河野裕子
死がそこに待つてゐるならもう少し茗荷の花も食べてよかつた
あなたらの気持ちがこんなにわかるのに言ひ残すことの何ぞ少なき
さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ
八月に私は死ぬのか朝夕のわかちもわかぬ蝉の声降る
手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
死がそこに待つてゐるならもう少し茗荷の花も食べてよかつた
あなたらの気持ちがこんなにわかるのに言ひ残すことの何ぞ少なき
さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ
八月に私は死ぬのか朝夕のわかちもわかぬ蝉の声降る
手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が