福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

クレンペラーの「マタイ受難曲」を英オリジナル盤で

2015-01-10 00:14:42 | レコード、オーディオ

今朝は、クレンペラー指揮フィルハーモニア管&合唱団による「マタイ受難曲」を、英コロムビアのオリジナル・アナログ盤で聴いた。

英コロンビア SAX2446/50(5枚組)

全曲に3時間43分、LPレコードにして9面を要するという異様なテンポの遅さ! ナンバーによっては、古楽器演奏の半分、またはそれ以上の驚愕のスローテンポである。

にもかかわらず、この演奏は古さを思わせない。
それは、どんなに遅いテンポであろうと、クレンペラーがリアリストとしての態度を貫き、ロマン的な要素の入り込む隙がないからであろう。
さらに、このテンポの遅さが作られたものではなく、晩年のクレンペラーの生理に適っていたことも、聴き手に大きな安心感を与える要因のひとつとなっている。

イエス役のフィッシャー=ディースカウの慈愛に満ちた歌唱など、本当に心の襞の奥の奥まで染み込んでくる。この味わいは、自分が若い頃には気付かなかったもの。

などなど、この演奏の全容はCDの貧しいフォーマットに収まりきれるものでなく、この英オリジナル・アナログ盤でないと味わえないものがある。

15年前の「クラシックCDの名盤」ではシェルヘン盤を筆頭に挙げ、後にヘレヴェッヘ新盤を愛聴したものだが、いまやクレンペラー盤が最も大きな存在となった。良くも悪くも、自分の指揮に影響を受けるのは必至であるが、東京ジングフェラインと共演するのも、聖トーマス教会で共演するのも、ともに古楽器オーケストラであり、古楽器によって、どれだけ、スケールの大きく、懐の深い演奏のできるかを追求していきたい。


J.S.バッハ:マタイ受難曲BWV.244(全曲)
 福音史家:ピーター・ピアーズ(テノール)
 アリア:エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
 アリア:クリスタ・ルートヴィヒ(アルト)
 アリア:ヘレン・ワッツ(アルト)
 アリア:ニコライ・ゲッダ(テノール)
 アリア:ヴァルター・ベリー(バス)
 イエス:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
 ユダ:ジョン・キャロル・ケース(バリトン)
 ペテロ:ヴァルター・ベリー(バス)
 大司祭:オタカール・クラウス(バリトン)
 ピラト:オタカール・クラウス(バリトン)
 侍女1:ヘザー・ハーパー(ソプラノ)
 侍女1:ヘレン・ワッツ(アルト)
 司祭1:オタカール・クラウス(バリトン)
 司祭2:ジェレイント・エヴァンス(バリトン)
 目撃者1:ヘレン・ワッツ(アルト)
 目撃者2:ウィルフレッド・ブラウン(テノール)
 ハンプステッド教会少年合唱団
 マーティンデイル・シドウェル(合唱指揮)
 フィルハーモニア合唱団
 ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)

 オブリガート
  ガレス・モリス(フルート)
  アーサー・アクロイド(フルート)
  シドニー・サトクリフ(オーボエ、オーボエ・ダモーレ)
  ピーター・ニューベリー(オーボエ・ダ・カッチャ)
  ヒュー・ビーン(ヴァイオリン)
  ベラ・デカニー(ヴァイオリン)
  デズモンド・デュプレ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
 通奏低音
  ジョージ・マルコム(チェンバロ)
  ヴィオラ・タナード(チェンバロ)
  レイモンド・クラーク(チェロ)
  ジェイムズ・W・マーレット(コントラバス)
  ラルフ・ダウンズ(オルガン)
 フィルハーモニア管弦楽団
 オットー・クレンペラー(指揮)

 録音時期:1960&61年
 録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール、他
 録音方式:ステレオ(セッション)
 プロデューサー:ウォルター・レッグ
 エンジニア:ダグラス・ラーター


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