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心のたねを言の葉として

強権の発動と嘘の言葉に塗れた安倍長期政権②            関川宗英

2022-09-14 16:47:49 | 安倍晋三

強権の発動と嘘の言葉に塗れた安倍長期政権②            関川宗英

 

 

1 「丁寧な説明」に程遠い国会答弁

 では実際の国会論戦の模様はどうだったのか。

 以下は、2017年6月16日、参議院予算委員会の一コマだ。この日は、「共謀罪」法が強行採決された次の日である。

 「国会会議録検索システム」から引用する。



025 福山哲郎

○福山哲郎君 民進党・新緑風会の福山でございます。総理を始め閣僚の皆さん、よろしくお願い申し上げます。

 まず、冒頭でございますが、非常に残念なことが与党自民党からありましたので、一つ国民の皆さんにお知らせをしておきたいと思います。

 今日、実は、予算委員会、これ三月の終わり以来の久しぶりの予算委員会ということで、今、加計学園の問題が大変国民の関心も高いということですので、野党としては前川前文科省事務次官の参考人招致をこの予算委員会に求めました。残念ながら、またもや自民党が拒否をしました。前川前事務次官は民間人でいらっしゃいますけれども、実はこの通常国会に予算委員会、来ていただいております。なおかつ、御本人も、参考人も証人喚問も出席の意向があると言われているにもかかわらず、呼ばない理由はないんですが、理由も明確にされないまま、自民党は参考人の招致を拒否をしました。これは強く抗議をしたいと思います。

 一方で、共謀罪の審議の法務委員会は、与党が全会一致の原則を崩して多数決で刑事局長を参考人にずっと居続けさせるという、これも憲政史上例にないことをやられました。片方では刑事局長を陪席、多数決で決めて、片方では前川前事務次官、この国会に、この通常国会に来ていただいている方にもかかわらず拒否をしたと。非常に凸凹の対応だというふうに思っておりまして、非常に残念に思います。

 それで、総理、国会がお決めになることだと言われるのは重々分かるんですが、やはり総理がいろんなところで、総理の御意向だとかいうことで、前川前事務次官は間違いなく総理の御意向があったと、それから文書の存在も認められたわけです。これは、総理が今言われていることと真っ向から対立します。例の森友学園の籠池さんのときには、総理を侮辱したといって証人喚問をやられました。前川前事務次官は侮辱はされていないと思いますが、総理の今の主張とは真逆のことを言われています。

 やっぱり、こういう場で総理が身の潔白を証明する場合に、前川前事務次官を国会に呼んで、参考人として来ていただく、若しくは証人喚問すると。総理としても、自民党の総裁でいらっしゃいますから、国会がお決めいただくんだといういつもの答えではなく、少し前向きにお答えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

026 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 真逆ということではないんだろうと思いますが、いずれにせよ、これはもう福山委員が重々承知の上で質問されているということも私も分かっておりますが、まさにこれは院の方で、また委員会の方でお決めになることでありますから、行政府の長としてそれに対して指示をするということが今までもなかったわけでございますので、これはまさに国会においてお決めをいただきたい。国会においてお決めをいただければ、我々はそれに従っていくことは当然のことであろうと、このように考えております。

027 福山哲郎

○福山哲郎君 行政の方で決めたことはないということを言われるから国民は白けるんです。この間の強行採決、中間報告という名の審議打切り、強行採決だって、それは官邸の意向が強く働いていると世間はみんな思っているわけです。

 やはりそういうことを言われるから国民の皆さんは白けるというふうに思いますし、まあ理事会で、委員会で決めていただければ呼べばいいとおっしゃっているので、是非、自民党の皆さん、与党の皆さんは参考人招致に賛成をいただきたく思います。

 続いて、総理、前川前事務次官ですが、前川氏を文科事務次官に任命をされたのはどなたですか。

028 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) ちょっと私も記憶が余り、事務次官を、様々な事務次官が内閣でそれぞれ任命されておりますから、一々私もそれは承知をしていないところでございます。

