モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

一人一人がもっているもの

2010-08-10 03:40:00 | スタッフ講師
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火曜学生クラス・水彩画・なつきちゃん(上)・さちこちゃん(左下)・まさとくん(右下)

さとうです。さてさてアトリエもお盆休みに入りましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今回ご紹介する作品は、火曜日学生クラスで水彩画に取り組んだ3人の生徒さんの作品です。
モチーフは、ざるに乗せたかぼちゃ・とうもろこし・なす・たまねぎ・にんにく、そしてその下にボーダー柄の敷物(オレンジ、赤、黄色、白)でした。 いまにもバーベキューとなりそうな夏にぴったりの野菜たちを描きました。

まず、なつきちゃん(上)の作品。
なつきちゃんは前回油絵に取り組んだ時もそうでしたが、全体の色使いのバランスに本当に魅力的なものがあります。色をぬる段階に入ると、下書きしていた時とは別のスイッチが彼女の中に入ったかのようになるのです。あっという間にその画面になつきちゃんの目で見た野菜が表現されていきます。
おそらく彼女自身は難しく考えての配色ではないと思うのですが、全体がブルーに包まれてその中に紫、黄色、赤で描かれている形の配置が補色としても響き合っているし、私には絶妙に良いものに感じられます。例えば下の黄色に描かれた部分が無かったとしたら寒々しい絵になってしまうし、赤が無いと全体の力強さが無くなりメリハリも弱くなります。つまり、どれも欠かすことのできないバランスで保たれているところに魅力を感じるのです。
それはなつきちゃんが今まで描くことで積み重ねて養ってきたのと同時に、本来持っている感覚に研ぎ澄まされたものを持っているのかもしれませんね。

さちこちゃん(左下)の作品。
彼女の作品もなつきちゃんと同様に色使いの魅力もそうなのですが、一つ一つの物たちが丁寧に描かれそして野菜たちにも性格があるのでないかと想像が膨らむ作品です。さちこちゃんの描いた野菜たちは、まるでおしゃべりしている声が聞こえてくる雰囲気を感じませんか?ナスが「あのね聞いてよ」と言って中央のにんにくは「ふむふむ。」と相談事を取りまとめているようにも見えますし、かぼちゃがどっしりとみんなのことを見守り、玉ねぎがちょっとやんちゃに外にはみだそうとしています。とうもろこしも優しく玉ねぎに何かを促しているのでしょうか。・・・と、ついついこの絵の中に引き込まれて私の勝手な想像が進んでしまいましたが、それだけ何か面白い物語性を感じる作品です。
不思議な世界観を想像させるようにしてしまう力が、この絵の中に秘められています。
例え一人でも相手を自分の描いた絵の中に引き寄せてしまうというのは、描く側の人間としては憧れる感覚ですし、なかなかできることではないですよね。

まさとくん(右下)の作品。
まさとくんはこつこつと誠実に物を見て描き進めていきます。全くリアルに描くというよりはそこにまさとくんの独特の形の捉え方も加わり、見たまま描いていてもそれが思わぬ形として別の物に変化して見えてくる面白さを表現できています。
なんといっても、細密のように細かく描く表現には吸い込まれるものがあります。玉ねぎの繊維やとうもろこしの粒、皮、根っこの毛を描いている姿は、彼はそこに面白さを感じているのだなというのがわかります。
まさとくんは例えばとうもろこしを描くときに、茎の一番下の刈った断面の部分から描き始めていました。まだ真っ白い画面のときにそこだけを描いているのを見て、「あれ?これはどこを描いているんだろう・・?」としばらくは見守っていましたが、時間が経つにつれじわじわと皮が出て実の部分が現れとうもろこしが生まれてきた時は、少し感動してしまいました。
もっと大作の作品の時は構図などのバランスもあるので進め方で声をかけることもありますが、基本的には本人のやり方を押さえてしまうことにならないようにしたいと思っています。

最近つくづく思うのですが、やはり一人一人が持っている見えない力にはこちらが想像できないところまで可能性があり、誰にもそれは止められないし限界を決めることはできないですよね。
そういう見えない力は不安定でなにを頼りにしたらいいかわからない時もありますが、だからこそその「なにか」を信じて描くしかないのかもしれません。・・・と生徒さんを見ていて私も改めて考えている今日この頃です。

コメント
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