『人間は重力をコントロールできるようになると空を飛べる』
中学の理科の先生の言葉は強く残っている。
みんなから呼び捨てされたり、腐ったトマトを投げつけられたり、
とてもとても弱々しい感じの40くらいの独身の先生だった。
学校の帰りにコーヒーショップで豆を買って帰る先生。
コーヒーが好きだったのだろう、でもいつも頼りない悲しい背中をしていた。
その先生はたまにオレの好奇心を刺激した。
何故かその先生の弱々しいという強い印象のせいで、
オレは重力というものにいつも感心を抱いていた。
地球は、人間や象や家や車や、風のないときのウインドサーフィンや、
ましてや海の水までしっかり重力で地球自身の表面に留まらせている。
しかし、ある程度のものなら片手で簡単に持ち上げることができる。
つまり重力は『意に反して弱いものだ」という理由から関心があったのだ。
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重力というけど、正確には重力加速度だ。
世の中は重力加速度に支配されている。
1G=9.80665m/s2
アインシュタインの相対性理論が導いた重力場の方程式で、
『大質量の物体は周囲の時空を歪ませる。すなわち、重力の正体は時空の歪みである』
と結論付けた。惑星の自転で生じる向心力ではない。
ここで、星のような物質またはエネルギーを右辺に代入すれば、
左辺にその星の周りの時空が、どういう風に曲がっているかの曲率が算出される。
そこからいろいろ割愛して、宇宙の話は、もとを辿れば素粒子の話になってくる。
分子⇒原子⇒原子核⇒素粒子だ。
この素粒子は玉ではなく、紐だ、というのが紐理論である。
そこからもっと進んだのがM理論である。
(うる覚えだけど、そこで11次元が証明できたはずだ。空間とは3次元ではなく11次元)
話は宇宙の誕生にさかのぼる。
宇宙が誕生したのは137億年前である。
ビッグバンだ。バンッ!!
現在の科学では、ビッグバンが起こってから10のマイナス35乗秒まで遡ることができた。
でも、爆発ジャストは解明できない。
なぜだろう?
それはビッグバン以前の状態がわからないからだ。
話は戻り、M理論。
いろんな物理方程式や推測の結果、宇宙物理のベースは膜だということがわかった。
宇宙は膜からできているといってもいい。(たぶん推測には変わりないだろうけど)
要はウネウネ振動している膜と膜の一部が触れ合った瞬間、
それがビッグバンということだ。
つまりありとあらゆる場所で宇宙は誕生して、そして死滅していく。
岩浜に打ち上げられては消えていく泡のようなものだ。はかねーよな。
(はかねーのは、人生だけじゃなく宇宙そのものだったのだ)
M理論の世界では、この世は11次元である。
この世界は3次元世界のあらゆるポイントから一兆分の1m離れたところに存在する。
そういうことが計算式で解き明かされるとはなんてファンタスティックなことか。
でも我々は3次元に住んでいるので距離という観念しか持てない。
しかし、実際に時空の歪みが存在し、
平行宇宙を行き来できればそれが時空旅行であり、
宇宙戦艦ヤマトのワープである。
空を飛ぶことはとるに足らないことになるだろう。
ソクラテスが言った。
『人は知らないことを知ってはいけない』
どうだろう。
宇宙が解明されると、なぜ生きているかわからなくなるんだろうな。
目の前にコーヒーカップがあるけど、なぜ机の上に留まっているか不思議になってきた。
オレの体は宇宙の素粒子で重力加速度の方程式に従って、
ちゃんと出来上がってるはずなのに、なぜ間違いを犯すのだろうか?
人間も同じく宇宙は不安定だからか?
この世は不確か。不確かさはときどきオレを混乱させる。
エイメン。