今年読んだ本の中で強く印象に残った一冊。
マリオ・ジャコメッリのことはこの本で初めて知ったのだが、書店で辺見氏の名を目にして本書を手にしたとき、表紙の写真に目が釘付けになった。釘付けという表現は手垢にまみれたものだが、この写真についていえば、視線が中央の少年に一気に引き寄せられ、鋭く打ちつけられるような実感が伴う。その一点から生身の存在とは思えない黒服の女性たちや薄暗くぼんやりとした石畳の町の風景に視線が移るにつれ、写真から死の静謐さ広がり、同時に生々しい不気味さが立ち上がってくる。
辺見氏はジャコメッリの映像を目にして「心に入れ墨を彫りこまれる」という表現を使っているが、ジャコメッリの創り出す白と黒の世界を目にした後に残る何かただならぬ感触をよく表している。
ジャコメッリの映像を通して死・生・夢・現・写真・資本などを考察する辺見氏の文章も鋭く刺激的であり、私のように日々生起する出来事に振りまわされている者に根源的なもの・ことへの思考を促す。私にとってはくり返し手にする一冊になっている。
それにしても、無知なるが故に昨年東京で開かれたという写真展を見逃したことが残念だ。
参考までに
http://www.mariogiacomelli.it/index.html
マリオ・ジャコメッリのことはこの本で初めて知ったのだが、書店で辺見氏の名を目にして本書を手にしたとき、表紙の写真に目が釘付けになった。釘付けという表現は手垢にまみれたものだが、この写真についていえば、視線が中央の少年に一気に引き寄せられ、鋭く打ちつけられるような実感が伴う。その一点から生身の存在とは思えない黒服の女性たちや薄暗くぼんやりとした石畳の町の風景に視線が移るにつれ、写真から死の静謐さ広がり、同時に生々しい不気味さが立ち上がってくる。
辺見氏はジャコメッリの映像を目にして「心に入れ墨を彫りこまれる」という表現を使っているが、ジャコメッリの創り出す白と黒の世界を目にした後に残る何かただならぬ感触をよく表している。
ジャコメッリの映像を通して死・生・夢・現・写真・資本などを考察する辺見氏の文章も鋭く刺激的であり、私のように日々生起する出来事に振りまわされている者に根源的なもの・ことへの思考を促す。私にとってはくり返し手にする一冊になっている。
それにしても、無知なるが故に昨年東京で開かれたという写真展を見逃したことが残念だ。
参考までに
http://www.mariogiacomelli.it/index.html
編集稼業の友人が、
「須賀敦子さんのお見舞いに、貸してちょうだい」と私の本棚から持って行った、マリオ・ジャコメッリの写真集。
そのまま却ってくることはありませんでした。
懐かしいです。
ふりしきる雪の中で踊る神父たちの写真、大好きでした。
辺見さんが評論を書かれているとは存じ上げませんでした。
早速本屋に行ってみます。
すてきな紹介をありがとうございます!
また上のコメントで須賀敦子さんも マリオ・ジャコメッリをお好きだったと知り、なんかとてもうれしくなりました。