福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

過ぎゆく風景の向こう ~ モーツァルト「40番」テスト盤を聴く

2017-12-12 01:14:03 | レコード、オーディオ



モーツァルト「レクイエム」特別演奏会
2017.11.16 (木曜日)
於・東京オペラシティ・タケミツメモリアル

♪ウィーン旅行中に届いていたテスト盤をようやく聴く。まずはディスク1の「魔笛」序曲と交響曲第40番から。
「40番」は我ながらテンポが遅い。厳密に較べたわけではないが、晩年のワルターやクレンペラーより遅いような印象すらある。実演はともかく10人中9人には「遅すぎる」と敬遠されてしまうに違いない。

しかし、このテンポこそ、あの日のわたしだったのだ。嵐のように荒れ狂ったり、疾走するのではなく、悲しみを静かに見つめることこそが真実だった。この透明なゆったりと過ぎゆく音の風景の向こうに彼岸に旅立った魂との語らいがある。次にこのト短調を指揮するときには、もっと速めのテンポを選ぶのかも知れない。
あの日にしかない真実を見事に音にしてくれた崔さんはじめとする東京ヴェリタス交響楽団の皆さんにはひたすら感謝あるのみ。

それにしても、交響曲の第1、2、4楽章の前半リピート有り、拍手込みとはいえ、この2作品で45分超えというのは、尋常ではない。第2楽章などまるでブルックナーのようだし、フィナーレもクナッパーツブッシュのアイネ・クライネ・ナハトムジークを思わせる(もちろん、芸格は足元に及ばないけれど)。

時代離れしたテンポによるモーツァルトの2作品、高音質のアナログ・レコード作成に丁度よい収録時間だなぁ、などと妄想してしまうのは、わたしの悪い癖だ。


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