福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

福島有里 ぷさいく展 - 暮らしの温い布 始まる

2018-11-20 10:14:48 | 美術


福島有里 ぷさいく展 - 暮らしの温い布

いよいよ本日からです。

町田市立国際版画美術館内の喫茶けやきをお借りしての家内の展示会。

個展というほど大それたものでなく、喫茶けやきさんの壁をささやかに飾らせて頂いております。

スヌード、帽子、へんてこマフラーなどの販売もあります。

11月20日(火)から12月2日(日)まで(月曜休) 午前10:30 ~ 午後4:30

お天気にも恵まれ、芹が谷公園の木々も気持ちよさそう。

お散歩ついでに、お立ち寄り頂けると幸いです。手作り人形たちもお待ちしております。












フェルメール「青衣の女(手紙を読む女)」との再会

2018-09-20 15:35:52 | 美術


大阪フィル合唱団とのライプツィヒ公演に先立つミュンヘン訪問は、ただただゲルギエフ&ミュンヘン・フィルのブルックナーを聴くのが目的。クナッパーツブッシュの墓参さえしてしまえば、観光の類は一切必要ないのだが、市内交通機関の3日間チケットもあることだし、清掃の時間に部屋を空けなければいけないし、とのことで、トラムに乗り込み、アルテ・ピナコテークという歴史ある美術館に出掛けてみた。



まさか、ここで再会できると思っていなかったのが、去る6月にアムステルダムで拝んだばかりのフェルメール「青衣の女(手紙を読む女)」である。今月末までの特別展示がされていたのだ。



それにしても、フェルメール前のこの静けさよ。日本だったら黒山の人集りとなること必至だが、実にゆったりとした気持ちで鑑賞することのできたのは有り難い。











その他、ラファエロ、レンブラント、ルーベンス、ファン・ダイク、ティツィアーノ、ピーテル(父)・ブリューゲル(順不同)など、半日では堪能しきれないほどの作品が展示されていたが、すべてに真剣に対峙すると疲れてしまうので、流すべきは流してホテルに戻った次第。

夜のブルックナーに備え、しばしの休息だ。



アルベルティヌムのカール・ローゼ展

2018-01-23 23:47:44 | 美術


クルト・クヴェルナー作品と対面したのと同じ日、ドレスデンはアルベルティヌム、ノイエ・マイスター美術館の企画展「カール・ローゼ展」を観ました。というより、寧ろこちらをお目当てに訪れたのでした。



ドイツの画家カール・ローゼ Carl Lohse (1895-1965) の名前は、この度ドレスデンに滞在するまで知らなかったのですが、なんとも惹かれる色彩であり、画風です。









肖像画も味わい深いものがありますが、風景画もとても心に残ります。









生前はなかなか正当な評価を受けることができなかったと言われるカール・ローゼのこと。もっと知りたくなりました。

https://albertinum.skd.museum/en/exhibitions/carl-lohse-expressionist/


クルト・クヴェルナーに再会

2018-01-21 14:15:56 | 美術




2年前のドレスデン滞在時にわたしを虜にしたクルト・クヴェルナー(1904 - 76)の油彩3点と対面してきた。

上の2点、「帽子を被った自画像」「画家の両親」は、アルベリティヌムのノイエ・マイスター美術館にて。

もともとは、街中のポスターなどで気になっていたカール・ローゼの企画展がお目当ての訪問ではあったが、「土地柄、常設展にクヴェルナーがあるかも知れない」という期待が叶えられたものである。

ここでも、全く虚飾のない、真実だけを描こうという筆致が胸に迫る。



お昼を挟んで出掛けたのは新市街地のガレリー・ヒンメルである。明日のドレスデン空港までの乗り換えの下見に、ドレスデン・ノイシュタット駅まで出掛けたついでに訪ねることにしたのである。



日曜日のため、新市街地中のお店が閉まっており、ガレリー・ヒンメルも例外ではなかったが、それでも歩いた甲斐はあった。ショーウインドウに飾られていたのは、「天使の燭台を持った農婦」。たしか、二年前にも見た記憶がある。作品に大きな力があって圧倒される。



ただいま開催されているのはフリッツ・トレーガーという人の個展。全く馴染みのない名だが、展示室をウィンドウ越しに覗くかぎり、とても趣味が良さそうだ。
明日のアムステルダム行きのフライトが午後発のため、明朝、再訪することは可能かな。

ドレスデンといえば、旧市街地の街並み、建物の美しさに勝るものはないものの、多くの画廊のひしめく新市街地の創造的空気も悪くない。

2年前、どうにも咳の止まらないとき、新市街地のアポテーケ(ドラッグストア)に世話になったことも思い出した。こちらのハーブ・ティーの効き目の素晴らしさは、日本ではなかなか求められないことを知ったものである。


