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名も無きねこに

奇妙な夢

2007-10-17 01:01:30 | わたし
戸を締め切った和室の真中に布団が敷いてあった。
胸元に相当するあたりがめくれ、誰かが抜け出した跡のように見える。
右手の窓の内側には落下防止の金属の手すりがある。古いアパートや旅館に見られるものだ。
雨戸は左の一枚が15センチほど開けられており、そこから差す明かりが敷布団と枕の間をぼんやり照らしていた。

室内に人の姿は無く、二人の男の声だけが聞こえる。
声音は憎みに満ちていた。
二人はアクリル板で間を仕切られた狭い空間に閉じ込められていて、
また、その空間というのも布団の敷かれた部屋とは別の次元にあることになっていた。
長い間口論が続いてきたらしいのだが、わたしは途中からそこに居合わせたらしい。
しかし、そのまま言い争いを続けさせるのもうんざりしてきたので、
彼らを無理にでも和解させるため、双方の手を取り力ずくで握手させた。

枕の上で結ばれた二人の手は、部屋の闇よりも黒く、輪郭線だけが白かった。

苦痛の悲鳴のような叫び声がした。
彼らの声か、それともわたしのものか、分からない。
二人を隔てていた仕切りにひびが入り、砕けた。

雨戸の間から差す光が強くなった。
声の主は一人だった。

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