第3ウエーブの後方からゆっくりスタート。
アキレス腱の調子がずっと悪くテーピング貼りまくり。
痛くならないようにセーブしながら進む。 目標は完走。
タイムは願わくば8時間。
まずスタート1キロ地点で事件発生。
蜂の大群に遭遇。
前の選手が足止めを食らい、後続が詰まって大渋滞。
多くの選手は、自分も含めて、意を決して走って突破する。
運悪く頭や腕、足を刺された選手が、巣から離れた路上で座り込み、
難を逃れた選手がポイズンリムーバーで対処する。
自分は、首を刺された女子を介護した。
あの蜂はスズメではなかった。アシナガバチだったか。
とにかく気温が高く、岩岳の登りで汗が噴出。
まだ8時なのにこの暑さ。正午には一体どのくらい暑くなるんだろう。。。
ロードパートやゲレンデパートは木陰がないので直射日光が容赦なく降り注ぐ。
水を飲んでも飲んでも足りない。
ジェルだけ摂取する。固形物はあるけど全く食べたくない。
脚がこまめに痙攣する。
熱中症の初期症状なのか、でもとりあえず前に進めているので足を止めなかった。
途中、標識のわかりづらい分岐があり、10人ほどで集団ロスト。
これで気持ち的にダウン。10分近くロスしたかも。
これで完全フラットなロードでも歩く始末。もう足が前に出ない。
松川沿いを八方に向かって進む。
目の前に八方がそびえ立つ。あの山を登って降りる。標高差400m。
1時間では無理だ。最低1時間半欲しい。まだ長い長い道のりである。
途中まで抜きつ抜かれつの人たちの姿はもう見えない。
遥か前方か、遥か後方である。
40キロ地点になると前後に人の気配はなくなる。
そういえば速い人たちもいたな。
なぜオレの後ろにいるんだろう??いい走りしてたのにな。
飛ばし過ぎなのかな?そのスピードじゃ続かんだろ。
スピードの上下は心の波を反映す。
平常心で心をフラットにするのが経験や年の功なのかな。
オレにできるのだとすれば、それはトレイルのときだけだ。
悲しいかな日常生活では一切できない。
自己表現する唯一の方法がトレイルランニングだとすれば、否定材料は微塵もない。
全行程の90%以上はつらく、それなのに挑むのは、
山頂からの景色と、数分、数十分だけど永遠に続くダウンヒルの爽快さがあるから。
スタート前、それまでの生活や、大袈裟に言えばスタートのときまでの人生を、
10カウントとともにリセットする。
トレイルのスタートは都度都度人生リセットなのである。
強い気持ちが発揮できるか執着心を持ち続けることができるかの検証作業なのである。
なぜレースに何回も出るのか、それはいつも満足してないからだ。
50キロ走っても100キロ走っても、ゴールではまだ立ってられるじゃないか。
だから100マイルに挑んでみるのだ。
そんなことを考えながら遠くの山々を見るのだ。
北アルプスの山々は高過ぎて自分にはまるで及ばない。
でも、1歩前へ出れば、1歩ゴールに近づく。
ランニングとは地道な1歩1歩の繰り返し。
5万歩は大変だ。でも1歩ならできる。そして2歩、3歩。
あとは上半身で押せ。いや、心で押せ。気持ちだけは半歩前へ。
こうやって、42キロ地点チェックポイント通過、13:20。
あとで知ったのだが、制限時刻が14時だったらしい。
これで半分の選手が足きりになった。
あまりにも厳しい。
これだと写真を撮ったりとか、エイドでしっかり休息するとか無理。
28キロのミドルの部が世界選手権向けのポイントレースなので厳しくするのは納得できるが、
50キロロングを同じ扱いにしてはいけないと思う。
人気のある白馬国際の次年エントリーが減ってしまうのは容易に想像できる。
このあとに400mアップして一気に下る。
関門を意識しすぎて、そのための脚を残せなくなる。
ラストの八方パノラマエイド。
そこから、ミドル28キロの後方の選手が兎平を下ってくるのが見える。
スタッフが時間切れを通告している。
「記録にはなりませんがゴールまでがんばりましょう!」
通告されるとなあ、、、がんばれるのかなあ。。。
兎平、通称ピョンピョン平。
その上は黒菱ゲレンデ。
日本のスキー場でも有数の急斜面。
そのバーンに上から下をのぞき込むと足がすくむ。
それほどの急斜面。初心者は立ち入ってはならぬ。
ここを直登してまっすぐ降りてくる。
悲鳴上げている選手もいるでしょう。
ほとんどバーチカルレース。
すげーコース取りだ。
このミドルの選手たちをなんとかかわしながら下りる。
あともう少し。
最後は何故か走れてゴール。
8時間5分。
2018年の逆コース(今回よりきつい)のときより30分遅かった。
2018年の逆コース(今回よりきつい)のときより30分遅かった。
走力が落ちているんだろうか。。
悔しいかな歳は重ねていく、衰えは現実。
今回、なんとか完走できたのは家で待つラッキーのためだ。
早く帰れるように走った。そしてラッキーの最期に間に合った。
完走まで導いてくれて、レース翌日、オレの腕の中で息を引き取った。
さて、次は松代ラウンドトレイルでしっかりとした走りをする。
ラッキーは信州の空から観戦してくれるだろう。
一緒にフィニッシュテープを切ろう!!!
ナイスラン!ナイスワン!!