ワルター&ニューヨーク・フィルのブラームス「2番」を彷彿とされるエリシュカ先生のドヴォルザーク「6番」

2017-10-20 01:15:43 | 美術


エリシュカ先生との大阪フィル定期初日が終わりました。写真は、コーラスに御満悦のエリシュカ先生ご夫妻とのスリーショット。

幕開けの「伝説」は、ドヴォルザークの管弦楽作品の中でも余り知られていない作品ですが、エリシュカ先生から生まれいずる音楽の懐かしさ、温かさはまさにドヴォルザーク。まったく魅了されました。

つづく、「テ・デウム」も国内で演奏されることの殆どない作品。ドヴォルザークのスペシャリスト、エリシュカ先生と共演できたことは、大阪フィル合唱団にとっても、わたしにとっても幸せなことでした。

後半の交響曲第6番は、エリシュカ先生の十八番。作品への愛情の深さが、実際の音となる様は壮観。 「6番」の実演を耳で聴くのははじめてでしたが、ドヴォルザークの本質を聴いたように思います。素朴で、これ見よがしの作為がありません。
どの楽章も気合いの入った名演でしたが、なかでもフィナーレは、ワルター&ニューヨーク・フィルによるブラームス「2番」の大名演と同じ土俵で評価出来る名演と呼べましょう。

2日目が楽しみであるとともに、日本に於ける最後の共演ということは寂しい限り。


吉田直作品とブルックナー8のコラボ?

2016-10-28 17:27:06 | 美術



吉田直くんの個展。期待通りに素晴らしいものだった。

個々の作品の生命力、内面性にも打たれたが、黒・白・赤にまつわる作品が厳選され、配置とライティングの妙に魅せられる。



壁には、木彫作品の元となるデッサンが飾られ、これも味わい深い。どこかわたしの好きな高田博厚作品にも通ずる正統的な技術の確かさと精神の真摯さを思わせる。



直くんに、ブルックナー8CDをプレゼントしたところ、大いに喜んでくれて、写真のようなコラボとなった。なかなかお似合いのようだ。





お互いゼロからの出発。藁しべ長者のように生き延びていることを祝福し合うなど、話は尽きることがない。似た者同士ではあるが、ただひとつ違うのは彫刻に身を捧げた彼が独身を貫いていることか。と、気付けば東京ジングフェラインのレッスンまでギリギリの時間。



急ぎ足でみなとみらい線・元町・中華街駅へ向かうとブルーに染まるマリンタワーのお出迎え。小学5年生までマリンタワーの見える横浜に暮らした自分にとって、何とも言えない郷愁に襲われる。やはり、横浜の空気は良いなぁ。わたしにとっての塔は、スカイツリーではなくマリンタワーなのだ。


彫刻家・吉田直の展覧会

2016-10-28 14:40:04 | 美術

本日は、これより友人の彫刻家、吉田直君の展覧会に出掛けてきます。

古今の仏像修復において、技と心を磨き上げた本物の存在感!

上の木彫作品が今回展示されているかどうかは分かりませんが、写真からもその圧倒的な力がお伝えできると思います。

ところは横浜。週末のお出かけにオススメします。

http://www.iwasaki.ac.jp/museum/pg48.html#Yoshida

■岩崎ミュージアム第389回企画展
吉田直展 白に黒と赤

横浜出身の彫刻家、吉田直氏の個展。

会期:2016年10月4日(火)~10月30日(日)
場所:岩崎ミュージアム

岩崎ミュージアム 企画展「吉田直 白に黒と赤」 
  • 実施日 2016/10/4(火)~10/30(日)
    場 所 岩崎ミュージアム

入館料・開館スケジュール

 

入館料・開館時間

入館料
大人 (高校生以上)

300円

小人 (小/中学生)

100円

団体 (20名様以上)

大人200円 小人70円 ※事前申込による予約が必要です。

開館時間
9:40〜18:00

(入場は17:30迄・特別展等の際、若干の変更がある場合もあります)

ドレス写真撮影喫茶室などの一部サービスは10:30-17:00

交通案内

アクセスMAP

・みなとみらい線(東急東横線直通)
「元町・中華街駅」(5番)元町口・改札口~(6番)アメリカ山公園口より徒歩3分

・JR根岸線-石川町駅南口より徒歩15分

・神奈川中央交通バス11系統(桜木町駅〜保土ヶ谷駅東口)
・横浜市営バス20系統(桜木町駅〜山手駅)
ともに「港の見える丘公園前」下車

*当館に一般駐車場は有りません。隣接の民営駐車場等をご利用下さい。

■岩崎博物館(ゲーテ座記念)
〒231-0862 神奈川県横浜市中区山手町254
TEL 045-623-2111  FAX 045-623-2257


 

 


モネのような音楽を

2016-10-01 10:11:30 | 美術


 アサヒビール大山崎山荘美術館は開館20周年というから、いまモーツァルト「レクイエム」を稽古している長岡リリックホールと同い年だ。



 その記念の年に”モネ展~うつくしいくらし、あたらしい響き”が開催されている(前期:9月17日~10月30日、後期:11月1日~12月11日)。
 もともと5点の睡蓮をはじめモネ作品の所蔵で名を知られる美術館であるが、そこに神奈川(箱根)、姫路、山形、群馬、茨城、埼玉、三重、福島など各地からの名品が集った。点数こそ20点(うち1点は前期のみ、2点は後期のみ)だが、数がありすぎるよりも、この程度の方が、一作ごとへの対話がじっくりできて良いような気がする。



