大好きな愛知県芸術劇場コンサートホールにて、ロイヤル・コンセルトヘボウ管を聴いた。
7月に町田で聴いたグスターボ・ヒメノ&都響のベートーヴェン#7にすっかり魅了されたため、旅の途中、名古屋に立ち寄ることとしたのである。
1曲目は今をときめくユジャ・ワンを独奏者に迎えてのチャイコフスキーの第2協奏曲。
余りの難曲故に滅多に演奏されない作品だが、ユジャ・ワンのパフォーマンスは超弩級で、テクニック、パワー、パッションともに申し分なし。ヒメノ指揮するコンセルトヘボウ管の極上のサウンドが真面目すぎて聴こえるほどの鮮やかさ。
ただ、音楽そのものの魅力は、第1協奏曲に敵うものではなく、ピアニストにとって努力の報われない作品とも言えそうだ。裏を返せば、ユジャ・ワンくらいの衝撃度が求められる作品ということだろう。
ユジャ・ワンはアンコールでさらに弾ける。
アルカディ・ヴァロドスによるモーツァルト「トルコ行進曲」の変態的とも呼べる超絶なアレンジを完璧にクリアしたことも凄いが、リスト編曲のシューベルト「糸を紡ぐグレートヒェン」では、テクニックばかりでなく、グレートヒェンの張り裂けんばかりの胸のうちを、一流の歌手以上に表現した内面性に最大級の讃辞を送りたい。
休憩後の「シェエラサード」も盤石。
ヒメノは管楽器のソロにかなり大きな表情を与えつつも、楽章間に休みを置かない全曲の造型に揺るぎはなく、アンサンブルも引き締まっていて見事であった。
ただひとつ言うなら、その音楽が一途過ぎるキライもあるかな? 今後、そこに大らかさや遊び心が加わってくれば鬼に金棒だろう。しかし、あの早足で入退場を繰り返す味も素っ気もないカーテンコール、ボクは嫌いじゃない(笑)。その虚飾のなさ、ストレートさがヒメノの音楽の魅力と同じだから。
アンコールは、ユジャ・ワンに負けじと写真の2曲。
マスカーニでコンセルトヘボウ管の弦の歌の豊穣さを見せつけたかと思うと、つづくリゲティでは、各セクションの目眩く妙技で聴衆の度胆を抜いた。つまり、歌ごころから超絶技巧まで、コンセルトヘボウ管の実力の奥深さを披露してくれたことになる。
東京、川崎公演にも駆けつけたいところだが、スケジュールの都合で今回はこれまで。またの機会を心待ちにしたい。
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