drawing jul2015
富岡の港。まるで日本の地名のようだ。もちろん発音は全然違うからしゃべるとそのままでは通じない。
台東の駅からバスで行った。午後遅くなっていて、緑島へ渡ってみたかったのだがその日の帰りの船便がなさそうだというのと、そもそもこの日は悪天候のため船便が欠航になっていた。港まで行って観るだけでもと思ってバスに乗ったのだ。宿は既に旧台東駅近くに取ってあった。
バスの運転手としばらく話した。僕が泊まるホテルへ行く帰りのルートなども教えてくれた。自分のバス会社ではないバスルートも紹介しつつ・・・。
帰りのバスでは細かいコインが手持ちになく、バスを降りるときになって運転手に、さてどうしようと話ていたら、「私が払ってあげます」と言ってくれた婦人がいた。同じバスに乗っていた乗客である。「両替のお金が大きいのしかないのですが」と言うと「あげます」と言った。それで持っている小銭を少し足りないけれど全部渡して、それで料金を支払った。礼を言ってバスを降りたけれど、言葉が何の不自由もなく簡単に通じたことに気付いた。英語でもなく台湾語でもなく日本語だった。その時はバスはもう走り出していた。どういう人だったのだろう・・・。ありがたかった。ガイドブックには、バスでは釣り銭がいらないように小銭の用意、あるいはあらかじめカードを買って、などと書いてあるのだがその通り・・・。
港には1時間あまりいたように思う。島へ渡れないことになったので諦めて急に楽になった気がした。空は相変わらず雲が厚くかかっていたし雨も降っていた。空いてしまった時間でゆっくり港を見て歩いた。船のある風景はとても気に入っている。乗るのはもっと好きだ。乗るときはたいてい潮風のあたる外のデッキにいることが多い。船室に座っているのがもったいない気がする。
港は、ときどき漁師か港に関係のある人などが車で来たりするくらいで静かだった。漁港の屋根のかかったところに食堂があった。腹が減っていることに気付き、何飯か分からないけれどとにかく食べることに。もちろん魚は豊富だ。なんと、刺身があった。安くて量も多い。わさび醤油も使えた。普段、日本人利用者も多いのだろうと思った。客は僕の他にひとり・・・、後は作業をする港関係の人たちがぽつぽつといるくらい。こんな天候の日に来る人はいないのだろう。