グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

全日本草刈選手権の記念碑をみて思う。

2021-08-17 14:25:52 | Weblog
すでに10日以上も雨が降り続いている九州地方。宮崎県の海岸部地
方では幸いにして洪水被害に遭わなかったとはいったものの、水稲の
イネ刈り作業が滞った状態が続いています[田がしめっていると大型
収穫機械がつかえないうえに、たとえ刈れたとしてもコメの乾燥場の
数が足りなくなるため
]。そんな状況下において、のびつづいている
のは草。潤沢な水分を吸収しずんずんずんずんのびつづけています。
そんな草対策の方法で、たとえば畦カバーをつけたり、天気をみつつ
いっきに刈り払い機などで草対策をする方が農村の日常なのですが・
・・これをゲームみたいにして競い合ったという歴史 もあります。 
そんないわゆる「全日本草刈選手権」のお話は こちら。2019年
の再録ですが、よろしかったら。

 ↓

『全日本草刈選手権の記念碑をみて思う。』

1930年代の半ば、「全日本草刈選手権」という大会が開催されま
した。場所は、東京の荒川の土手。県予選を勝ち抜いた農学校の学生
4万人が、大会会場になった荒川土手で草刈のわざを競い合ったとい
います。もちろん草刈に使用された道具は、現在広く利用されている
「刈り払い機」などではなくカマ、手動の鎌が使用されました。

2019年現在・・・東京都北区志茂の赤水門には、その大会を記念
した高さ5Mの「草刈りの碑」があります。碑文に曰く、「草刈りは
日本農民の昔ながらの美風で、農民魂の訓練であり発露である」と。

よいですね、この言葉。

“農業は草との戦い”といわれ、実感もする、アジアモンスーン気候に
のなかでおこなわれている日本の農業の実態を表現[あらわし]し、
その農作業を体験することによって生まれてきた言葉だよなあってつ
よく思います。実際のところいまのこの夏の時期の草の伸び具合って
いったら、その生長が大げさではなく、目に見えるようさえかんじま
すものね[作業に関する回は ​こちら​]。

さらに、碑の文は続きます。いわく「農民魂は先ず草刈りから」。
この言葉も、またよくわかります。

現代の農家に所有されているような農業機械は1930年代の半ばに
は一般農家にはほとんどといってよいほどに普及ていないのが現状・
・・カマで刈り取る草は当時貴重な動力であった牛馬の食べ物であっ
たのですから。

      ←  碑文

そしてそれだけではありません。今回取り上げた土手の草はもとより
農村近くに存在するアゼ草や草原の草、山の下草など[もちろん落ち
葉なども]の身の回りの植物質の資材は、すべて貴重な土づくりのた
めの原料/資源とされました。そう、苦労して集められた植物質の資材
は、積み重ね・切り返しされ発酵させられて、作物の栽培に利用する
貴重な「たい肥」とされたからです。

      

そのような時代背景を知り理解したうえで、もういちど碑文をみると
なかなかに感慨ぶかいものがありますょ、荒川の「草刈りの碑」は。
ちなみにベジタリアンの方や、ベジタリアンからさらに一歩すすんだ
完全菜食主義者を意味するVegan(ヴィーガン)の方には、よくよく
事情を説明できれば、たとえば精進料理などと並んできっとおお受け
する日本観光の名所にもなりえるのではないかなと思うんですよね。

 ↑ 写真のバッチはおみやげでいただいた Vegan缶バッチ。

ということで今回は、全日本草刈選手権の記念碑のご紹介でした。


<emoji code="h044" /> とくに有機JAS法が制定されてからは、作物栽培に利用
  される たい肥 と きゅう肥 の区別などが、むしろ
  あいまいにされた感がある感じているのですが、最近では
  家畜ふん尿由来のたい肥を使わないという最新の有機栽培
  もでてきているようで、この点からみれば 1930年の
  この碑ができたころの時代が一周まわってトップに立った
  みたいなかんじがしたりして。おもしろいものですねー。


51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜 」​​​​​




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どれほど技術が進化しようと自然災害の影響はでる。

2021-08-13 12:57:40 | Weblog
停滞する秋雨前線の影響で、九州では断続的に激しい雨が降っています。
降り始めからの雨量は既に400mmを超えているところもあり、土砂災害
などの危険性が高まっていますということで、2016年分ですが、よ
ろしかったらご参考に[プラスして 普段は小さな川が氾濫し重油汚染や
太陽光施設を押しながした被害の回はこちら]。

