長い長い坂道の上で
白いレースの日傘をもった
その人は…
あの子の
手を引いて
僕を待っていた。
入道雲が噴火煙のように
坂の上から湧き立つ
長い長いアスファルトの坂は
陽炎の向こう
白いサマードレスのその人は
異国人のようで…
水彩画の微笑みで僕の来るのを
待っている。
「こっちよ…」
あの子が手招きする。
知らない道
知らない町
ここまでは
来たことのない道
白日夢のような
夏の日の午後
追いついたと思えば
離されて
まるで蜃気楼
不釣り合いなコントラスト
あの子は夏の妖精
あの人は天使
僕は迷い込んだ旅人
行先を告げずに
先を急ぐ二人
好奇心が加速する
ジャスミンの花の香り
散らして
緑の木陰で
僕をみて微笑んでいる
僕も
微かに
ぎこちなく
微笑み返す
汗ばんだ額の汗を
ぬぐいもぜすに…
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