グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

動く竹林[ちくりん]の謎。

2015-03-08 09:56:52 | Weblog
動く竹林[ちくりん]の謎。

山の問題の資料として、前回にひきつづき2005年11月の当
ブログ記事の再録4回目。よろしかったらご参考に。

 ↓

造林されたスギやヒノキの山の境界の目印として植えられているもの。
そのひとつとしてよく利用されているもの、それがです。地主が存
在する山の、山の境界を示すものとして、よく竹林が利用されていた
のです。

そして この竹林。移動させようと思えば、じつは移動させることも
できるのです。

スギやヒノキなどの木材価格が高騰していた時代、いわゆる拡大造林
がさかんにおこなわれていた時代には、すこしでも自分の山の面積を
増やそうとして境界であるこの竹林をうごかすことが往々として行わ
れたこともあったのです。

・・・面白いはなしですよね。

山の事情を何も知らない人が、[何せ境界ですから]けっこうな長さと
面積のある❝竹林を動かす❞とか❝動く竹林❞なんていうおはなしを
聞くと、たとえば お祈りや祈祷によって動かすとか、あるいは生き
ものである竹が勝手に動くとか、はたまた超能力者やUFOとか宇宙
人まででてきそうな、そん壮大な話にも思えたりする。

でも、そんな壮大な話ではありません。
竹林を動かすには、時間とそしてノコギリ1本さえあれば大丈夫。

やり方は簡単です。山にいくたびに、とくにタケノコが出る季節に、
こちら側の竹をノコなどで切ってゆく。それだけです。

すると当然のことながら、境界の向こう側の竹のほうの生育が盛ん
になっていく。

これを10年も繰り返すと、竹林は5メートルほどあちら側に移動し
うることになってしまいます。こう書くと「10年でその程度では、
たいしたことないじゃん。」・・なんて思われるかもしれません。
しかしこれに 長さが加わる。

長さが 10メートル いや100メートルではいかがでしょう。
ちなみに5メートル×10メートルでは、500平方メートルです
から、なんと151坪にもなるんですよ。けして馬鹿にできる面積
ではありません。

とくにこのやり方は、南の地方ほどその効果が大きくなります。

なにせ亜熱帯地方に近づくほど、植物の成長とくに竹の伸びはすさ
まじい。「こんなところに竹があったっけ」とおもってほおってお
くだけで、数年後には「こんなところに竹林があったっけ」なんて
勢いで竹は増殖してしまいますから。

ということで今回は、そんな竹の性質を利用した土地獲得戦略さえ
もあったという[スギやヒノキの価格がいまの数倍もした時代の]
山が宝を生む時代の昔ばなしのご紹介でした。


◎木材価格が低迷している現在、全国で放置された境界の竹
  の面積部分も拡大しています。スギやヒノキ、そしてわず
  かに残った貴重な広葉樹林の天然林も、いつのまにやら竹
  林になんて事態にも
なりかねません。

 51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染