一昨日(1月26日)、ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルハーモニーを聴く前の夕、聖ヤコビ教会に於けるオルガン・コンサート(無料)を聴いた。
ここに設置されているオルガンは、1689年から1693年にかけて、史上もっとも名高いオルガン製作者のひとり、アルプ・シュニトガーによって製作されたもの。設置当初から今日に至るまで、その構想に大きな変化はなく、古い配管や見込み管はほぼ原型のまま保存されているとは、まこと驚異的なことである。1700年以前に作られた現存するオルガンの中では最大のもので、保存されているバロック楽器の中では最も優れたものの1つとされている。
奏者は、聖ヤコビ教会のカントル、ゲルバルト・レフラー。バッハとブクステフーデという美しいプログラム(写真参照)。
いや、なんと言おうか。
冒頭の一節が鳴り出した途端、異世界へ連れ去られるような感覚。これまで聴いたどのオルガンとも違う音の実在感。
生々しく鮮烈であり、どこまでも高く、どこまでも遠く、そして、無限なる深さを湛えた響き。
30分がまるで10分ほどにしか感じられない至福のひとときであった。
次のオルガン・コンサートはわたしの帰国後となるので、ただ1度の機会となったが、1度でも聴けたことを天に感謝したい。
ところで、教会でのオルガンは、背後から人々に降り注ぐ。我々が祭壇に正対しているためである。帰宅して、オルガンのレコードを聴くときは、椅子の向きを180度置き替えて、背中から聴いてみようと思う。