バチカンとアッシジで歌う演奏旅行(参加者61名、主催:国際親善音楽交流協会 = IGMEA)が、10月23日~31日の日程で行われ、去る10月31日に無事に帰国しました。コロナ禍前から始まっていた企画ですから、足かけ4年ほどをかけて成就されたツアーとなります。
Coro Verità e Pace(合唱団" 真実と平和”)と名付けられた合唱団は、東京と大阪(中村貴志先生のご指導)のふたつの練習会から成り、現地で合流し、下記のふたつの本番に臨むこととなりました。
1.2023年10月26日 バチカンのサン・ピエトロ大聖堂に於ける(17時の)ミサに於ける聖歌の奉納
2.2023年10月28日 アッシジの聖フランチェスコ教会に於けるコンサート
かねてより私は、アッシジの聖フランチェスコ大聖堂にて「水のいのち」を演奏したいという夢を持っており、それを軸に企画を膨らませていくことにしました。
なぜ「みずのいのち」か?
というと、過去に二度、この地を訪れたとき、街の清澄な空気感、大聖堂の神秘にして神聖な空気が髙田作品を演奏するに相応しいと直感したからです。
もちろん、髙田三郎先生の典礼聖歌「(アシジの聖フランシスによる)平和の祈り」に導かれたということもあったでしょう。
しかし、何か足りない。
「水のいのち」の海外演奏は、過去何度も行われています。
わたし一人に限っても、2004年にウィーンのムジークフェラインザール、ザルツブルクのモーツァルテウム、翌2005年に、プラハのスメタナホールと、髙田留奈子先生、髙田江里先生(プラハではピアノ担当)のお立ち会いの下、それぞれの土地での初演指揮をさせて頂きました。
ゆえに、もう一つ、新しいツアーへ心を駆り立てる決定的な柱が欲しい、と考えていたときに閃いたのは、
「邦人作曲家に新作のラテン語による宗教音楽を委嘱する」というものでした。
そうすれば、バチカンとアッシジに日本の宗教作品を届けるという、ただの自分たちの楽しみに終わらない、重大な使命を帯びたコーラスとすることが出来ます。
この閃きを、主催者である国際親善音楽交流協会(IGMEA)の丸尾氏に提案したところ、
「素晴らしいアイデアです」と大賛成して頂きました。
ではどなたに?
数名の候補が頭をよぎりましたが、結論は一瞬でした。
「なかにしあかね先生にしましょう!」
厚木市合唱連盟による「よかったなあ」委嘱初演の時より、先生とは面識はあり、
さらには、星野富弘の詩による「今日もひとつ」を演奏しながら、
特に、「いちじくの木の下」などに、その音楽にキリスト教の空気感を感じていたからです。
もちろん、星野富弘がクリスチャンのなので「当たり前のことではないか」と突っ込まれそうですが、音楽と詩が見事に融合してひとつの有機体となっている、ということを指してこう言っているのです。
わたしは勝手気儘にアイデアを述べるだけで、実際に動いてくださるのはいつもIGMEAの丸尾さんです。
丸尾さんは、既にご面識のあった某先生の仲介を経て、なかにし先生へのご依頼に漕ぎ着けてくださいました。
そして、幸いなことに、ご快諾頂いたわけであります。
さて、この2曲だけでは、一本のコンサートとして尺が足りない。
そこで、選ばれたのが、モーツァルト「戴冠ミサ曲」でした。
作品のクオリティの高さ、知名度、演奏時間、難易度など、すべてをクリアする作品だったので、これもスンナリと決まりました。
実は、ほかに、上述の髙田三郎先生の典礼聖歌「(アシジの聖フランシスによる)平和の祈り」も演奏するつもりだったのですが、
とある、やんごとなき事情が生まれ、実現できませんでした。
無念ではありますが、やり残したことがある、というのは、素晴らしいことでもあります。
再チャレンジしようという気持ちを持ち続けられるからです。
もし生あるうちに再びの機会が与えられるなら、
わたしたちをアッシジに導いてくれた「平和の祈り」を演奏しなければならない、と考えています。
(その2へつづく)
※写真は、10月26日、サン・ピエトロ大聖堂に於けるミサを終えての記念撮影。