琵琶湖汽船の中村さんが、子供たちに水の実験を見せている。
琵琶湖の全循環を説明する実験だ。
青色の水や、お湯、氷を巧みに使って説明する中村さんの世界に、子供たちが引き込まれる。
不思議なもので、全く素人だった中村さんの話も、だんだん上手になってきている。
習うより慣れよ。
Custom makes all things easy.
こうして、琵琶湖の不思議が、子供たちの心に届いていく。
研究者がしかめっ面で話す言葉よりも、ずっと優しいコミュニケーションだ。
隣で見ている私は、彼女の上達ぶりに嬉しくなる。
少しずつ、少しずつ、輪が広がり、育っていけば良い。
子供たちにとって、中村さんの実験は、手品のような不思議さを感じさせるのだろう。
「琵琶湖は年に一度、こうして深呼吸するんです」
と言って中村さんは締めくくる。
そして、子供たちが少しだけ成長する。
私たちの世界は、こうした、ゆっくりとした歩みで確実に広がっていく。