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トサノクロムヨウラン・10~小野路町

 小野路町の林内で咲き始めた「トサノクロムヨウラン(土佐の黒無葉蘭)」。ラン科クロムヨウラン属の多年性菌従属栄養植物で全国の常緑広葉樹林の林床に分布している。花は午前中に開花し午後には閉じる一日花で希少種のために開花のタイミングに合わせるのがなかなか難しい。
 さてトサノクロムヨウランは全国的に分布しているが、同属のクロムヨウランは宮崎県、高知県、和歌山県などの限られた地域に分布しそれは固い蕾のままで開花せず自家受粉で結実するという特殊な生態をしている。
 以前も触れたが、もともとクロムヨウランは1931年(昭和6年)に本田正次氏が和歌山県西牟婁郡岩田町で採取し発表した種で『花ハ正開セズ、花被ハ相接シテ円筒状ヲナス』と説明している。高知県(土佐)では花を咲かせない本当のクロムヨウランのほうが普通に見られるのが話をややこしくしている。
 1981年(昭和56年)に高知大学の故澤進一郎助教授が、高知市で採取した開花するほうの種をトサノクロムヨウランとして発表したが、この発表と前後して複数の図鑑で開花する種をクロムヨウランとして紹介した。そこでクロムヨウランは開花するものだという認識が一般に広まり澤氏の見解は数十年間埋もれていた。私が持っている図鑑のクロムヨウランの写真もしっかり開花している。
 2018年(平成30年)、神戸大学大学院理学研究科のグループは
『①クロムヨウラン自体は開花しない種に名付けられた』
『②高知市で採取されたトサノクロムヨウランは他の地域に分布している開花する種と形態的差異が無い』
として、澤氏の見解が正しいと結論付けた。
 菌従属栄養植物は光合成を放棄してキノコやカビの菌糸を根に取り込みそれらから養分を得て生きているが、開かないタイプのクロムヨウランは光の届かない暗い林床に生育するためハチやチョウなど訪れる昆虫も無く、そのため開花することまで放棄してエネルギー消費を最小限にしていったようだ。残念ながらクロムヨウランは当地では見られない。
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ミツバ

 大垂水峠付近の山道に咲いている「ミツバ(三葉)」。セリ科ミツバ属の多年草で日本原産。「ミツバゼリ(三葉芹)とも呼ばれ全国の山地のやや日陰や湿り気のある場所に分布している。草丈は30~80センチで茎は直立している。葉は3出複葉になり縁には鋸歯がある。6~7月に茎の上部に複散形花序をまばらに付け直径2ミリで花弁は5枚ある。
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セリ・2~上小山田町

 上小山田町の林縁の湿地に生えている「セリ(芹)」。セリ科セリ属の多年草で早春の柔らかい葉が食用になり“春の七草”に数えられている。北海道~沖縄の水田や湿地に分布しており地上を這う茎と地下茎を四方に伸ばして群落を作る。花期は7~8月で茎頂に複散形花序を出し直径3ミリほどの5弁花を多数咲かせる。この時期の葉や茎は硬く食用には向かない。
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