平成22年11月28日(日)
午前6時00分。
起床。
お受験生活最後の、長い長い一日が始まりました。
11月25日から始まった埼大附属小の入学検査。
第一次検査(知能の検査、運動能力の検査)、第二次検査(親子面接、行動観察)を終え、今日は第二次検査発表、そして…抽選。
とうとうこの日がやって来た。
来てしまった。
娘のためにできることって何だろう?
実は母親である私は某国立大学附属小学校で教育実習をした経験があり、その際に、研究熱心な先生方からは学ぶことが多く、実習生の未熟な授業でもしっかりと単元を習得する力や、礼義正しく子どもらしい品格を持ち合わせ、何事にも積極的に取り組む児童の姿にとても感銘を受けました。
その時から、将来子どもができたら附属小に入学させて学ばせたいと考えていました。
そんな20年来の私の夢のために、親のエゴで小学校受験につき合わせてしまったのに、健気に頑張ってここまでついて来てくれた娘のために私ができること。
それはたったひとつだけ、「抽選で合格を勝ち取る」ことのみ。
神社仏閣は湯島天神に北野天満宮、日光東照宮に戸隠神社に氷川神社に東大寺も、思いつくところは全て参拝して回った。
ぎっしり詰まったお守りと先生からいただいた消しゴムの合格祈願絵馬を鞄に詰め込む。
それでも落ち着かないので、冷水を浴びて身を清め(寒いのでシャワーでチャッチャでしたが)…朝日を浴びると良いと聞いたので、ベランダに出て大きく手を広げ太陽のパワーを全身に取り込み…神棚に二礼二拍手一礼、仏壇にも手を合わせ…まだ眠っている娘に「ママが絶対に附属小に連れて行ってあげるからね。」とささやく…目をつむったまま娘は小さくコクンと頷いてくれました。
さあ、出発!
午前7時30分。
校門前に到着。
一斉に人の波が流れ込む。
一次合格発表以上の緊張の中、恐る恐る近づいて行くと…
あった!あった!!やったーーーーーー!!!
すごい、すごいぞ、わが娘~!
あるとは信じていたけれど、この目で確認するまでは不安で不安でいっぱいでした。
安堵の涙をボロボロ流しながらも、震える手でしっかり写真撮影。
すぐに自宅に電話をと思いましたが、仮に二次に合格してもその後の抽選に通って初めて合格なんだから連絡は抽選後でいいよ、と主人に言われていたので、まずは先生に報告。
先生は娘の合格を信じて電話を待っていてくださいました。
喜びの報告もつかの間、この後の抽選に向けての心強い応援と先生の強いパワーをいただき、抽選の受付に向かいました。
午前8時20分。
予定より早く受付が始まりました。
男女別に受付を済ませると、控室に通されました。
ここにいるすべてのお父さん、お母さんは私と同じ気持ちでいるんだろうなと思いながら静まり返った教室で待つこと40分。
午前9時00分。
時報と共に校門が閉められました。
先に男児の抽選から始めるので女児は10時15分になると告げられ、再び待つことに。
この3日間で待つことには随分慣れたけど、本も何も持ってきていないので手持無沙汰のまま、抽選合格のイメージトレーニングをしながら待つことに。
と言っても、もし抽選で外れてしまったら…と何度も頭を過ぎるので、その都度頭を振り、そんな思いを慌てて振り払う。
長い待ち時間の間、沢山のお守りを握りしめ、ひたすら神様仏様ご先祖様に合格を祈り続けました。
午前10時20分。
女児の抽選のため体育館に移動。
クラシックが流れる厳かな雰囲気のなか、壇上で校長先生の挨拶。
抽選の注意と説明が進められて行くのを極度の緊張のため、ほとんど上の空で聞いていました。
抽選は民主主義にのっとり、最も公正かつ平等な方法で行うとのことでした。
“ガラガラポン”と聞いていましたが、二次検査合格者数プラス1枚のカードが入った箱から、保護者全員がそれぞれ一枚ずつ引いていき、最後に残ったカードの番号の次の番号から定員の43名を合格者とするという方法でした。
いよいよ抽選のカードを引く時が来ました。
まさしく運命の分かれ道。
壇上の真ん中で大きく深呼吸をしてから最初に手に触れたカードを「想い」を込めて引き上げました。
席に戻ると、自分の引いた番号に何か良い語呂合わせや口実を付けられないかと考えながら、全員がカードを引き終わるのを待っていました。
そして、逆さにした箱の中から最後の一枚のカードがヒラヒラと落ちてきました。
そのカードが貼り出され、合格者の抽選番号が黒板に次々と書き出されていきます。
それよりほんのわずかだけ早く自分の番号が43人の中に入っていることを確信すると、再び熱いものがこみ上げてきました。
その「瞬間」は歓声もどよめきも一切無く、しばらくするとあちらこちらから嗚咽が聞こえてきました。
黒板に番号が無かった方はその場で退席し、合格者はそのまま体育館に残り、その後別室に移動しました。
自分も退席された方と同じ立場になる可能性があったことを考えると、手放しで喜んではいられない複雑な気持ちになりました。
先に抽選を終えた男児の保護者の隣の教室で更に待つこと約1時間。
待つことにももうすっかり慣れました。
先程までの緊張からようやく解放され、4月からこの学校に通うランドセルを背負った娘の姿を想像しながら、じわじわと込み上げてくる喜びを噛み締めながら待っていました。
その間、電話連絡をすることもできました。
娘に電話をすると
母「合格だよ!抽選通ったよ!」
娘「ホント!?やったぁーーー!」
母「ママ、ちゃんと約束守ったよ!」
娘「ありがとう、ママ!」
もう涙が止まりませんでした。
続いて先生にも電話。
電話の向こうで泣いている先生の
「よかったね~、本当によかったね~。ここまでよく頑張ったね~。これまでのことはすべて今日の日のためにあったんだよ~。」
の声に、またまた涙。
今日一日でもう何度涙を流したことか。
午後0時30分。
校長先生の挨拶の後、合格証授与式が始まりました。
まだふわふわと夢の中にいるような気分だったのが、一気に現実のものとなり、合格したという実感が湧き上がってきた瞬間でした。
合格証を抱え学校を後にしたのは、13時半を回っていました。
朝から飲まず食わずでいたので、緊張の糸が解けた途端、もうフラフラでした。
本当に長い長い5時間でした。
そして、喜ぶ娘の顔を思い描きながら家路につきました。
私もたった一度のクジ引きで、合否が決まるなんて、理不尽だし、なんて残酷なことだろうと思います。
しかし、この抽選を乗り越えないと、合格を勝ち取ることができないのが現実です。
ならば、必ずや私がクジで合格を引き当てようと、強い気持ちを持って臨みました。
恐ろしいほどのマイナス思考のこの私が、今までの人生でありえないくらいポジティブな気持ちで抽選に臨むことができました。
こんな風に強気で抽選に臨めたのも、AYAアカデミーでの実績とそこで得た自信があったからです。