エリシュカ先生コンサートの翌日、急遽半日の自由時間ができたため、小樽に足を運ぶこととした。小樽を訪ねるのは26年ぶりである。まだ、独身時代、年末の休みを利用しての札幌へのスキー旅行。1日だけスキーを休み小樽へ出掛けたのだ。
あの日は物凄く吹雪いていて、どうやって運河や北一硝子まで到達したのかも憶えていない。従って、今回、小樽の駅舎に着いても、街に出ても、一切の懐かしさはなかった。いま目の前に広がる初夏の爽やかな風景と、あまりにも別世界だったからである。
小樽へ行く、と告げたら、札幌近郊に住む桐朋時代の同窓生が伊勢鮨しかない、と言う。
午前10時、小樽駅に降り立ってすぐ、店に電話を入れると11時半にテーブル席の予約が取れた。というわけで、店とは方角の違う運河には向かわず、にしん漁に賑わった昔の歴史的建物の数々を外から眺めつつ時間を潰す。
さて、寿司については、もう絶品というほかない。写真をご覧頂ければ、説明は不要であろう。
冷製ウニの茶碗蒸しも味わい深い。
今回は注文しなかったが、牡蠣の酒蒸しを食す隣テーブルの男二人が「こりゃあ、旨い」と悶絶していた。
お店にひとつだけ注文をつけるとしたらBGM。観光客向けガラス工芸店と同じ似非オルゴールの調べは、この芸術的な寿司には不似合い。
長嶋茂雄署名入りのパネルに感慨も一入。子どもの頃からアンチ巨人だったわたしも、長嶋茂雄だけは好きだった。この人に打たれて負けたなら仕方ない、と少年に思わせた長嶋茂雄の魅力とは何だっただろう。