 ↓

『どれほど技術が進化しようと自然災害の影響はでる/2016年分。』​​​

​どれほど営業努力しても避けがたいもの、そして技術がどれほど発達し
ようともその被害を回避できると断言しがたいもの、それが第一次産業
における自然災害です。

たとえば大雨。たとえば熱風。たとえば降ひょう。たとえば大雪。

ひとたびこれらの気象災害に、直面したとすれば、たとえば とある県
の農業の実際の1年間の被害額でいえば

■ 夏場の相次ぐ台風により水稲等に55億円
■ 前半の高温多雨などの異常気象により麦に30億円
■ 降雪で野菜に10億円
■ 降ひょう等で野菜などに40億円
 
などといった大きな被害が、ひとつの県で・それも一日で、そして1年
のあいだに複数回おこってしまうことも日常茶飯事なことなのです。

しかもこの被害・被害額というものは、困ったことに平均ではない。
害というものは、じつに不公平なもの
でもあります。典型的な身近な例
でいえば、たとえば 竜巻。

 Aさんのハウスは被害ゼロ・しかし隣のBさんのハウスは全壊

といった、 道1本へだてただけで被害額が大きなること なども、ま
まある。1年のうちに再度、いや3度もやられてしまうことさえある。
もうすこし大きな例でいえば、たとえば台風。偏西風や気圧の影響など
により随時刻々と進行方向が変わっていく台風による被害でいえば

 コース予報では影響を受けないといっていたのに甚大な被害

となってしまったケースなども日常茶飯事・よくあることであるのです。

そして、ちなみに 本年。 自然災害

6月中旬、100棟を超えるハウス倒壊をひきおこしたといわれている
群馬県伊勢崎地方を襲った突風被害には[昨年の雪害にあって再建した
ばかりであったハウスもあったとの話もあって
]胸が痛みました。
7月下旬、台風11号の進路にあたった和歌山県串本町付近の海岸では、
時代の寵児的にもてはやされているマグロ養殖のマグロにおおきな被害
がでていたたことが報道されました。
海外に目を転じてみれば、今年の4月前後のイタリアでは、これまでは
何の問題もなかったはずの樹齢数百年にも及ぶオリーブの巨木が[ピア
ス病の蔓延のため]つぎつぎと伐採されていく映像がメディアによって
伝えられもしました。

そう、自然災害はある日突然に、最新の設備であっても容赦なくおそい
くるものであり、しかもこれまで数百年のあいだの知識の蓄えがあった
としても、不運が重なると被害を免れることができないものでもあるの
です。

というわけで今回は、第一次産業においては技術がどれほど進化しよう
としても[いうまでもありませんが大規模化しても六次産業化しても]
多かれ少なかれ自然災害による想定外の影響を受けてしまうという お
はなしでした。


晴れ ただ しかし。
  被害というものは不公平なもの。 幸運なことも
  “災害がやってきたのにまったく被害がなかった” という例外
  も往々にして ある。災害に見舞われた地域にあっても幸運に
  恵まれる方々も またあり
なのです。
  そんなときには 農産物の値があがって 濡れ手に粟[もちろ
  ん他の作物であっても/笑
]状態に。
  これもまた災害・これもまた第一次産業。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜




ミノムシ、おそるべし。

2021-08-10 15:37:54 | Weblog
ミノムシ、おそるべし。
ミノムシ被害による葉っぱの消失状態に毎年毎年おちいってしまう
サツキ[前回分は​こちら​]。そこで 今年こそは喰わせてなるものか、
と昨年の秋から最低でも月に一度は 対ミノムシパトロール&駆除
を実施してきた成果か、最近ではムシの個体もめだってめっきりと
すくなくなり[せいぜい2匹程度の発見率↓]

       

これなら今年の夏にはきれいな姿の樹体を楽しめるな♪と、ことし
の梅雨の中ごろまではそう思っていたのもつかのま、梅雨が明ける
じぶんになったころから、あらためてサツキの葉ぶりをよくよく眺
めて見てみれば、左の写真↓の サツキの中央部が、うすくなって
きているのに気づかされたのです[左は全体、右は中央部のアップ]。


