日経新聞などの報道によると、新型コロナ関連の論文がこの4ヶ月で約1万本も全世界で提出されているそうだ。大量の論文の生産の背景には研究の高度化、高速化、デジタル化などがある。ただ日本のコロナ関係の論文数(33本)は世界8位で、中国 (545本)、米国 (411本)や英国、イタリアに比べても少なく、問題にされている。
多くのコロナ論文が査読前に公開するプレプリントで発表され、バイオアーカイブ (bioRxiv)やメドアーカイブ (medRxiv)といったサイトに投稿されている。
もっとも閲覧回数の多いのは米ロスアラモス国立研究所のKorberらの査読前論文である。これはウィルスの表面のスパイクタンパク質の構造変化と感染力の増大を関連づけたものである。そこでは、スパイクタンパク質における14の変異を特定し、その中の1つの変異株(D614G、いわゆる欧州株)が2月初めから欧州で感染拡大し、世界中に広がったと指摘している。論文は「D614Gの分布は驚くべき速さで増しており、もとの武漢株と比較してより迅速に感染・拡散できる変異種である」と分析している。
AIで論文を分析し治療薬の探索を絞り込む試みがなされているが、その実力が試されるチャンスになっている。
参考資料
日経新聞 2020/06/14 「知の共有」世界で加速。
Korber B, et al. Spike mutation pipeline reveals the emergence of a more transmissible form of SARS-CoV-2
(bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.04.29.069054.)