紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

プリーズ。ミスター・ポストマン

2008-11-28 00:26:17 | 路上観察

 昨日、仕事の帰りにH氏と近江八幡駅で待ち合わせをしたので、駅の改札を抜け、駅舎の外へ出る階段を下り切ってみると。

 もうすっかり暗くなった階段の下に、易者のように臨時出店の台を置いて、冷たい風の吹きすさぶ中、しょんぼりとハガキの枚数を数えている中年男性の郵便局員を見てしまった。

 店を出す準備をしている段階で、彼から売上については早くも諦めムードが漂っている。こげパンのように「どーせ」とやさぐれる訳でなく、己の非力さを必要以上に、むしろ自信を持って確信している男。すべての努力は徒労に終わり、手ひどい惨敗を喫する事を、何の疑いも無く信じている男。

 彼を垣間みて、白黒時代の実写着ぐるみドラマ『怪獣ブースカ』が王冠を無くして元気がなくなったとき呟く「しおしおのパー」という言葉を久々に思い出した。あるいは『クマのプーさん』に出て来る悲観的なキャラクター、ロバのイーヨーがしょんぼりとつぶやく「あわれなり」という科白を思い出した。それほどにあわれを誘う風情の男性郵便局員だったのだ。

 まるで「全部売ってしまうまで、戻って来るんじゃ無いよ! 売れ残って戻って来たりしたら、家に入れてやらないからね!」と邪見にされたマッチ売りの少女の男性版を見る思いだった。
「年賀状、全部売るまで、郵便局には戻って来るなよ! この売上でボーナスの額が査定されるんやからな」とでもいわれたかのごとくなションボリ具合なのである。

 それで、一度は通り過ぎ、目の前のスーパーに立ち寄って晩ご飯のおかずを買わなくちゃ、と急ぎ足で歩いたのだが、財布を覗くと、珍しく福沢さんが微笑んでらした。野口さんもバレーボールが充分できるくらいいらっしゃった。

 どうせどこかで買う年賀状である。「あわれの田中」(『ちりとてちん』で喜代美とあわれ合戦をして負けた腕利きの取り立て屋)に決して引けをとらないこの郵便局員に、ささやかながら希望の光を差し上げたい。

 ということで、結構な枚数の年賀状を調達した。件の郵便局員は、少し輝き出した顔を深々と下げて、心なしか最初より元気になった声で「ありがとうございました!」と礼を言ってくれた。後続で売れて、ハッピーエンドになってくれればいいんだけどな。 


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