海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

衆院選沖縄3区の公開討論会

2009-08-18 14:58:10 | 米軍・自衛隊・基地問題
 8月16日(日)午後6時から、衆議院選挙沖縄3区の候補者による公開討論会が、ジャスコ名護店のイベント広場で開かれた。主催は日本青年会議所(JC)沖縄ブロック協議会。各候補者の主張はテレビや新聞ですでに何度も見たり読んだりしているが、国政選挙での公開討論会は北部では過去に見たことがなく、市民の反応にも関心があったので聴きにいった。
 沖縄3区の立候補者は嘉数知賢氏(68)=自民党、玉城デニー氏(49)=民主党、新川秀清氏(72)=社民党、小渡亨氏(57)=無所属、金城竜郎氏(45)=幸福実現党の5人。小渡氏は今回の選挙に立候補するために自民党を離党した経緯があり、与野党ともに候補者を一本化できず、沖縄の四つの選挙区では一番の激戦区になっている。
 公開討論会の聴衆は、青年会議所の人たちも含めて最大時で130~140人といったところか。ジャスコの屋内ですぐそばにはベスト電器や宮脇書店があり、買い物の途中に参加したという人も結構いただろう。会場の広さや用意された椅子を見ると、主催者は最初からこの程度と考えていたのかもしれないが、宣伝不足は否めない。公開討論会があることを新聞で初めて知ったという人が多かったのではないか。聴衆の反応は、目立った声援や野次はなく、静かに集中して聴いているという印象だった。
 国政選挙として北部では、辺野古の新基地建設問題が大きな焦点なのだが、玉城氏と新川氏がグアムへの「県外移設」を主張し、嘉数氏、小渡氏、金城氏が辺野古への「県内移設」推進を主張した。北部の良さは何か、と問われて、どの候補者も自然の豊かさを挙げていたのだが、「県内移設」を主張する候補者たちは、その自然を破壊して辺野古に新基地を造ることに矛盾を感じないのだろうか。
 嘉手納より南の米軍基地を返還し、北部に集中させるという在日米軍再編の「合意」案は、一人の候補者の言葉を借りれば、「北部を基地の掃きだめ」にするというものだ。今でさえ金武町伊芸区の流弾事故をはじめ、宜野座村、名護市、東村の東海岸を中心に、米軍の訓練によって日常生活を脅かされている。それに加えて新基地を建設しようというのだ。中国や北朝鮮の脅威を口にする候補者もいたが、だから北部の住民は犠牲になってもかまわない、と言うのならとんでもないことだ。
 政治・経済・文化その他の多様な面で、那覇を中心とした南部・中部地域に施設と活動が集中している沖縄の現実がある。そういう中で、嘉手納より南の基地を返還して再開発し、北部を基地の「掃きだめ」にすることは、沖縄島を南北に分断して北部を切り捨てるに等しい。ただでさえ高齢化や過疎化が進み、医療・教育などを含めてハンディを強いられている北部から、中南部への人口流出が加速するのは目に見えている。
 これまで、北部地域のおかれた状況の厳しさを見透かして、基地受け入れを条件とした金(麻薬)がばらまかれてきた。昨日の名護市臨時議会で問題になったように、下水道処理などの社会基盤の整備事業まで新基地建設と一体化させ、あたかも米軍基地がなければ地域が成り立たないかのような状況が作り出されようとしている。日本の中の沖縄、沖縄の中の北部と、より弱い地域に基地を集中させていく負の構造を打破しなければならない。
 第45回衆議院選挙が公示された。この選挙によって辺野古新基地建設や高江のヘリパット建設、普天間基地や嘉手納基地の爆音被害、金武町伊芸区の実弾射撃演習など、沖縄の抱える基地問題を打開する契機が生まれるのか。選挙に対して幻想も抱かず侮りもせず、沖縄・ヤンバルから新基地建設反対の運動を進めていく立場から選挙の動向を注視したい。 

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