029 福山哲郎

○福山哲郎君 別にここで僕は総理を、何か知らないのかみたいなことを言うつもりは全くありませんが、内閣人事局の制度になって、普通、任命権者は一義的にはもちろん文科大臣です。しかしながら、今は任命協議というのがあって、そこは総理と官房長官と文科大臣と三人で協議をして最終決定になって、任命されるのは文科大臣ということになっています。

 ですから、総理と官房長官と文科大臣が協議をして事務次官は決まります。もちろん前川前次官は安倍内閣での任命ですが、それでよろしいですね。

030 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 形式的なものでありますから、言わば協議ということについて私は全く記憶がないわけでありますし、基本的に大臣から言われたものを事実上ほぼ全て認めてきているところでございますが、前川次官が安倍内閣、もう安倍内閣も四年続いておりますから、恐らくその間に任命されたのだろうと、このように思います。

031 福山哲郎

○福山哲郎君 今の答弁はちょっと問題で、内閣人事局の制度になっていますから、総理も官房長官も十分意思決定者です。

 それで、私は思うんですけど、どうですか、やっぱり自分の時代の事務次官、文科省の事務次官というのは、やっぱり僕は、それぞれ本当に、国家公務員試験を合格されて一生懸命国のために尽くしてこられた人です。総理にとっても、やはり事務次官ですから、一緒に仕事をされてきた方です。その方が、この加計問題に対して総理の意向を感じざるを得なかったと、それから文書の存在はあると、あるものをないとは言えないといって会見等をされました。一緒に仕事を安倍政権の中でやって、半年とはいいながら事務次官に任命をされた人がこういうことを言われる事態について、総理はどう思われますか。

032 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 前川前次官も、これは日経新聞のインタビューにおいては、これは政策的なことなので政府の意向は関係ないという趣旨のこともおっしゃっておられるというふうに承知をしておりますが、いずれにせよ、先ほど山本大臣と阿達議員とのやり取りの中にあったように……(発言する者あり)ええ、先ほどですね。どのようにそれぞれの、言わばこれ、前川次官と私が議論したということではなくて、この当該の内閣府の職員と文部科学省の職員が議論をし、そのときの出来事をメモにしたということであり、そのことから前川次官が感じ取ったこと等についてお話をされているんだろうと、このように思う次第でございますが。

 いずれにせよ、これ政治的な言わば事柄となった段階においては、また大臣なり、また私にも直接問合せをしていただければよかったのかなと、こんなように考えているところでございます。

033 福山哲郎

○福山哲郎君 私の聞いているのは、このことを言っているんではなくて、前次官だった方が、総理の御意向はあった、さらには、文書が確認できなかったとしている安倍政権に向かって、文書は存在して、あるものをないとは言えないと、そして行政がゆがめられたとまでおっしゃっている。それは、総理として、事務次官は一緒に仕事する人たちですから、そういう状況に今なっていることについてどう思われますかとお伺いしているんです。

034 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) そういうことであれば、大変残念でございます。

035 福山哲郎

○福山哲郎君 その前川前事務次官が実在する本物だと主張していた文書について、やっと文科省が再調査して、十九の資料のうち十四の存在が確認をされました。前川氏の証言はほぼ正しかったと言えると思います。確認できなかった三つも、他の法人との関係等々がありまして、もうほぼ全てが実在するという状況でした。

 総理、今の時点では、総理は本会議で確認できなかったと答弁されているんですけれども、今の時点では、あの文書について、我々民進党が提出をし、我々の仲間が本当にいろんなところから集めてきて、毎日毎日プロジェクトチームをやり、表に出してきたあの文書、今は本物であるということを総理は認めていただけるんですね。

036 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) もう既にこれは文部科学大臣が記者会見でお答えしたとおりであり、それに尽きるわけでございますが、同時に、この文書の問題をめぐって対応に時間が掛かったということについては率直に反省したいと、こう考えております。

037 福山哲郎

○福山哲郎君 もう一度。これはもう実在する本物だということは、総理もお認めいただくということでいいんですね。イエスかノーかでお答えください。

038 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) これは、私も答えますが、まず文科大臣からお答えをさせていただきたいと思います。

