私と小5の娘Kちゃんとは、なるべく平日を狙って5時には帰宅でき、私が晩ご飯をつくる体力が残る程度の日帰り旅行をたまにする。
昨年の話で恐縮だが、秋の平日の休校日に、伊賀上野の忍者屋敷にいこう!とその日の朝思い立った。ネットに向かって電車の乗り継ぎを調べれば、1時間半~2時間もあれば行けることが判明した。お昼ご飯は『そば松尾』といういかにも文学的なお蕎麦屋さんに決定。
途中私が降りる駅を間違え、娘にかなりヒンシュクを買った以外は別段トラブルも無く目的地の『近鉄・伊賀上野駅』に到着した。(実はJR伊賀上野駅に降りてしまったのだった)
駅前の観光案内所で忍者屋敷と「そば松尾」の場所を訊き、観光案内のイラストマップを入手。バスガイドさんのような話し方をする案内嬢は、「こちらをまっすぐです、ハイ。それから右に曲がりましてですね、ハイ」とてきぱき丁寧に説明してくださった。
案内所をでて3歩歩いたとき、娘がくすくす笑いながら「わたし、笑いそうになって困ったわ。だってあの人(案内嬢のこと)、『友近』にそっくりやったんやもん」と告白した。
まずは腹ごしらえから、と駅から「そば松尾」に直行。店の前まで来たKちゃんは眉根を寄せた。ネットにあった「カップルにぴったり」というおしゃれ?な風情ではなく、どちらかといえば大衆寄りの店構え。中に入れば民芸風というにはやや中途半端な感じ。いかにもおしゃべりそうなおばあちゃんが一人でお客をさばき、無口な青年が黙々と蕎麦を作っている。お客といっても私たちのように忍者屋敷目的ではなく、芭蕉ゆかりの地の「松尾」というお店でお蕎麦をいただきましょうという上品な初老3人組の紳士淑女の方々のみ。
平日とはいえお昼時なのに、こんなに空いていて大丈夫なのか?と視線を送る娘。もしかして外したか?と疑心暗鬼の私。
もっとも蕎麦が来てからは、そんなこんなもふっとぶ驚き。見た目は「えっ?こんなに少ないの?」という量なのに、食べるとしっかりお腹に持つ感じ。しかもかつて食べた事の無い美味しさ。私は「やまかけそば」を食べたが、『伊賀忍者卵』?入りでこれがまた格別。
あまりのおいしさに驚いて、おばあちゃんに「おいしいですねえ。卵もおいしいです」と白状すると「そうですやろ、ちょっと値が張る卵ですけど、やっぱり一番美味しいモンを使わんとねえ。私は日本中のお蕎麦を食べ歩いたんですけど、信州の戸隠蕎麦が一番です」と恐るべきこだわりを語り始めた。
初老3人組の方々には「うちのそばがきは、そばがき好きの外車に乗って遠方からいらっしゃるお得意さんに、『わしは日本中のそばがきを食べたが、ここのは日本一や』てゆーてもろてます」と誇りを持って語っていらっしゃった。
娘がゆっくりとお蕎麦を食べ終わるまで、おばあちゃんと世間話をして待つ。
彼女は84歳。40代で夫を亡くし、必死で蕎麦屋を切り盛りし、子どもたちを育て上げた。今は孫が継いでくれ、そば打ちをして調理場にたち、彼女が接客をしている。お店が大好きで、お店に寝泊まりしているという。死ぬまでお店に出たいとおっしゃっていた。
伊賀上野は忍者屋敷だけではなかった。日本一のそばがきを食べにもう一度「そば松尾」にいってみたい。それまでどうかお元気で、おばあちゃん。あと、『友近』そっくりの観光案内嬢にも再会を果たしたい。
*「そば松尾」→http://www.kujimag.com/tim/ya6_lssrv18209.htm
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