前回書いた尾身幸次氏の沖縄利権と西松建設の問題について、卵かけごはんさんという方からコメントをもらった。同氏のブログには、尾身氏の沖縄利権に関する新聞や週刊誌の記事が数多く集められていて、参考になるので読んでみてほしい。
「東京サバイバル情報 ☆一時避難せよ☆」
yaplog.jp/ichijihinan/category_24/
野村旗守編『沖縄ダークサイド』(宝島社文庫・2006年)に田村建雄(ジャーナリスト)「橋本派VS森派!沖縄利権めぐる永田町の暗闘」という文章が載っている。山中貞則初代沖縄開発庁長官をはじめとした沖縄利権の歴史や、基地と公共工事に依存する沖縄経済とそれに絡んで発生する沖縄利権の構造などが、簡潔に説明されていて分かりやすい。従来、田中派ー竹下派ー橋本派が中心となってきた沖縄利権に、小泉政権の誕生を機に森派の尾身氏が入り込み、「新沖縄族」が生まれていく経過も記されている。
〈尾身幸次の沖縄疑惑〉という一章には、鈴木宗男元北海道・沖縄開発庁長官の資金管理団体に、1995年から2000年の六年間で3300万円もの献金があり、その中には沖縄のビッグプロジェクトの受注企業からの献金もあったことに触れたあと、尾身氏について次のように書かれている。
〈しかし一方で、実は現役の沖縄担当大臣だった尾身氏にも執拗な追及があったことを知る人は数少ない。〇二年三月一九日、国会の沖縄・北方特別委員会で、沖縄出身の赤嶺政賢代議士が、尾身沖縄・北方担当大臣に次のような質問をぶつけている。
赤嶺「九九年に沖縄幸政会という尾身大臣の後援会が結成されたが、どう受け止めるか」
尾身「私が依頼したわけではなく皆さんが作ってくれた」
赤嶺「沖縄の振興事業に対する沖縄企業への見返りを期待したのでは。九九年三九六万円、〇〇年三七二万円、それ以前は沖縄から献金はなかった」
尾身「政治姿勢、政治活動の支援。狭い意味での見返りなどではない」
赤嶺「泡瀬干潟埋め立て事業(沖縄市沖干潟埋め立て工事)でかかわりがある仲本工業から鈴木(宗男)議員に政治献金があることを問題にしたが、九九年と〇〇年、一二万円ずつ仲本工業から尾身さんにも企業献金がある。賛成反対があり両方の言い分を公平に聞く立場の所管大臣。その当該事業を請け負う企業から献金されているのに、公正な判断はできるのか」
尾身「知りませんでした。埋め立て事業については県民、市民の要望をしっかり受け止めて判断している」
この後、赤嶺は、(沖縄)北部振興事業で食肉処理施設整備の事業を請け負った屋部土建、名護市マルチメディア事業などを請け負った東開発から、尾身が二年間で各二四万円の献金を受け取ったことも指摘。さらに、沖縄各地での今後の埋め立て事業に関わるかもしれない沖縄砂利採取事業協同組合からも二〇〇〇年に一二万円を献金されていること、そしてその砂利組合の理事長で、県中小企業団体中央会会長でもあった人物は、尾身の後援会・沖縄幸政会の会長も務めていると指摘した〉(221~222ページ)。※資料参照。
引用の最後の方で触れられている沖縄幸政会の会長とは、卵かけごはんさんのブログで詳しく紹介されている吉山盛安氏である。同氏は沖縄砂利採取事業協同組合の代表も務めており、同組合の理事には東開発代表取締役会長の仲泊弘次氏がいる。渡辺豪『「アメとムチ」の構図 普天間移設の内幕』(沖縄タイムス社)には、仲泊氏と守屋武昌元防衛政務次官との対立が描かれている。
〈守屋と佐藤が地元区と同時並行でアプローチしたのは地元業者だ。特に守屋は浅瀬案を提起した県防衛協会北部支部長の仲泊を、政府案修正をもくろむ地元の黒幕と見て、徹底的に目の敵にした。
「(浅瀬案は)一部の人間の利益であり、(建設業界)全体の利益にならない。仲泊に反発するグループができればいい」(二〇〇六年二月十六日)。守屋は佐藤にこう持ちかけ、地元業者内で「反仲泊グループ」の結集を画策させる。守屋は海域の埋め立て面積が増大する浅瀬案に地元が固執するのは、沖縄砂利採取事業協同組合理事も務める仲泊個人の利権に絡む側面が強いと判断していた〉(58ページ)。