039 松野博一

○国務大臣(松野博一君) お答えさせていただきます。

 今先生から御指摘があったとおり、十四の文書に関しては、これは全く同じ形式のものではございませんが、同種の内容のものも含めて存在が確認をされたということでございまして、二つは存在が確認されなかったということでございます。

040 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 詳細にわたってお答えをする必要があるので、まず文科大臣からお答えをさせていただいたところでございますが、まさに文科大臣からお答えをさせていただいたとおりでございます。

041 福山哲郎

○福山哲郎君 違います。総理の口から、この文書は実在したことを自分も認めたと言っていただきたいんです。本会議で確認できない確認できないと我々の前で言われているわけです。

 あえて私は虚偽の答弁をしたとは言いません。なぜならば、再調査をして分かったわけですから、確認ができなかったと言っていた時点では本当に確認できなかったので、それを虚偽だとは言いませんが、本会議で延々と、委員会も含めて、確認できなかったと言われているので、今はあの文書は存在しているものだということを総理自身がお認めいただいたということを言っていただければ結構です。

042 安倍晋三

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、これは松野文科大臣が答弁をさせていただいたことを、これ踏まえて聞いておられますから、松野大臣から、二つについては確認できなかったということでございます。その上において、まさにそれが、また、形式等も違うものがあったというふうにもお答えをさせていただいておりますが、中身については、中身についてはそういう趣旨のものがあったということでございます。

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119315261X01920170616&current=1



 長々と引用したが、福山議員の質疑に対して、安倍晋三が前川前次官の参考人招致を拒否し、「総理のご意向」の文書の存在を認めるまで12分かかっている。

 丁寧に説明するといいながら、このようなノラリクラリの答弁が延々と続く。質問に対してまともに答えず、今までの経過をなぞったり、同じ答弁を繰り返す。しかしTVニュースは、そんなはぐらかしの言葉の中から、質問に対する答えらしき言葉を切り取って、編集して、国会論戦を30秒ほどで伝える。野党と安倍晋三の議論の様子を直接30分でも見れば、誰もが呆れ返るはずだが、TVニュースだけでは国会のひどさは判らない。

 そんな不毛な国会論戦は突然断ち切られ、「共謀罪」法は強行採決された。

 2017年6月19日の記者会見終了に合わせて、森友問題の籠池邸や幼稚園に家宅捜査が入る。

 安倍政治の強権ぶりがまた一つ露わになった。





2 更に荒れた2017年後半

 国会閉幕までを2017年の前半の区切りとするが、まさに怒涛のような政治劇だった。そしてその荒れ模様は、2017年の後半も続く。だが、安倍晋三は見事に巻き返し、10月の衆議院選挙で圧勝する。

 

 「丁寧な説明」などすることはなかった安倍晋三、ざっくりと2017年後半の流れを確認する。

 

6月22日 国会閉幕後、野党は臨時国会の招集を内閣に要望する。

7月2日 都議選、小池百合子の都民ファーストの会圧勝、自民党は歴史的な敗北。

7月10日 国会閉会中審査。前川前次官参考人招致。安倍首相、外遊中、欠席。

7月24日 国会閉会中審査。安倍首相、加計学園獣医学部の話を知ったのは「1月20日」と発言。

7月28日 稲田朋美、PKO日報問題で辞任。

7月31日 籠池夫妻逮捕。

8月2日 第3次安倍内閣発足。

9月28日 臨時国会の召集。衆議院解散。

10月22日 衆議院選挙。自民党圧勝。

11月1日 第4次安倍内閣発足。

11月10日 大学設置・学校法人審議会が加計学園獣医学部の開学を認める答申。

11月14日 林文科相が開学を正式に認可。

 

 以上が2017年後半だが、6月22日の臨時国会要望から振り返る。

 野党4党(民進、共産、自由、社民)は、それまで予算委員会の集中審議や前川前次官の証人喚問を要求してきたが、与党からはゼロ回答だったため、日本国憲法第53条に基づく臨時国会の召集要求を衆院、参院それぞれに提出した。

