金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【将棋】「終盤でまさかの大逆転負け!」などと言うなかれ!!

2020-10-08 07:06:06 | 将棋

 10月5日に行われた王将戦挑決リーグの豊島竜王と藤井二冠の対局、6日に行われた王座戦第4局の永瀬王座と久保九段の対局、いずれも、新聞などでは「終盤でまさかの大逆転負け!」と報じられました。しかし、報道の表現内容には、ちょっと違和感があります。

 我々の将棋観戦には、AIによる形勢判断と、次の最善手候補などが当たり前のように付いてきますので、まるで「将棋の神様」にでもなったかのような上から目線で、プロの対局を楽しむことができます。このこと自体は別に悪くはないのですが、上記のように、終盤でAIが示した最善手を、プロが指さないケースについて、「まさかの‥」とか、「不覚の‥」とか、表現することに対しては、むしろ不適切なのではないかと考えます。

 AIにとっては、終盤になればなるほど、短時間で最後まで読み切ることが簡単になる一方で、人間にとっては、例えプロ棋士と言えども、1分将棋に追い込まれたら、何十手とミスなく指し続けることは至難の業です。そのような将棋の終盤において、AIによる1手ずつの形勢判断は大きくブレるのが当たり前であり、実際に1手ずつ指しているプロ棋士は、「確信がないまま」「難しい」と思いながら、指し続けているもの。

 どこで、大逆転になったとか、また再逆転したとかは、終局後になって、感想戦をやってみて、やっと認識できるものなのです。

 AIによる形勢判断をリアルタイムで見ながら、将棋の神様になったような気分で、「まさかの大逆転負け!」と表現するのは、対戦しているプロ棋士に対して不遜な言い方ですし、適切な状況表現ではないと自分は考えます。


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