 今回、わたしが惹かれたのは、円熟期に描かれた睡蓮よりも、30から40代の頃の作品たちである。
 すなわち、「貨物列車」(1872年・32歳)、「ル・プティ・ジュヌヴィリエにて、日の入り」(1874年・34歳)、「モンソー公園」(1876年・36歳)、「菫の花束を持つカミーユ・モネ」(1876-77年頃)、少し置いて、「サンジェルマンの森の中で」(1882年・42歳)。











 今回は、普段敬遠している図録を手にした。印刷された作品の印象が本物に遠く及ばないのは仕方ない。ことにモネが己が絵に定着させた目映いばかりの光彩の再現など望むべくもない。しかし、昨日ばかりは「いま心に感じた感動を記憶に定着させよう」という目的を持って手にすることにした。さらに、作品ごとに付された小さな解説が興味の糸を広げ、記憶の手助けとなることを願って。
 要は、自分のイマジネーションにあり、この図録を手繰りつつ、脳内にこの目で見た本物の質感を再現させれば良い。不完全なライヴ音源から、実演の素晴らしさを脳内で再創造する作業にも似ていようか。



 モネがキャンバスに封じ込めた黄金の構図、眺めれば気の遠くなるようなきらめく光の粒たちの舞踊、そして幾重にも織りなったり溶け合ったりする鮮やかな色彩。
 
 このように艶やかに美しい音楽を奏でたい、といま心が囁いている。




画像追加・東尚彦コレクション(その後)

2016-09-03 17:25:00 | 美術
1987.1.3 酉年


城 1980.12


無の塔 1987.1.10


木々の間を抜けて走ってゆこう
君は雲の棲家に導かれるだろう
そして何故小石がじっとしているかを知るだろう 一九八七年



大地の構造 1980


観葉が花より美しいときがある 一九八一年

シン・ゴジラでなく竹久夢二

2016-08-31 00:31:17 | 美術



お昼過ぎの新幹線までの時間、後楽園に近い夢二郷土美術館を訪ねることとした。シン・ゴジラをもう一度観てもよかったのだが、どうせなら別の音響のよい施設を選んでのこととしたい。
画家・竹久夢二については、実のところ、知識も思い入れも薄く、「あの情緒的な美人画の作者」くらいの認識しか持ち合わせていなかった。むしろ、大好きな日本歌曲、小松耕輔作曲「母」の詩人として親しみを感じていた。

  母

 ふるさとの 山の明け暮れ
 みどりのかげにたちぬれて
 いつまでも われ待ちたもう
 母は かなしも

 幾山河 とおくさかりぬ
 ふるさとの みどりのかどに
 いまもなお われ待つらむか
 母は とおしも

この佳曲を愛するあまり、簡素なハーモニー付けをして女声コーラスで演奏したことも、かつてはよくあったものだ(スコアは見ていないが、青島広志による編曲もあるらしい)

美しい詩の中で、母が夢二を待ちつづけた故郷が、旧岡山県邑久郡(現・瀬戸内市)であったということを知ると感慨もひとしお。久しぶりに指揮したくなった。



夢二郷土美術館 http://yumeji-art-museum.com

シン・ゴジラはさておき、夢二郷土美術館を訪ねた直接の動機は、油絵である。わたしの中で夢二と油絵というものが結びつかず、いったいどんなものかとこの目で確かめておきたかったのである。

ただいま展示中の目玉は、ロサンゼルスから里帰りしたという幻の「西海岸の裸婦」。

日系人写真家・宮武東洋(1895-1979)に送られたものが大切に保管されていたのだという。

48歳にして初の洋行。大きな期待と意欲をもって訪ねたアメリカが、大恐慌のまっただ中という不幸。展覧会は注目も浴びず、作品も売れず、苦しい日々を過ごした中、描かれた一枚の油彩画だ。
しかし、夢二に詳しいとはいえないわたしから見ても、ここに新しい何かの生まれつつあるのを感じる。異文化との出会いが、夢二の魂に大きな化学変化を起こさせたに違いない。

その後の竹久夢二がドイツ・チェコ・オーストリア・フランス・スイスに旅したことことや、その苦労がもとで体調を崩し結核を患い、50歳の誕生日目前という若さで亡くなったこともはじめて知った。

風景画、静物画、挿絵など、目を見張る作品も多く、「竹久夢二、美人画のみにあ非ず」を実感できたのは嬉しい収穫だ。

数奇な女性遍歴も含め、もっと夢二のことを知りたいと思わせたばかりでなく、自分もまた内なる音楽を変えるような大きな冒険をせねばならない、と感じさせた夢二郷土美術館への訪問であった。