福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

セル&ウィーン・フィルのブルックナー3番

2013-12-12 23:24:37 | レコード、オーディオ
日中、都内で2時間ほど時間ができたので、新宿の紀伊国屋書店とディスクユニオンを梯子することとした。

後者で仕入れたものの一つが、セル&ウィーン・フィルのDVDだ。
お目当ては、ブルックナーの3番。
1966年6月5日 ムジークフェライン・ザールに於ける収録。

オットー・シュトラッサーによれば、このコンサートは、セルとウィーン・フィルの共演に於けるクライマックス。
当初、専制的なセルのスタイルは、縛られるのを好まないウィーン・フィルの反感を呼んだとのことだが、共演を重ねるうちに理解を深め「今や事態は好転し、全員は彼を尊敬し、ブルックナーの第3シンフォニーは、欠点のない美しさでもってひびき、私たちがめったに体験したことのないほどだった」との境地に至った。

確かに、これほどアンサンブルの整然としたウィーン・フィルを聴くのは稀だが、それが些かの冷たさを伴わないばかりか、楽員一堂の共感の波が大きなうねりとなって、血潮のたぎる熱い音楽となっているのである。
その崇高さはブルックナー演奏史上に於いて特筆すべきものだろう。

前プロに置かれたグルダとの「皇帝」も美しいが、それ以上に感銘を受けたのは、併録されたもう一つの演奏会、1968年12月2日 ムジークフェライン・ザールに於けるウォルトンのヒンデミットの主題による変奏曲だ。
作品の新しい響きとウィーン・フィルの古の響きが渾然一体となった魅力!
終演後に作曲者ウォルトンが客席よりステージに上がって拍手喝采を浴びる図には、全く感動してしまった。

唯一惜しまれるのが、音質が万全でないこと。弦はよいとして、ピアノや木管の音がビリついてしまうのだ。
いずれ、セル&ウィーン・フィル集成のような形でSACD化されないものだろうか? もちろん、ハイレゾ配信も歓迎である。







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1 コメント

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ドレスデン国立oとの共演 (川田泰正)
2013-12-13 23:46:31
福島さんご推薦のウィーンフィル盤は持っていないのですが、久しぶりにDSKとの共演(SONY)を聴いてみました。

これが信じられないような名演奏でした。
(シューリヒトとウィーンフィルとのCDも聴いてみたのですが、ウィーンフィルが下手に思えるほどでした。)

セルが何か特別なことをしているのかと言えば、そんな事はありません。
余計なことは何もしていないと言えるほどです。
しかし、ブルックナーの演奏においてはそれが一番大切なことであると、私は思うのです。

そして何より言いたいことは、DSKの演奏の素晴らしさです。
ppからffまでの充実した響きと、消えていく余韻のふくよかさ、これ以上の演奏は望めないのではないかと思えるのです。

あの大きすぎるザルツブルク祝祭劇場での演奏にもかかわらず(ムジークフェラインと比べられる筈もありません)、そんな事を気にもさせません。

音楽祭の期間中であれば、はたして何回のリハーサルができたのでしょうか。
短時間でどうしてこれほどの名演奏が生まれたのかは
指揮をしたことの無い私には皆目見当がつきません。

指揮もなさる福島さんにその秘訣を是非ともお聞かせ願えればと思います。

余談ですが、今年マゼールとMPOの来日公演で何とも言えないひどい演奏も聴きました。
これが何故そこまでいじくりまわすのかという苛立たしいものでした。
老境に入っても枯れる事は無いのだなと思いました。
しかし、ヤンセンのvn聴きたさに来年のマゼールとBSOの演奏会のチケットもとってしまったのですが。
後半の幻想交響曲がどうなることかと今から心配しているところです。
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