島袋名護市長や仲井真知事が、辺野古新基地の建設位置の「沖合移動」を求めているのは、埋め立て面積を拡大させることで地元業者の利益を増やそうとしているからだ。その裏には、埋め立てに必要な砂利採取を行う事業協同組合の中心人物・仲泊氏がいる。東開発会長である仲泊氏は、個人の利権を狙って「沖合移動」=浅瀬案を進めようとしている。このようにとらえて仲泊氏と対立した守屋氏は、その後、収賄罪などでお縄をちょうだいし、政治の表舞台から消えて(消されて)いった。そのときに吉山氏や仲泊氏を通して沖縄砂利採取事業協同組合とつながる尾身氏は、どのように動いたのだろうか。そして、現在はどう動いているのだろうか。
今日開かれた沖縄県議会の最終本会議で、泡瀬沖合埋め立て事業と県営林道開発の関連予算を削除する修正案は、残念ながら野党の統一した対応がなされず否決された。現在、辺野古新基地建設の環境アセスメントの問題が焦点となっているが、それと泡瀬沖合埋め立て事業、沖縄科学技術大学院大学という、沖縄で進められている三つの大型公共事業に、尾身氏は深く関わっている。
沖縄利権は米軍基地問題を抜きに語りえず、それは日米安保体制に支えられた日本の政治構造、外交の根幹にまで伸びる深い根を持っている。尾身氏と西松建設の関係を追及し、沖縄利権の問題にまで東京地検特捜部が切り込んでいくかどうか。その点について、沖縄ではまだ関心が低いように見える。しかし、その問題の大きさ、重要性を認識する必要がある。
小沢氏の政権獲得を潰す「国策捜査」という認識に基づき検察批判を行うのはいい。ただ、それによって尾身氏と西松建設、沖縄利権の問題が曖昧にされ、捜査の手がそこまで伸びない形で終わらせてはならない。泡瀬干潟埋め立て事業や辺野古新基地建設に反対していくうえでも、この問題は大きな意味を持っている。北海道・沖縄開発庁長官や財務大臣を務めたという経歴から見ても、東京地検特捜部は尾身氏と西松建設の関係にこそメスを入れ、この間の尾身氏と沖縄利権の問題を追及すべきだ。
※参考資料 「沖縄・北方特別委員会 2002年3月19日/赤嶺政賢委員の質問」
http://jcp-akamine.web.infoseek.co.jp/data/02.03.19.htm
「東京サバイバル情報 ☆一時避難せよ☆」
yaplog.jp/ichijihinan/category_24/
野村旗守編『沖縄ダークサイド』(宝島社文庫・2006年)に田村建雄(ジャーナリスト)「橋本派VS森派!沖縄利権めぐる永田町の暗闘」という文章が載っている。山中貞則初代沖縄開発庁長官をはじめとした沖縄利権の歴史や、基地と公共工事に依存する沖縄経済とそれに絡んで発生する沖縄利権の構造などが、簡潔に説明されていて分かりやすい。従来、田中派ー竹下派ー橋本派が中心となってきた沖縄利権に、小泉政権の誕生を機に森派の尾身氏が入り込み、「新沖縄族」が生まれていく経過も記されている。
〈尾身幸次の沖縄疑惑〉という一章には、鈴木宗男元北海道・沖縄開発庁長官の資金管理団体に、1995年から2000年の六年間で3300万円もの献金があり、その中には沖縄のビッグプロジェクトの受注企業からの献金もあったことに触れたあと、尾身氏について次のように書かれている。
〈しかし一方で、実は現役の沖縄担当大臣だった尾身氏にも執拗な追及があったことを知る人は数少ない。〇二年三月一九日、国会の沖縄・北方特別委員会で、沖縄出身の赤嶺政賢代議士が、尾身沖縄・北方担当大臣に次のような質問をぶつけている。
赤嶺「九九年に沖縄幸政会という尾身大臣の後援会が結成されたが、どう受け止めるか」
尾身「私が依頼したわけではなく皆さんが作ってくれた」
赤嶺「沖縄の振興事業に対する沖縄企業への見返りを期待したのでは。九九年三九六万円、〇〇年三七二万円、それ以前は沖縄から献金はなかった」
尾身「政治姿勢、政治活動の支援。狭い意味での見返りなどではない」
赤嶺「泡瀬干潟埋め立て事業(沖縄市沖干潟埋め立て工事)でかかわりがある仲本工業から鈴木(宗男)議員に政治献金があることを問題にしたが、九九年と〇〇年、一二万円ずつ仲本工業から尾身さんにも企業献金がある。賛成反対があり両方の言い分を公平に聞く立場の所管大臣。その当該事業を請け負う企業から献金されているのに、公正な判断はできるのか」
