紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

世界わが心の旅

2006-01-31 12:01:00 | テレビ
 もう3年前くらいに、夫がヘルニアの手術をした。退院してからも1ヶ月くらい家で養生が必要だったので、テレビと読書三昧という彼にとって夢のような生活を送っていた。

 そんな彼がいたく気に入っていたのがNHK/BS2で火曜の朝の8時から再放送の「世界 わが心の旅」。著名人が、若かりし日を過ごした外国の地を再訪し、懐かしい人に合う。新たな発見あり、出会った人や昔の知人からの深い言葉を耳にし、懐かしい物を見るというNHKならではの格調高い紀行ドキュメンタリーである。

 テレビを観るとその日の仕事が将棋唐オに遅れる恐浮ナ、私はなかなか観る勇気がない。それでも忙しい時に限って魔がさすときがあり、今日もうっかり室内で洗濯物を干しながら観てしまった。照明デザイナーの石井幹子さんが若い頃働いたフィンランドの工房を訪れ、その頃の同僚と会い、今は亡き師匠パッペさんの娘と再会を果たし、蝋燭の灯りに心を寄せ、ラップランドまで足を伸ばしオーロラに感動するという「光尽くし」の素晴らしい旅だった。
 
 まずフィンランドは日照時間がとても少ないので、かえって「光」に対する感性が研ぎすまされ、日常生活でもストリートでも、光の演出が「おもてなし」としてとても洗練されている事に驚いた。だから「蝋燭」を使った演出が他の国に比べ突出して多い。「ちいさな湖に200個のフローティング・キャンドルを浮かべる」という話は、想像するだけでかなりロマンティックだった。石井さんは蝋燭の灯りを見つつ『あかりは「生の火」が一番の基本』とおっしゃっていた。

 彼女の公私ともの師匠リーサ・ヨハンセン・パッペさんが娘に繰り返し云った言葉。『黄昏の時間を大切にしなさい。家に帰ってもすぐに電気をつけないように。日の暮れていく時間を味わいなさい。黄昏は人を異次元にいざなう不思議な力があるのです』

 私もいまは余裕なく暮らしているけれど、そういえば暮れて行く部屋でカーテンも閉めずにぼおっと窓の外の風景を見ていた中学生・高校生の頃の自分を思い出した。
 そうそう、仕事の帰宅時間がちょうど黄昏時なので、徐々に変色する空、変わりゆく空気の明度、シルエットになる風景にうっとりしながら車を運転している。異次元はともかく、「あの世」にはいざなわれないよう気をつけないと。

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