一昨年、2016年の東京マラソンをA社のセミレーサー用シューズで走った。
その後、Onを購入した。
縫製が悪くレース中に気になっていて、信頼を預けることができなかったのだ。
Onはデザインもさながら、履いた途端、一目惚れならぬ、一足惚れとなった。
東京マラソンが終わってからだから、まだ2年しか経っていない。
で、Onシューズが8足になった。
最初に買ったクラウドサーファーはさすがにもうラン不可能。
ボロボロになった。
すべてそれなりに履き込んでそれなりにすり減っている。
それなりに走ってきたのだ。
最近はフルマラソンでも、トレイルレースでもOnシューズをよく見かけるようになった。
何故なのか、Onを履いている人を見かけると話しかけてしまう。スタートでもレース中でも。
電車の中で知らない人がOnを履いていて目が合うと、お互いニヤッとする。
男女関係なしだ。
さてさて。
このシューズは製品の完成度はもちろん、ある魔法を持っている。
ランニングは楽しいことではあるのだけれど、
ひとたびスタートホーンが鳴ると、あとは延々孤独な自己との闘いである。
ウルトラやトレイルは強靭な精神力が試されるが、
オレのような俄(にわか)ランナーが走っているときの精神状態など、安メッキの装飾品レベルに過ぎない。
ウルトラ100キロでは、100回も心が折れる。
トレイル急登ではエントリーしたことを心から悔いる。
稜線の先はまったく見えないし、辿り着いたエイドですら痛くて辛くて挫けそうになる。
それでもだ。
もっともっと前へ前へ進めと背中を押すモノ、
山奥で孤独になってもただ一つ頼れるモノ、
願わくば心を許せるモノ、これはランナーにとってシューズ以外にはない。
シューズこそは全て、なのである。
なんとかなる!
そう思うのは足元の泥だらけのクラウドベンチャーを見たときなのだ。
Onのマジックはここぞというときに力を与えてくれる。
それがOnの魔法だ。
でも、魔法って思える根拠はどこから来るのだろう? 走る度に思う。
シューズに求めるもの。
それはわずか1ミリの縫製のズレも許されないことだ。
初心者、エキスパート関係なしだ。
初心者でも累積標高3000mを制限時間内に走ってこなくてはならないのだ。
だから誰しもが絶対的な信頼を得れるシューズを求める。それに答えるのはOnと言い切れる。
だから履いたらわかる。そういうことだ。でもそれだけではい。
グリップ力、反発力、ネジレ、復元力、シューズ自体の性能はいろいろある。
でも、泥の登りや、ガレの下りでは性能自体ははっきり言って良くわからなくなる。
「糠に釘」の連続になる場合があるからだ。
そう思うと絶対信頼を置けるのは、縫製だけではない。
なんなんだろう、と思ってしまうわけだ。
そして2年の歳月を履き続け走り続け、SNSでOnジャパンのメンバーの方々の熱い思いを知ることになる。
やがて、そのフィット性、走行性にメーカーの自信や熱意や誇りが加算されていることを「足」を通し心が感じてくるようになる。
製品には、工程現場の確かさだけではなく、経営者、営業、企画、生産管理、全てのプロセスでの確かさが必要とオレは説く。
なぜかというと、オレは工業製品、産業製品の品質保証業務をしているからだ。
品証のプロだ。
そのオレがはっきりと気付かされた。
人が命を預けるもの。人生でかけがいのないものと信じるもの。
それには全てのプロセスに関わる人の「愛」が必要なのだと。
ちょっと歯が浮きそうなセリフだけどね。
その思いや考えが不動のものになった。それは昨日だ。2018/2/19。
Onスイス本社からCo-FounderのOlivier Bernhard氏が来日された。
東京マラソンEXPOのためだ。
東京マラソンは世界6大大会の一つ。
ここでの成功、成果はメーカーの次期戦略にもなろう。
成田についたオリヴィエ氏を待つのは、夜の横浜山下公園でのOnユーザーとのランセッション。
いくらデュアスロンで世界タイトルを3回獲得して、トライアスロンを何度も優勝したとしても、
多忙極める会社のトップが、しかも時差ボケもあるだろうに、走るって、、、、
もちろん参加した。
企画していただいた駒田氏に挨拶し、そしてオリヴィエ氏にはこう伝えた。
「On brought the fun of running to me, so I can keep running.」
オリヴィエ氏は反則的にかっこよすぎる。その笑顔で固い握手をしてくれた。
セッションが始まる。
まあ、僕はちょっと走るのは速いと思うし、シューズ作りも好きだからね、
みんな履いてみてよ。で、一緒に走ろうよ、みたいな感じなのである。
もはやメーカー対ユーザーではなく、それこそ#OnFriends的な関係が公平にある。
(左端のオレ。ラン亡霊っす。)
シューズには作り手や履き手の思いがあり、こういうランセッションがあり、
そしてオレは12日後にはフルマラソンを走り、2ヶ月後にはウルトラマソンを走る。
そのとき、フルのエイドで足元を見たとき、ウルトラのエイドで倒れ込んで足を擦るとき、
このランセッションを思い出すのだろう。
一人だけど独りではないとね。
履けばわかるというのがOnの魅力であるが、
一人のユーザーとしては、それを事細かく伝えるとしたらこういうことなのだ。
履けばOnシューズの魔法がわかる。
その魔法はシューズに携わる人々の愛情そのものなのである。
#OnFriends