尾身「知りませんでした。埋め立て事業については県民、市民の要望をしっかり受け止めて判断している」
この後、赤嶺は、(沖縄)北部振興事業で食肉処理施設整備の事業を請け負った屋部土建、名護市マルチメディア事業などを請け負った東開発から、尾身が二年間で各二四万円の献金を受け取ったことも指摘。さらに、沖縄各地での今後の埋め立て事業に関わるかもしれない沖縄砂利採取事業協同組合からも二〇〇〇年に一二万円を献金されていること、そしてその砂利組合の理事長で、県中小企業団体中央会会長でもあった人物は、尾身の後援会・沖縄幸政会の会長も務めていると指摘した〉(221~222ページ)。※資料参照。
引用の最後の方で触れられている沖縄幸政会の会長とは、卵かけごはんさんのブログで詳しく紹介されている吉山盛安氏である。同氏は沖縄砂利採取事業協同組合の代表も務めており、同組合の理事には東開発代表取締役会長の仲泊弘次氏がいる。渡辺豪『「アメとムチ」の構図 普天間移設の内幕』(沖縄タイムス社)には、仲泊氏と守屋武昌元防衛政務次官との対立が描かれている。
〈守屋と佐藤が地元区と同時並行でアプローチしたのは地元業者だ。特に守屋は浅瀬案を提起した県防衛協会北部支部長の仲泊を、政府案修正をもくろむ地元の黒幕と見て、徹底的に目の敵にした。
「(浅瀬案は)一部の人間の利益であり、(建設業界)全体の利益にならない。仲泊に反発するグループができればいい」(二〇〇六年二月十六日)。守屋は佐藤にこう持ちかけ、地元業者内で「反仲泊グループ」の結集を画策させる。守屋は海域の埋め立て面積が増大する浅瀬案に地元が固執するのは、沖縄砂利採取事業協同組合理事も務める仲泊個人の利権に絡む側面が強いと判断していた〉(58ページ)。
島袋名護市長や仲井真知事が、辺野古新基地の建設位置の「沖合移動」を求めているのは、埋め立て面積を拡大させることで地元業者の利益を増やそうとしているからだ。その裏には、埋め立てに必要な砂利採取を行う事業協同組合の中心人物・仲泊氏がいる。東開発会長である仲泊氏は、個人の利権を狙って「沖合移動」=浅瀬案を進めようとしている。このようにとらえて仲泊氏と対立した守屋氏は、その後、収賄罪などでお縄をちょうだいし、政治の表舞台から消えて(消されて)いった。そのときに吉山氏や仲泊氏を通して沖縄砂利採取事業協同組合とつながる尾身氏は、どのように動いたのだろうか。そして、現在はどう動いているのだろうか。
今日開かれた沖縄県議会の最終本会議で、泡瀬沖合埋め立て事業と県営林道開発の関連予算を削除する修正案は、残念ながら野党の統一した対応がなされず否決された。現在、辺野古新基地建設の環境アセスメントの問題が焦点となっているが、それと泡瀬沖合埋め立て事業、沖縄科学技術大学院大学という、沖縄で進められている三つの大型公共事業に、尾身氏は深く関わっている。
沖縄利権は米軍基地問題を抜きに語りえず、それは日米安保体制に支えられた日本の政治構造、外交の根幹にまで伸びる深い根を持っている。尾身氏と西松建設の関係を追及し、沖縄利権の問題にまで東京地検特捜部が切り込んでいくかどうか。その点について、沖縄ではまだ関心が低いように見える。しかし、その問題の大きさ、重要性を認識する必要がある。
小沢氏の政権獲得を潰す「国策捜査」という認識に基づき検察批判を行うのはいい。ただ、それによって尾身氏と西松建設、沖縄利権の問題が曖昧にされ、捜査の手がそこまで伸びない形で終わらせてはならない。泡瀬干潟埋め立て事業や辺野古新基地建設に反対していくうえでも、この問題は大きな意味を持っている。北海道・沖縄開発庁長官や財務大臣を務めたという経歴から見ても、東京地検特捜部は尾身氏と西松建設の関係にこそメスを入れ、この間の尾身氏と沖縄利権の問題を追及すべきだ。
※参考資料 「沖縄・北方特別委員会 2002年3月19日/赤嶺政賢委員の質問」
http://jcp-akamine.web.infoseek.co.jp/data/02.03.19.htm