富士山トレイル。
富士吉田 馬返しからアプローチ。
通常は5合目の駐車場から登るのだが、そこはトレイルランナー、5合目までも走ろう!
(スタート。猿は富士山の遣い。富士山は一夜にしてできた。その年が庚申(かのえさる)だったので。)
当日はとても天気良く、かつ下界は35度の酷暑。
乾いた冷気を満喫しに山頂を目指した。
5合目2300mまでは森林トレイル。
(馬返しから、875m登ってきた。あと1471m)
いつもの山とは明らかに空気の質が違う。はっきりわかる。
樹木の香りや、沢を通る冷風、、、超森林浴。 でもこれは山であればどこでも感じる。
気が身体に染み入るのだ。 ここは霊峰富士。霊気なんだろうな。そう思うことにする。
身体は動くし、頭がスッキリする。 血液も浄化されているような感じになる。
5合目からは森林限界。 登山者が増えてくる。
ほとんど雲がない。パーフェクトトレイル。
逸る気持ちを抑え、スローペースで進む。急ぐと気圧にやられる。
なんたって山頂は下界の約半分の気圧。
足を進めながら、腿を上げ、ときにはロックを掴みよじ登る。
富士山の壮大なスロープの中では、自分はアリだ。
上を見ると山頂はまだまだ先で、後ろを振り返ると悠々としたアルプス山脈が望める。
下界にはうっすら霧がかかり、河口湖は水彩画のように佇む。
日本人が愛してやまない山。
あの形は、山肌に張り付いているとわからないけど、
そこから見る風景も素晴らしい。だから日本人は富士山を愛しているのだ。
トレイルランナー、登山者、ハイカーに混じって、白装束の山岳仏教の行者も登る。
なにか唱えながら登っている。 あとで調べたら「ロッコンショウジョウ」と唱えていたようだ。
これは、六根清浄、つまり、目、鼻、耳、舌、身、意の6つの知覚から生じるさまざまな欲望を捨て、清らかになって富士登拝しましょうという意味だそうだ。
この、ロッコンショウジョウを唱えて登ると息も苦しくなり、滑舌悪くなる。
これが、ドッコイショ になったのだ。 本当の話だ。
重いものを背負うとき言う、ドッコイショは、富士登山の行者の唱えということだ。
ちなみに、その日の富士登山は海の日で、オレの地元の茅ケ崎では浜降り祭。
「ドッコイ、ドッコイ」が掛け声。 湘南の海は富士山つながりなのである。
ドッコイショ、、、ロッコンショウジョウと言ってるつもりがドッコイショ。
本当にそうなるね。 息がゼイゼイするよ。 空気が薄い。
コメカミに心臓があるみたいにカンカン脈打つ。
顔色が悪くなり、クチビルが白くなる。
途中途中で酸素缶の助けが必要だ。
たかが3000ちょいでこうだ。 だからエベレストはすごすぎる。
Salomonのキリアンは単独、無酸素、ロープ無しでエベレストを26時間でトレイルした。
ベースキャンプ5000から山頂8848。 しかも1週間で2回も。
山頂に着く。
浅間神社の奥宮がある。本社は富士吉田の浅間神社。
富士山は日本人みんなの山、、、、ではない。
この山頂部分、正確には8合5勺から上、ここは私有地なのだ。
登記上、浅間神社のものだ。
さらに浅間神社の前の持ち主は、武田信玄である。
武田信玄が浅間神社に寄贈したのだ。
なんてヒストリカルな場所なんだろう!!
もっと興味深い話があるよ。日本一の霊峰と言われる所以はこうだ。
スピリチュアル、ファンタジーな場所の所以ね。
富士山という名前は実は近代に入ってからで、もともとは「不死山」と言われた。
かぐや姫が月に帰る前に、帝に不老不死の薬を渡したことから始まる。
彼女は月に帰ってしまった。 帝には、その薬の必要はもうない。
深く深く悲しんだ。そして日本一高い山、つまり最も月に近いところでその薬を焼いたのだ。
それで不死山という名前がついた。
きっと、本当の話なのだ。オレはそう信じるね。
このとき帝は、薬を焼くため多くの使者を山へ送った。
「士(つわもの)らを大勢連れて山へ登った」ことから、「士に富む山」、
不死山はやがて、「富士山」になったという。
へええええええ!!!!\(^o^)/
お鉢を回る。1周3キロ。険しい峰が火口回りに八つある。
最高峰が剣ヶ峰 3776m。
巨大な火口はまさに神が造形したと言わんばかりのスペクタブル感。
ここからマグマが噴き出たら、、、と思うとゾッとする。
(火口撮影中。完全に腰引けてビビっとります。高所恐怖症なんで*´ω`*)
眼下にある富士五湖はもともと一つの湖で、富士山噴火により、5湖に寸断されたのだ。
その証拠に5湖の水位はいかなる時も同じ。
(人はなぜ下界にいると思う?這い上がるためだよ)
お鉢を回ってダウンヒル開始。
今回はストックのお世話になる。下りが長いので支えにするのだ。
上体が回らないように腰から上をブロックするのにストックは有効。
オレはもともとスキーヤーだから、ストックワークはめっちゃ上手である。
トレイルランナーのストック講習会があったらトッププロに教えられるね。
で、ストックを使ってダウンヒルしていると、当然ながらスキーしたくなる。
スキーのイメージで走っているから。
ここに雪が付いていたら、、、そう思うのはオレだけではない。
多くのスキーヤーが魅了され、ここでダウンヒルした。
富士山で初めてスキーした人。 レルヒ中佐である。 走りながら思い出したよ。
プロスキー検定会の学科でスキーの歴史があったので覚えているんだ。
レルヒはオーストリアの軍人で、1910年に軍事視察のため日本を訪れた。
横浜沖から見えた富士山に衝撃を受け、スキーで頭がいっぱい、視察どころじゃなくなった。
こうやってレルヒさんが日本でスキーをしてから100年以上たった。
レルヒさんは日本のスキーの父と言われ、オレがトレイルで走ったところかどうかわからないけど、
とにかく彼のシュプールの跡をオレはトレイルシューズとストックで全力で駆け下りたのだ。
オレのスキー原点がここでつながった。
レルヒ中佐が始め、オレが走ってピリオドを打つ。
別に意味らしい意味はないけど、ものごとには必ず時系列がありどこかで線引できる。
オレは一旦線引した。いつか何かの理由付けになる日が来る。
なぜかってそこは霊峰だからね。そう思うことはファンタスティック。
思えば本栖湖にこもりウインドサーフィンに明け暮れ、
富士五湖をめぐるウルトラマラソンを走り、そして頂きに立った。
ちゃんとUTMF(ウルトラ・トレイル・マウント・フジ)で168キロ走れよ!という神のご指示なのであろうか\(^o^)/
ここはまた登るべき山だ。
天空を目指す路は神が住む頂きに続く。
トップギアで走れる下りが延々に続く。
素晴らしい!!