今朝は、クレンペラー指揮フィルハーモニア管&合唱団による「マタイ受難曲」を、英コロムビアのオリジナル・アナログ盤で聴いた。
英コロンビア SAX2446/50(5枚組)
全曲に3時間43分、LPレコードにして9面を要するという異様なテンポの遅さ! ナンバーによっては、古楽器演奏の半分、またはそれ以上の驚愕のスローテンポである。
にもかかわらず、この演奏は古さを思わせない。
それは、どんなに遅いテンポであろうと、クレンペラーがリアリストとしての態度を貫き、ロマン的な要素の入り込む隙がないからであろう。
さらに、このテンポの遅さが作られたものではなく、晩年のクレンペラーの生理に適っていたことも、聴き手に大きな安心感を与える要因のひとつとなっている。
イエス役のフィッシャー=ディースカウの慈愛に満ちた歌唱など、本当に心の襞の奥の奥まで染み込んでくる。この味わいは、自分が若い頃には気付かなかったもの。
などなど、この演奏の全容はCDの貧しいフォーマットに収まりきれるものでなく、この英オリジナル・アナログ盤でないと味わえないものがある。
15年前の「クラシックCDの名盤」ではシェルヘン盤を筆頭に挙げ、後にヘレヴェッヘ新盤を愛聴したものだが、いまやクレンペラー盤が最も大きな存在となった。良くも悪くも、自分の指揮に影響を受けるのは必至であるが、東京ジングフェラインと共演するのも、聖トーマス教会で共演するのも、ともに古楽器オーケストラであり、古楽器によって、どれだけ、スケールの大きく、懐の深い演奏のできるかを追求していきたい。
・J.S.バッハ:マタイ受難曲BWV.244(全曲)
福音史家:ピーター・ピアーズ(テノール)
アリア:エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
アリア:クリスタ・ルートヴィヒ(アルト)
アリア:ヘレン・ワッツ(アルト)
アリア:ニコライ・ゲッダ(テノール)
アリア:ヴァルター・ベリー(バス)
イエス:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
ユダ:ジョン・キャロル・ケース(バリトン)
ペテロ:ヴァルター・ベリー(バス)
大司祭:オタカール・クラウス(バリトン)
ピラト:オタカール・クラウス(バリトン)
侍女1:ヘザー・ハーパー(ソプラノ)
侍女1:ヘレン・ワッツ(アルト)
司祭1:オタカール・クラウス(バリトン)
司祭2:ジェレイント・エヴァンス(バリトン)
目撃者1:ヘレン・ワッツ(アルト)
目撃者2:ウィルフレッド・ブラウン(テノール)
ハンプステッド教会少年合唱団
マーティンデイル・シドウェル(合唱指揮)
フィルハーモニア合唱団
ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)
オブリガート
ガレス・モリス(フルート)
アーサー・アクロイド(フルート)
シドニー・サトクリフ(オーボエ、オーボエ・ダモーレ)
ピーター・ニューベリー(オーボエ・ダ・カッチャ)
ヒュー・ビーン(ヴァイオリン)
ベラ・デカニー(ヴァイオリン)
デズモンド・デュプレ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
通奏低音
ジョージ・マルコム(チェンバロ)
ヴィオラ・タナード(チェンバロ)
レイモンド・クラーク(チェロ)
ジェイムズ・W・マーレット(コントラバス)
ラルフ・ダウンズ(オルガン)
フィルハーモニア管弦楽団
オットー・クレンペラー(指揮)
録音時期:1960&61年
録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール、他
録音方式:ステレオ(セッション)
プロデューサー:ウォルター・レッグ
エンジニア:ダグラス・ラーター