朝比奈先生時代よりつづく、大阪フィル「第9シンフォニーの夕べ」は、幻想的な「蛍の光」にて幕を閉じる。
昨年、この光景を客席から眺めたときには、今年自分が指揮をしていることは決まっていなかっただけに、ステージ上にて感慨深いものがあった。
2月にスタートしたエリシュカ先生とのドヴォルザーク「スターバト・マーテル」への客演合唱指揮から、7月の正式就任。9月の大阪クラシックとマーラー3番、11月の「海道東征」と大阪フィル合唱団に限っても激動の一年であった。
御陰様で、大阪フィル合唱団は、いずれの公演に於いても各方面から高評価を頂いた。しかし、ボクに言わせると、この1年間は序章に過ぎない。これからが本当の勝負。声量、響きの質、声の色のバリエーション、フレーズ感やハーモニー感など、まだまだ、福島章恭流の発声も音楽性も身に付いたとは言えない状況なのである。
今後は、ボクの理想のコーラスを追求する段階に入る。それは、マエストロ道義先生やオーケストラ事務局の要望でもある。それだけ、信頼され期待されているわけで、裏切るわけにはいかない。その意味で、4月に予定されている団内のオーディションは、大阪フィル合唱団の将来、その方向性を占う大きな関所となることだろう。
ところで、井上道義先生の「第九」2日目は、初日の大暴れから一転して、静の要素も感じさせ、より深い感銘を与えられるものとなった。これから円熟を迎えられるマエストロとご一緒にお仕事をできることは、この上もない幸いである。