京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

時間についての考察:特殊相対性理論の簡単理解法

2019年03月03日 | 時間学

 

 多くの啓蒙書がアインシュタインの特殊相対性理論の解説をしてくれているが、いまいちわかりにくい。どれも、ニュートン力学の比較から話を進めずに説明を始めるので、何が特殊なのか理解しにくくなっている。ここでは宇宙船の光観測の例で説明を試みる。

1)まずニュートン力学での説明をする。

 秒速Vで飛ぶ宇宙船の床から天井に向かって秒速vで弾丸をうち出すとする。弾丸は距離L飛んで天井の標的に当たる。宇宙船に乗ってそばでそれを観察する人(Aさん)にとっては、打ち出しから標的に到達するまでに時間はL/v秒 (これをt秒とする)である。一方、月面から静止状態でこれを観察しいる人 (Bさん)にとっては、弾丸は斜め方向に飛び標的に到達したように見える。速度の合成則によりそれは√(v^2 +V^2)で、時間をT秒とする。そうすると、その距離は

√(v^2 +V^2) x T

三平方(ピタゴラス)の定理により

{√(v^2 +V^2) X T}^2 = (VT)^2 + L^2

これを整理すると

v^2T^2 = L^2

T = L/v  

これは宇宙船内のAさんの観測値tと同じである。T = t

古典力学の世界では運動系と静止系の間に矛盾は何も起こらない。

 

2)同様の計算を特殊相対論で行う。

ただ 特殊相対性理論の世界では、アインシュタインが「光速不変の原理」を導入したのでそれを前提に計算する。先ほどの実験における弾丸の代わりに光(秒速C)を使うと、どのようになるだろうか?宇宙船のAさんの観測値は単純にL/C= tとなる。

 Bさんの立場で先ほどの式を当てはめると[√{(C^2 +V^2) } X T]^2 = (VT)^2 + L^2となるはずが、そうはならない。光速不変の原理からBさんにとっても斜めに飛ぶ光の速さはCで

(CT)^2=(VT)^2 + L^2

T = (L/C)/√{1-(V/C)^2}

L/Cは宇宙船内でのAさんの観測値tなので

T = t/√{1-(V/C)^2}

VがCに比較して極端に小さい(我々の日常世界では)T = t とみなしてよい。しかし Vが光速に近づくと話が違ってくる。 V=0.8 Cぐらいになると、T = t/0.6となってAさんの時計がだいぶ遅れて見える。しかし、宇宙船のAさんから見ると自分が静止しておりBさんが光速で飛んでいるように見えるので、Bさんの方の時計が遅れているように見える。こんなややこしい事が起こるのはアインシュタインの”非常識な”「光速不変の原理」を前提にしたためである。

 

           

                    フランクフルト空港のアインシュタインと握手


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