朝顔展

 先週、府立植物園で朝顔展があったので、行って来た。
 背の高いクスノキの並木道に展示場が設けられて、たくさんの涼しげな朝顔の鉢が並んでいた。鮮やかな紅色や、青紫、落ち着いた小豆色、花の中心に向って幾筋もの白い線が入ったものや、薄い青に白の細かい斑が入ったものなど、どれも、大きな花を咲かせる大輪朝顔である。普段よく目にするような、町家の軒下などにくるくると蔓を巻いて、小さならっぱ型の花をつける朝顔とは比べ物にならないような花の大きさなので、大事に育てて、品評会などに出す種類なのだろうと思う。
 変化朝顔というのもあった。奇形の種同士を掛け合わせて作られた、珍しい形状を持つ朝顔である。変化朝顔は、実際に種を撒いて、蔓が伸び、葉が育ち花が咲くまで、それがどのような形状を持つ朝顔なのかわからない。蔓が異常なほど幅広くなって帯のようになったものや、葉が病的に縮れたもの、花弁が根元から千千に裂けてなでしこの花のようになったものなど、千差万別である。
 朝顔といえば、小学校の一年生のときに育てた覚えがある。確か学校の理科の授業だったと思うけれど、学年ごとに違った植物を育てて、観察日記をつけるのである。一年生は朝顔、二年生はひまわり、三年生は白粉花で、確か四年生はへちまだったと思う。緑色をしたプラスチックの四角い植木鉢と種が配られて、それぞれ、土に小さなくぼみをつけて種を蒔いた。一階の教室の窓の外に、鮮やかな緑色の植木鉢がずらりと並んだ。
 双葉が開いたとか、三枚目の葉が出たとか、初めての蔓が延びたとか、いちいち嬉しかった。スケッチして、観察日記をつけた。
 クラスの中で早いものは、夏休みが始まる前に花を咲かせていたけれど、私の朝顔は学校では咲かず、夏休みに入って、植木鉢を持って帰った家の玄関先で咲いた。つぼみが大きくなってくると、きれいにねじった縞模様が色づいて、何色の花が咲くのかがわかる。それを見るのが楽しみだったけれど、実際に何色の花が咲いたのかは忘れてしまった。青紫とか赤紫とか、そんな色だったと思う。
 花がしぼんだあとには小さな青い実がついて、季節の終わりに、枯れて乾いた薄茶色の皮をぱりぱりとはがすと、中から、きれいに並んだ真っ黒な種が、手のひらにころんと転がった。
 そんな昔のことを思い出して、朝顔展では小さな紙の袋に入れて朝顔の種を売っていたから、一つ買って帰ればよかったと、家に帰ってから少々後悔した。
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