があって。対談に1時間以上遅刻したリリーさんを逆に評価したり、歯学部受験のための浪人も、予備校にも行かず前日くらいは勉強しようと思ったけれど面白いテレビがあって…だからこそのアンドレカンドレ名義のデビューで、フォークすら選ばなかったのやも知れません。まぁ、どこまで本気かは分からないですが。

その割には”変な人”というパブリックイメージについてはそんなに素直に受け入れがたそうなことを言ってみたり。ちょっとした日常会話なんかにも意味性を見出そうとする周囲の人に辟易しているようで、でもどこか周囲の井上陽水像をかろやかにもて遊ぶのを楽しんでいるようにも聞こえました。若い人にメールをする時に絵文字を使うというエピソードも素直に絵文字ということでも無いような。



「決められたリズム」―井上陽水(youtube)




こんな変で素敵な歌を書くこんな変なおじさんがニッチじゃなくてマスで売ってるのがすごい。アルバムアーティストではあるけれど。社会が陽水さんを切り捨てなかったからこそ、ぼくみたいな世代も昔の曲も聴く事ができるし、こんな素敵で無駄に長い番組を観ることができたんだと思います。