思春期は

異性の裸に興味をもつ
ところから
始まる。
性の目覚め
いけない事
道徳的に
倫理的に
男として
清く正しくいなれければいけないと
する考えと欲望に振り回される
子供から大人になろうとする
そのちょうど中間時期
昭和の時代は
女性の裸に興味を持ち始める
自分に気がつくと
自分だけがおかしいんじゃないか?とか思い始める
そんな時
クラスの男子とヒソヒソ話で
この悶々とした気持ちの
走りだしそうな
思いの吐口は
どうしたらいいのか?
好きな野球に捧げるべきなのか?
発散の仕方に迷う年頃になった。
そんな時
クラスの中で大人びてるT橋くんが
僕に耳打ちしてきた。
(ビニ本 見た事ある?)
ビニ本???
初めて聞く響きの単語。
のちでいう
エロ本のことだ
少し前の袋とじ
見たくても簡単に見れない
本。
神秘的な欲望をしげきする
ビニールで梱包された
裸の写真
それ専門の本屋でしか売ってない
ビニ本。
僕らは
学校が半ドンになる土曜日に
ビニ本販売店を探検しに出かけた
好奇心という地図をひろげ
♪ダメに ダメにダメになりそう
明日があるなんて
慰めはいらない
明日があるなんて
慰めはいらない
エロ本の誘惑に理性を失い
血走った目で自転車を漕いで
販売してる
古びた書店をさがしあて
僕らはキシむガラス戸をあけて
本屋に入っていった
店主は
居ない
たくさんのビニ本が陳列台の上に並んでいる
目移りする
息をするのも忘れるほど
心臓の音が早鐘のように
興奮の極地に
僕はいる
その時T橋君が
「いまだ!」
といって
一冊のビニ本を、手に
そのまま店の外に走り出した
僕も身を翻し
本屋の戸を閉めもせず
後を追い走り出した。
多分 この状況で100メートル走のタイムを測ってくれたら
好タイムを記録しただろうと思われるほど
僕もT橋くんも何かから
逃れるように
走り抜けた
自転車の置いてあるところまで戻ると
T橋くんの手ににぎられた
ビニ本に気がつく。
戦利品なのか?
これは?
これが
あのビニ本
僕らは学校の校庭の隅で
ビニールを破り
中からそのビニ本をとりだして
見ることにした
心臓の鼓動の高鳴りの訳は
ビニ本を初めて見る好奇心と興味と
万引きした罪悪感と
いけないことをしている罪悪感
のいくつも同時に覆いかぶさっている
状況に
いちいち心がひとつひとつ反応、対応しきれてないのだ。
ここは欲望が優先順位第一で
唾を飲み込み
瞬きせずに
興味の対象に
入り込むことに決めた。
それまで生まれてから
見せたことのない
笑顔をしているんだろうな…と思いながら自分が喜んでビニ本を見ていた
T橋くんと二人して
歌いながらページをめくっていた
♪つらいけどふたり そして僕こそ
ダメに ダメにダメになりそう
忘れましょうなんて
僕には通じない
ダメに ダメにダメになりそう
忘れましょうなんて
僕には通じない
これは
ダメになりそうなやつや!
いよいよ
大人への入り口にたった
僕とT橋くんだった
万引きしてまで
手にいれなきゃならないビニ本
それは
未成年では買えない本
でも
需要の高い時期だから
欲しくて仕方ない
歳の離れたお兄さんがいる友達がいれば
そのルートからの密輸が可能だった。
いよいよ
裏の取引、麻薬取引のように
水面下での入手作戦が始まっていった。
T橋くんには歳の離れた姉さんしかいないので
ビニ本が手元にくることは
上からのルートではなかったから
僕との行動をともにせざる終えなかった。
恋の暴走
ならぬ
エロの暴走
あの頃
暴走していた
僕たち。
