最近、日本で暮らす韓国人の患者さんから聞いた話です。久しぶりにお土産を買って里帰りすると、親戚や友人が集まり歓迎してくれたのですが、いざ日本からお菓子や各地の名物、珍味など開けて皆に勧めると、どこか遠慮気味で誰も手を付けようとしません。最初は、見慣れない食べ物で躊躇っているのかと思いさらに勧めると、ようやく放射線は大丈夫かと逆に聞かれたというのです。その人は、むっとなり「心配なら食べなくても良いし、私からも離れて座りなさい」と言って気まずくなったと、腹が立つ以上に残念で寂しそうに話してくれました。同様な話はこれが初めてではなく、実は私自身ここまでではないですが、お土産で似たような経験をしました。
暴飲暴食にタバコ、その他食品に含まれる有害とされる様々な化合物に関しては、少なくても形があるものですから避けるなり、納得して摂取するなりが可能です。対して放射線は目にも見えず、匂いもない、その実態が非常にわかりにくいものです。人体への影響に関しても、高線量の急性反応は別として、所謂 低線量被ばくに関しては、明確なデーターや研究結果がなく、科学者によっても見解が分かれます。そもそも 低線量の定義自体が国際的に統一されておらず、およそ200mSv(マイクロシーベルト)以下とされています。しかし放射線自体は実は、非常に身近なもので、宇宙から飛んでくるもの、空気中や地中さらに食べ物にも存在し、誰でも年間2.4mSv、一生涯に200mSvの自然放射線を浴びています。さらに、レントゲン検査では、一般のX線写真が一か所0.04mSv~、CT検査では一回5~30mSv、飛行機で欧米をまで往復すると約0.1mSの被ばく量になります。勿論日常生活で被る放射線やホルミス効果(少量の被ばくがホルモンのように作用する)ラドン、ラジウム温泉などでわざわざ取り込む放射線と、実際の検測値はそれ以下であっても今回の原発事故による汚染問題は全く異なるものではあります。
見えないもの、はっきりわからないものに対してヒトはより不安になり恐れます。いまだにチェルノブイリ調査は続けられていますが、影響は完全に解明されていません。しかし、最も大きな健康被害の一つは不安による心的なものであったというのも事実です。まさに関心を持ち、検証をしていくことで正しく恐れる必要はこのためです。
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