今月は嬉しいことにブルックナーが集中して聴ける。日本フィル/インキネン指揮で、ブルックナー第9番、そしてNHK交響楽団でもブロムシュテットの指揮で、やはりブルックナーの第9番、そして新日本フィルでも、上岡敏之によるブルックナー第9番と、続けざまに3種類の第9番を聴ける状況なのである。
スケジュール最初のインキネンについては、残念ながら予定が合わず断念したが、大したダメージは残ってはいない。過去に聴いている第8や第5の延長線上にあるとしたら、おそらく心の葛藤はない。そして今回、N響によるブルックナー第9番を聴いてきた。これは今や巨匠として世界に君臨しているヘルベルト・ブロムシュテットの指揮する演奏だからだが、演奏内容は、昔から聴いている彼のブルックナーの路線からは、変わってはいなかった。ちょうど2年前に、バンベルク響でブル7を聴いたはずだが、その時の印象とは変わらない。しかし御年91歳のブロムシュテット、変わらない方が反って凄みが沸いてくる。ブルックナーに真摯に立ち向かう姿勢が、演奏される音楽に表れる。譜面を信じ、愚直に演奏することこそ、ブルックナー演奏に向いているとされるから、ブロムシュテットの演奏スタイルは、このスタイルにハマっているのだろう。今回もとても自然でゆったりと響きの中に身を置くことができたのだ。
残響のないNHKホールで、NHK交響楽団も大健闘し、指揮者の意図するブルックナートーンを響かせていたことは認めたいが、楽曲が第9番となると、やはり聴こえてくる表面上の響きだけでは物足りず、大地の揺らめきとでもいうか、心の底から湧き上がってくるような想いが感じたくなるもの。想像を絶するような「大きさ」「厳しさ」が演奏から見えなかったことが残念だ。よくテンポ感についてのコメントを見かけるが、演奏時間が早いか遅いかは、大した問題ではなく、それよりこの譜面から何を伝えたいのかが重要で、そこをアントンKも一番知りたいポイントなのだ。
いずれこのブルックナーの第9番について、今月聴いた演奏や過去の演奏も交えて書き残しておきたいと思っているが、その口火を切ったブロムシュテットの演奏は、立派な演奏には違いないが、アダージョ楽章も含めて淡々とした内容で、とても無機質に感じてしまった。あそこは、もう人間界の響きではないはず・・・
NHK交響楽団 第1894回定期演奏会
モーツァルト 交響曲第38番 ニ長調 K504
ブルックナー 交響曲第9番 ニ短調(コールス校訂版)
指揮 ヘルベルト・ブロムシュテット
コンマス ライナー・キュッヒル
2018-10-14 東京渋谷 NHKホール