群馬県神流町。
関越道本庄児玉ICからクルマで60分。
神流町という標高350mの昭和レトロな町に着く。
そこからほとんど地図にも載っていない道を10キロ走るとその道の行き止まり、持倉集落に着く。
つまりその道は持倉集落に行くためだけの道なのだ。
神流川の支流の最奥。平家の落人伝説もささやかれる集落。
人口10名7世帯。2016年の集計だ。だから今はもっと減っているかもしれない。
全員70歳以上。70歳代が一人。あとは後期高齢者。
林業が基本で、こんにゃく、蕎麦、養蜂などを営んでいる。
見渡す限りの山々の絶景、その中に佇む7世帯。
あと何年か先、集落を閉じることが検討されるだろう。
この天空の限界集落が年に一度、1000人のランナーの熱気に包まれる。
神流マウンテンラン&ウオーク。
鏑木氏がプロデュースするこのトレイルレースは来月で第10回を迎える。
日本で最も過疎の進む町を復興すべく始まった。
知らぬ選手と一般家庭に民泊させて頂き、とても温かいおもてなしを受ける。
前夜祭では町の女性たちの腕によりをかけた手料理が振る舞われる。
日本で数あるトレイルレースの中で最も温かいレースと言われる。
極めつけは、持倉集落がエイドステーションになることだ。
集落の人達が夜通し打った蕎麦が選手に振る舞われる。
疲れ果てた選手はここで一気に復活し、最後の神丸尾根に飛び出していく。
10人しかいない限界集落が選手の熱気で一日中冷めやらない。
オレはレースの前にどうしてもこの集落へ行ってみたくなった。
そこを訪れたら、きっとレース当日、その集落へ再訪することがとても楽しみになり、
急登も九十九折の激下りも頑張れると思ったのだ。
そのキッカケをその集落がくれるのだろうと確信したのだ。
そしてレース2週間前の10/28 行ってきた。
神流町にクルマを置き、フィニッシュ地点からコースを逆に走る。
少々のダウンを繰り返し10キロ登る。
柔らかい土のトレイルですでに紅葉が始まっているので落葉で敷き詰められている。
登りながら後ろを振り返る。帰りはこの登りをダウンヒルできる。
トレイルから舗装道に出た。
これから本格的な紅葉になっていく山々が目の前に広がる。
絶景だ。本当に素晴らしい。
その先にポツンと現れた。数件の集落。山の斜面に佇む天空の里。
持倉集落が見えた。
秋晴れ、絶景、時折風が鳴らす木の葉の音、鳥のさえずり。
なにもない。全くなにもない。
家からは人の声も聞こえない。窓を開けた家からかすかにラジオの音がした。
あまりにも山の景色に溶け込んでいて、そして世間から忘れられた集落。
きっと忘れ得ない集落になるんだろうな。
そう思いながら帰路トレイルに入る。
噂通りだ。極上のトレイルとはここのことだ。
辛さが吹っ飛ぶ。走りながら笑える。
トレイル走っててよかった、と思えるトレイル。
素晴らしいの一言。
神流、サイコーである。レース当日はもっとサイコーになるだろう。
オレはいつもどおり、全力を尽くすことだ!