 しかし安倍内閣は、「招集の時期は憲法に明示されておらず、内閣の判断に委ねられている」として、臨時国会を拒否し続ける。


http://harusan.net/emapg/archives/date/2017/07/01

 

 「日替わりで小池に棚ぼた落ちてくる」は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった都議会選前の小池百合子のことだろう。

 そして連日の「PKO日報問題」でメディアに追われていた稲田朋美、それをかばう安倍晋三。「総理殿もうムチャクチャでゴザリマス」とぼやきたくもなる。

 様々な疑惑に答えず、逃げの姿勢の安倍政権は、支持率を下げていく。

 

 7月1日は、都議会選の応援で安倍晋三が秋葉原に登場した。会場には籠池夫妻も現れる。安倍の演説とともに、「安倍やめろ」のコールが高まる。それに対して一国の首相が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と声を荒げる一幕もあった。

 

 森友問題、加計問題、都議選、PKO日報問題、と追い詰められていた安倍晋三、7月の内閣支持率は30%代まで下落した。ところが、9月には50%に上昇する。

 支持率回復の理由は、二つ考えられる。

 一つは、小池百合子の「排除します」発言、民進党の分裂など政局の混迷。

 二つは、北朝鮮のミサイル、核実験の成功。

 希望の党、民進党のゴタゴタはオウンゴールだが、北朝鮮の動きが日本全体に与えた影響は大きかった。

 7月4日、7月28日と火星14号に続き、8月29日の火星12号は北海道上空を通過したという。いずれも大陸間弾道ミサイルだった。

 そして、9月3日、北朝鮮は6回目の核実験を行う。6回目の核実験は、インド、パキスタンにならえば、事実上の核保有国として認められることになるそうだ。

 北朝鮮の「核技術完成」、「核を搭載した、大陸間弾道ミサイルを持った」という事実は世界を揺るがした。

 北朝鮮のミサイルが飛ぶたびに、日本中の携帯のアラームが鳴った。核実験を受けて安倍晋三は「断じて容認できない」と非難する。一連の北朝鮮の動きがメディアを騒がす中、内閣支持率は回復する。

 安倍晋三は政権維持のため、解散総選挙を決断する。

 

 野党の臨時国会要望から98日目の9月28日、やっと衆議院は招集となったが、その冒頭、衆院解散が強行される。首相の所信表明も野党の代表質問もなかった。

 国会の召集直後に首相が冒頭解散に踏み切るのは戦後四回目で、二十一年ぶりのことだそうだ。しかも、安倍晋三は8月に内閣を改造しているが、新内閣が本格的な論戦をせず解散するのは戦後初めてだという。9月28日の衆院解散は日本憲政史の汚点ともいえる暴挙だった。

 

 そして10月22日、衆議院選挙。自民公明与党は圧勝、三分の二を超える議席を獲得する。

 衆議院選挙で禊は終わったかのように、森友も、加計も、急激にその熱を覚ましていく。 

 2017年はこのように激しく揺れたが、安倍晋三は、またも生き残った。

 

 2018年4月、加計学園獣医学部は開学した。安倍晋三は4月26日、この問題について「事実に基づき、丁寧な上にも丁寧な説明をしていく努力を重ねたい」と記者団に語っている。





4 民主主義の冒涜、国家の衰退

 第二次安倍政権は憲政史上、最長の政権だが、8年9か月のその中身は、この2017年のような強権の発動と嘘の言葉に塗れた政治劇の連続だった。

 

 集団的自衛権の憲法解釈を、内閣法制局の人員を入れ替えたうえで、閣議決定によって変えてしまった安倍晋三。

 

 「桜を見る会」の国会答弁では、118回も嘘をついたと衆院調査局は報告している。

 

 安倍晋三の政治とは、法治国家の根幹に唾を吐くような、民主主義を冒涜するものだった。

 

 丁寧に説明する、そんな言葉を連発しながら、第2次安倍政権の8年9ヵ月は過ぎていった。

 なんと言葉の軽い首相だったことか。

 8年9ヵ月の安倍政権の間に、格差社会の溝は深まり、弱者が弱者を攻撃するような荒んだ事件に心を痛めることが増えたように感じている。

 

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