MRSA(Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌)という奴はとんでもなくやっかいな細菌らしい。ほとんどのMRSAが多剤耐性で、ペニシリンだけでなく、セフェム系、カルバペネム系、ニューキノロン系、アミノグリコシド系抗生物質に耐性となっている。前に紹介した『感染源』の作者ソニア・シャーさんは、これに感染した苦い経験をしている(2020-05-18拙ブログ)。
(MRSAの写真 Life Scienceより引用転載)
1947年に戦勝国アメリカよりペニシリンが日本に入ってきてから、我が国に抗生物質神話ができあがり、それに関する様々な開発と利用がなされた。そのおかげで、結核のような感染症は少なくなった。ただ、それの減少の背景には日本人の食生活や環境が改善されたことも忘れてはならない。
ともかく、感染症には抗生物質が効くということで、医者は不必要にこれを使うようになった。現代医学は病気をその根源で治すことより、クスリをたくさん出すほうが儲かるので、むやみやたらに大量の抗生物質を使った。
その結果、細菌の生態系に変化が起こり、突然変異で抵抗性をもった種類の細菌がはびこりはじめた。その代表がMRSAである。MRSA自体は特殊な細菌ではあるが、普通の環境では、他の細菌との競争に弱く姿を消すか、おとなしくしている。抗生物質が大量に使われて常在細菌のいない場所や患者の体内でしか増殖できない。こういった特殊環境をわざわざ作り上げたのは、現代医学にほかならない。たんに検査のために入院し、MRSAに院内感染して死亡するといった例はごまんとある。クワバラクワバラ。
現代医学はなおもMRSAに打ち勝つために、新たな抗生物質であるバンコマイシンやハベカシンなどを開発したが、当然、これらの耐性菌が出現してくる。クスリで稼ぐという現代医学のシステムが変わらないかぎり、このイタチごっこは終わらない。
追記1)
MRSAで免疫力が落ちた患者や高齢者が感染すると、敗血症や髄膜炎をおこす。これが原因で、年間で約4224名もの死亡者がでている。また緑膿菌も同様に危険な常在菌である(週刊現代7月4日号特集「コロナでいろんなことが分かってきたーこの国の病院と医療について考える」