   

あれれ、おとついパトロールしたばかりでもあるのに腑に落ちない
話だなと思いつつ、あらためてよくよく枝葉を調べてみれば・・

なんだか小さいのが 

1本のサツキを調べただけでも、こんなにいっぱいいたーっ。。。。

        

ということで今回は、成虫だけに気をつけて駆除していたとしても
梅雨あけには、春に産み付けられた卵が孵化してたくさんのちっち
ゃい子どもミノムシにやられてしまう、ミノムシおそるべし・・と
いうおはなしでした。

いゃー、きづきませんでした。はて、どうしたものか・・・。


晴れ  ちなみに1枚目の写真にもうつっていたのですが、
    ちつちゃな個体は大きいミノ
   ムシにひっついてもいたのですねー。ツツジが
   やられてくやしいけれど、なんかかわいい。。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染




サツキが丸坊主にされるまえに。

2021-08-06 06:54:40 | Weblog
サツキが丸坊主にされるまえに。

梅雨から夏の時分には、ひと雨ごとにぐいぐい伸びる枝葉とか下草
とかに気をとられて、ついつい疎かになってしまうサツキの様子見。
葉がなくなって丸坊主にされた 昨年・一昨年の 苦い思いを胸に
今年はひまを見つけては駆除してきましたが、そんなに気をつけて
いたとしてもやっぱりいるのが、こちら ↓

   

ミノムシです。・・ということで2018年の被害を受けた時分の
回の再掲載です。 緑が伸びる季節に、サツキなどの樹の葉がいつ
のまにかなくなってしって などという被害に心当たりのある方に
はよろしかったらご参考に。

 ↓

『サツキを丸坊主にした犯人は/2018年6月分

じとじとと小雨が降りつづいた長い梅雨もおわって、ひと月あまり。

晴れ渡った青空のもとで、早朝の涼しいうちに事務所の剪定でもや
ろうか・・と、道具をもってお盆前の樹木の伸びを確認していたら

     

列に植えられているサツキに、葉がなくなって丸坊主になりかかっ
ている部分を発見[映像↑の左の映像が被害個所・右は健常部分]。

しまった油断した・・・とおもったときには大発生しているあの虫、
ミノガの仕業です。

     

ミノガとは もちろんミノムシ。

葉や枝を食べた残りくずで 幼虫の作る巣が、ワラ製の雨具である
蓑/ミノ[こなきじじいが着ているアレです]に 似ているために
ミノムシとよばれるようになったのであろうという、あの虫です。

 いったいどのくらいいればこんなに丸坊主にされるのだろう

と、ためしに被害個所の1本当たりの1センチ以上の大きさのムシ
を、ひとつふたつと枝から引き剥がしといったところ、約30匹く
らいのミノムシを捕獲しました。


    


農業用の害虫図鑑をひも解けば、

 発生は年1回・梅雨あけに新成虫が現れる

とされていますので、6月の中旬以降につぎつぎと孵化した幼虫が
2月弱あまりでおおきいものは3センチ強に育ったことになります。

そしてこのミノムシ。 特筆すべきは、その防除の厄介さです。

なんせ防水性に富んだミノを持つ。たとえ薬剤を散布したとしても
安全なミノのなかに逃げ込んしまうのでなかなか薬効がないのです。
さらには汎用性な食性も武器ということであり、75種の庭木や樹
木で発生し、ときにはヒマワリなども食害するというからビックリ
ですよね。

ということで、お庭の手入れが趣味のあなた。

梅雨明けてひと月のいま。お庭の一角に丸坊主になりかかっている
株はありませんか。もし存在/したとしたら、対処は いま。充分に
生長して被害が広範囲に広がらないいまのうちに、せっせとミノを
みつけて捕獲してまいりましょう。

ということで今回は、梅雨明けの爽やかなサツキの新緑を丸坊主に
した犯人は局所に大量発生するミノムシだった というお話でした。


晴れ  身の回りにある 手ごろなものでも、ミノを作るミノムシ。
  色とりどりの毛糸クズのなかに、蓑をはずしたミノムシを
  入れて毛糸のミノを作らせる・・なん遊びも以前は流行って
  ましたよね。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染